FAKE? 沈黙を破り待望の新作を発表

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2月24日、FAKE?のニュー・アルバム『SWITCHING ON X』が発売を迎えた。2006年、一対を成すように発表された『SONGS FROM BEELZEBUB』と『MARILYN IS A BUBBLE』(通称、黒盤と白盤?)の2作品以来となるこのアルバムは、2009年の大半を費やしながら制作されたもの。レコーディング作業はロンドンで行なわれており、プロデューサーには英国屈指のカルト・バンド、KILLING JOKEの一員として知られるYOUTHが起用されている。YOUTHはポール・マッカートニーとのユニットであるTHE FIREMANでの活動などでも有名だが、今作はまさに「あくまでKEN LLOYD個人の存在を核としながら、彼自身とYOUTHとのコラボレイトを軸にして完成に至らしめられたもの」ということになる。

実のところ本作のレコーディング作業は、2009年中には完了に至っていた。その音源がしばらくの熟成期間を経ることになったのは、従来のいかなる作品とも異なった次元でKEN自身の可能性と多面性を密封し、それを明確に具現化することに成功したこの作品を世に出すうえで、彼自身が時期的な早さ以上に万全を期すことを望んだからに他ならない。今作の発売元は、過去にいわゆる邦楽アーティストの作品を手がけていないWHDエンタテインメント。そこにKEN自身が設立した新レーベル、Coma Redからの第一弾リリース・アイテムが本作ということになる。当然ながら彼の視線は国外にも向けられており、アメリカをはじめとする諸外国での配信も、まもなく開始されることになる。

OBLIVION DUSTでの活動も含め、KENは日英のハーフ云々という生まれつきの事実とは別の次元で、あらかじめ邦楽/洋楽といった区分けや、偏狭なカテゴライズとは無関係のところにいた。そして「自己探求のためのライフワーク的プロジェクト」といった意味合いの強くなりつつあるFAKE?で体現される音楽は、ますます奥深く、意味深長で、限界を感じさせないものとなってきている。そうした傾向が現時点におけるピークに達しているのが、まさにこの『SWITCHING ON X』ということになるだろう。

「たとえば自分にとって、初期のOBLIVION DUSTが高校だったとすれば、FAKE?を始めた頃の自分は大学生。今はようやくそこを卒業できて、外の世界に出ようとしているところなんじゃないかな」

KENは現在の自分自身についてこんなふうに語っている。そして3月には、この最新作を引っさげてのライヴも決まっているので、是非ご注目いただきたい。

2010年3月14日(日)大阪・心斎橋クラブクアトロ
2010年3月22日(月)東京・渋谷クラブクアトロ
[問]ディスクガレージ 03-5436-9600(平日12:00~19:00)

まさにこれから始まろうとしているFAKE?の新時代。確かにこの『SWITCHING ON X』が世の中を変えるようなことは、おそらくない。が、あなた自身のなかには何らかの変化が生じることになるかもしれない。僕が言っていることが決して大袈裟じゃないことは、実際にこのアルバムに触れてみれば、わかってもらえるはずだ。

増田勇一

◆FAKE?オフィシャルサイト
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