INORAN、生命に必要不可欠な水をめぐる旅路が始まる6thアルバム『Watercolor』大特集

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INORAN 6thアルバム『Watercolor』2010.3.10リリース

刻々と変化する水の色のように INORANの音楽がメタモルフォーゼする 声明に必要不可欠な水をめぐる 旅路がいま始まる

――「Baies」は歌詞についてもお伺いしたいんですが。<おそらく単純で静かな物が すべてを知っている答えの様なもので>という一節がすごく引っかかりまして。INORANさんの中にある確信めいた哲学がこれを書かせているような気がして。

INORAN: 好きに解釈してください(笑)。人生の中、生活の中で人それぞれ生き方があると思うんですけど。生きていくために、幸せをつかむために。なにかをしたい、つかみたいと思ったとき、人って“動き回る”と思うんですよ。それはどこかに出かけたり探したり。じっとしてそれを探せる人はあんまりいないと思うんです。でも“大事な物というのは結局その近くにあって”。それは目に見える物か見えない物かわからないけど、家族でも友達でも知り合いでも恋人でも、なにをどうしたとかじゃなく、また「愛してる」とか「好きだよ」とか口に出すとかでもなく、それは絶対シンプルな物だと思うんですよ。たぶん。幸せっていうのは隣に誰かがいてとか家族に支えられててっていうことで、それもしょっちゅう動いたりはするんですよ。夫婦喧嘩だったり家族の亀裂だったり。でも絶対、それはちょっと気持ちが裏返っただけで、動いてるものでも動くものでもないんです。

――……うわ~、すごい深い言葉ですね。

INORAN: 深くはないです。でも書いた時の気持ちは忘れちゃった。

――INORANさんの歌詞の奥にある人生に対する哲学って、この曲もそうですけど本当にシンプルに人生の確信をついた部分があって。そこって、INORANさんの音楽の中でも変わらないところですよね。

INORAN: そうですね。書きながらたぶん自分もそういう風にありたいと思ってるんでしょうね。まだ(そういう風に)なれてないっていう部分もあるから、求めるものが出ますよね。やっぱり。

――人生のなかで大事な物はシンプルなこと、そのなかの一つにこのアルバムでは「I'll be there」で感謝の気持ちを描いてらっしゃいましたが。

INORAN: この間のライヴであったり、僕にはないものを持ってる人に出会えたり……、そういう旅に出ながらももう一度そういうことについて考えてみたという曲ですね。人の感情もキャンドルの火も水の色もそうだと思うだけど、規則性がないものじゃないですか? 家族でも恋人同士の関係でもそうじゃないですか。そのなかで、共有しようとする。それは揺れてるからこそ求め合うものなんだろうなと。そういうことを歌いたいなと思って書いた曲なんです。揺れないっていうのは無理だと思うんですよ。けど、それとは矛盾するようだけど、揺れないよっていう。揺れることを感謝するというか。そういう気持ちかな。

――「Daylight」には<僕はここにいるよ あるがままで><すべてを受け止めよう あるがままで>というシンプルな姿勢で人生を受け止めている姿が描かれてましたが。

INORAN: そうありたいってことですね。

――この曲はほんのり切なさがありながらも、温かさ、優しさがじわっとくる美しいバラードで。ストリングスのアレンジも素晴らしかったですね。

INORAN: これは葉山(拓亮)君がやってくれてます。ピアノも葉山君が弾いてますね。

――ここでは<声にならなくても僕は詠うよ>、「Calling down」では<手に入れたんだ>と、本作は曲の最後に断定口調で強い言葉を放ってるところも印象的で。

INORAN: きっとそうでありたいんですよ。

――サウンド構築というところでは、音像的に一番インパクトがあったのは「see you」でした。これはシューゲイザーなサウンドエフェクトが本当に気持ちよくって。

INORAN: ありがとうございます。この曲は去年聴いて“凄くいい曲だな”と思って。歌詞もすごくいいし。単純にカバ-したいと思った。洋楽以外でそういうことを初めて思ったかもしれないですね」

――アウトロでシューゲイなギター・サウンドがボリュームアップしていくなか、INORANさんのヴォーカルのロングトーンが残像として残っていく。そこの音像感はまさにこのアルバムのジャケットを思い浮かべました。ジャケットで差し込んでる光がINORANさんの声に思えたんですよね。

INORAN: じゃあそういうことでお願いします(笑)。

――インストを含め全10曲が収録された本作。制作当初はミニ・アルバムを予定してらっしゃったと聞いたんですが。

INORAN: 去年の11月ぐらいまではミニ・アルバムでした(笑)。でも増えちゃったんです。それはライヴがあったり、周りの“波動”ですね。去年アルバムは出てないですけど、『時化』やそのPVを撮ったときに、ストイックというのではないんですけど、“ギリギリまでやれることをやったときに結果がついてくる”というか。自分の中でのね。合格不合格とか勝ち負けではなくて、経験としての自分の結果がついてくるというのを去年活動していくなかですごく思ったんですよ。だから“こうしなきゃいけない”“やらなきゃいけない”じゃなくて、やれることをやっていこうと。だから、ミニ・アルバムがアルバムになったのかもしれないし。そうすることで、たぶん自分がミニ・アルバムでいこうっていったときよりも周りの人が少しでも幸せになれるだろうなって思ったから。だから、やります。ギリギリまで。最近は。やった分だけ結果は出る。オリンピックのフィギュアの高橋選手もそうですけど。3回転のほうが絶対安定してるんですけど、4回転やったでしょ? でもあれを3回転にして優勝したところで4回転やらなかったってことは一生悔いが残ると思うんですよ。そのためにただストイックになるというんじゃなくて、やれることをやった結果なら失敗も得たものになる。人生ってそうだと思うんですよね。だから、やれるようになった。前よりは。

――では最後に、これから始まるTOUR2010「Watercolor」 に向けての意気込みを聞かせてください。

INORAN: いま漠然と思い描いているライヴの感じを遥かに越えるものができればいいなと。コンセプチュアルといえばコンセプチュアルなアルバムなので、それをもうちょっと拡大表現できるステージにはしたいと思ってます。最終日のCOASTは、この間あれだけステキなライヴを経験した場所なので、それとは違う感じの気持ちを入れたライヴにしたいですね。

取材・文●東條祥恵

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