凛として時雨、2010 UKライヴ・レポート
<I was music SUPER FINAL@さいたまスーパーアリーナ>でのワンマンライブから一ヶ月。凛として時雨が、5月13日~18日にわたって全4か所をまわるUKツアーを敢行した。その模様をお知らせしよう。
夕景で響く。
<I was music SUPER FINALさいたまスーパーアリーナ>にて行われたワンマンライブ。クライマックスで見せた赤く染められたステージに浮き上がったメンバーのシルエットを、つい先日のように感じられるのは、自分だけではないであろう。特別な日から1ヵ月後の5月半ば、凛として時雨は彼らの原風景と言っても過言ではないイギリスにて、全4公演に及ぶ初の海外公演を行なった。
5月13日、15日の2日間出演した<The Great Escape>というフェスティバルは、2006年からスタートし毎年5月にUK・Brightonで行なわれており、200組を超える地元のバンドや海外アーティストが参加している。ライブハウスやBar、そして野外。街中至る所にステージが設置されており、朝から晩まで宴が開かれている。
初日のVolksは、海岸沿いにある小さなライブハウス。「moment A rhythm」のジャケットに映し出されているオブジェが、すぐそこに佇んでいる。国内のライブとは違う機材がセッティングされ、足元の蛍光灯はあるものの、耳を劈くSEは無し。スタッフのイントロデュースを合図に、TKのギターが唸り出す。決して多いとは言えないオーディエンスに向けて容赦なく曲を叩きつけていく。
音に触発されたのか、徐々にバーからフロアへ移動してくるオーディエンス達。フィードバックを引き裂いて始まった「nakano kill you」のイントロに狂喜乱舞する姿は、未だに目に焼き付いたままだ。演奏時間は30分と短いものの、凛として時雨の“核”を凝縮させたセットリストで、少しもたじろくことなく剛速球をぶつけることが出来た、さすがのライブであった。
2日目のKomedia。ここは、様々な店が立ち並んだ中にあり、音響や照明機材がしっかりしている、キャパが500人程のライブハウスだ。ティーンのオーディエンスで会場内の熱気が高まるなか、ヘッドライナー前に凛として時雨が登場。この日は機材セッティングの都合上、立ち位置が若干変則的であった。ステージ向かって左側345とピエールがかなり近づいた状態でセッティング。TKはいつもよりセンター寄りに立ち、ステージ右側には少しの空きスペースがある。サプライズとも言える日本ではなかなか見れない海外らしいハプニングであろう。
TK自らがイントロデュースを行い、「想像のSecurity」「テレキャスターの真実」「Sadistic Summer」と続く。バンドのテンションはフルスロットル。TK、345のハイトーンボイスは重なり合うと共に、鋭利な刃物となって空間を切り刻み、ピエールのドラムは全速力で会場を駆け回る。つまり、演奏がキレッキレなのである。最前列のティーン達が熱い眼で見つめる先は、3人の指先。確実に演奏を追っていた。指先から奏でる音、一音一音を追う目、日本でも良く見る光景。バンドキッズは万国共通なのであろう。
ピエール中野に機材トラブルがあったことをライブ後に初めて聞かされたが、改めて逆境に強いバンドだと感じた。全世界から様々なバンドが集まるなか、確実に「凛として時雨」という音を、Brightonの地に刻むことができたに違いない。
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