ミドリ、自由で拡散的なポップネスに彩られた完全フルアルバム『shinsekai』大特集

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ミドリ

完全フルアルバム『shinsekai』2010.5.19リリース

ミドリが世に問う2年ぶりのフルアルバム『shinsekai』は
これまでの“デストロイ”だけのイメージを払しょくし
自由で拡散的なポップネスに彩られたまさに“新世界”
真面目に音楽と向き合い納得いくまで研鑽した問題作

――最新作『shinsekai』、本当に素晴らしかったです。フルアルバムとしては『あらためまして、はじめまして、ミドリです。』以来2年振りですが、いつ頃から制作されていたのですか?

ハジメ: 2009年の秋にツーマン・ツアーがあったんですけど、その時に新曲も結構やっていて、合間にスタジオにも入っていたんです。でも、その時は全然進まなくて、結局本格的に作りだしたのは12月のツアー・ファイナルの後ですね。2回に分けてレコーディングして、2月半ばにファイナル・ミックスまで行ったのですが、そこからミックスし直したり、1曲追加したり、ボーカルを録り直したり、キーボード差し替えたり……。今回は、すごく時間がかかりました。実質、マスタリングまで終わったのが4月の頭だったので。

――ちなみに、1曲追加したというのはどの曲ですか?

ハジメ: 「凡庸VS茫洋」ですね。これが最近できた曲です。

――もっとも激烈でインプロ感に溢れた曲ですが、これを加えた理由は?

後藤まりこ: ぼく、「あたし、ギターになっちゃった!!!!!」って曲があんまり好きやなくて、本当は抜きたかったんですよ。でもみんなは入れたいって言うので、「だったら、もう1曲入れないとバランスとれないから嫌です」て言うて、入れました。

――「あたし、ギターになっちゃった!!!!!」、可愛くて良い歌じゃないですか。

小銭喜剛: ねぇ?俺も好き。

後藤: えー、なんかキモくない(一同笑)?そもそも、この曲って自分用の曲じゃなかったんですよ。人にあげるために書いた曲やったから、自分で歌うのに抵抗があったんやと思う。もうちょっと、時間が経ったら好きになれるかも……。

――こんなに長い制作期間になるって、予想してました?

小銭: まったくしてなかった(笑)。だって、一度は2月に終わったもんね?

後藤: そうそう。終わった。

小銭: 終わったんやけど、多分、納得できてなかったんやろうなぁ。アルバムの出来に。

後藤: 2月の時のまま出すのは嫌やったな。全然アカンかった。ぶっちゃけ、良くなかったです。もし、2月の時のままやったら「素晴らしかった」って言ってくれへんかったかも。

ハジメ: そうですね。結果的にバラエティ感が出たんですけど、A×S×Eさんにミックスをしてもらったり、GOK SOUNDでミックスをしたり……。

後藤: あと、友達の山野上さんに「鳩」と「春メロ」のミックスも頼んだり……。

――僕は特に、A×S×Eさんとミドリの相性の良さに感動したんですよ。

ハジメ: natsumenのライブとか見てて、やっぱりすごい人だなぁって前から思っていたんですよ。ああいうバンドをやりながら、木村カエラさんに曲を提供していたりするじゃないですか。どっちにも寄りすぎないし、どっちも中途半端じゃない。僕にとっては、理想的な方なんですよ。実際にミックスをやってもらったら、やっぱりすごくて。

後藤: すごかった!

小銭: すごかったなぁ。

ハジメ: 一言でいうと、すごいんです(笑)。これがプロだなって思いました。もう、憧れちゃいましたね……。

――ハジメさん、恋しちゃってますね(笑)。

後藤: ホンマやなぁ、ハジメ。

ハジメ: 本当に時間がない中で、A×S×Eさんも忙しいのに急遽2曲のミックスをお願いしたんです。そんな状況でも、メンバーみんなを納得させてしまった。きっと、僕ら以上にミドリの良さをわかってくれていたんだろうなって。しかも、「まだミドリの良さは引き出せる」って言ってくださって。今の時期に、まだその可能性に気付かしてくださったのは、本当に有難いことだと思っています。

後藤: A×S×Eさんと、また一緒にやりたいです。

小銭: やりたいなぁ。ホンマに。

ハジメ: 今回は5人の方にミックスをお願いしているんですけど、やっぱりアルバムの音ってミックスでかなり変わってくるんですよ。今回は納得がいくまでいろいろと試してみたんです。でもこのアルバム、どの曲も良いんだけど、今までにないくらい曲順が全然浮かばなくて(苦笑)。

小銭: 特に、最初がまったく出てこなかったよな。

ハジメ: 曲順によって、アルバムの聴かれ方って変わるじゃないですか?すごく大事だと思うので。

――その中で、新しいテイストの「鳩」を持ってきた理由は?

ハジメ: 何でしょうね(笑)。ライブでも1曲目に演奏することも多かった曲なのですが、僕はなんとなく、一番聴いてもらいたい曲だと思っていたんですよ。アルバムのタイトルにもなっている「新世界」という単語も出てくるし。しかも、今までのミドリの曲の中で極端に静かな曲だし。激しい曲でくるやろ、という期待を良い意味で裏切れると思うし、きっと驚いてくれるんじゃないかな?って。

――そもそも、今回のアルバムにはどんな狙いがありましたか?

小銭: あんまり考えないんですよね。とにかくやってみよう、みたいな。

ハジメ: でも、去年の秋の段階で間違いなく曲が足りないことはわかってたから、アルバム出すにはもっと曲を作らなきゃ、みたいな。

小銭: どうする?ってなって、「swing」から持ってきたらええんちゃう?とか(苦笑)。

後藤: でもな、足りひんとか言うてる時点で、ぼくらヌルかったと思うんです。

小銭: そやな。ヌルかったわ。

後藤: ふざけてたわ。あの時はヌルかった。

ハジメ: そこから考え直して、「さよなら、パーフェクトワールド。」と「リズム」はすでに曲としては存在していたけど、アルバムすべてを新録曲でいこうと。そっちの方が潔いなと思って。それが実現できて、本当に良かったと思っています。

後藤: ホンマにそう思うわ。アルバムを作ろうということ自体は、サイクルみたいなものが影響しているとは思うけど、ちゃんと明確に意思はありました。サイクルだけやったら、今まで通り順応した作品になっていた気がするけど、このアルバムはなんというか……ちゃんとしてます!

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