――それぞれ、思い入れの強い曲はありますか？

山口：　「空の青」は、花沢が「書きたいことがあるから」って言ってきて、久しぶりに作詞したんですよね。彼がこれから歌っていくことに対する決意表明のようなものを、ちゃんと言葉にしたいということだったので。

花沢：　一番初めに曲を作り始めた頃は、作曲家やプロデューサーの仕事をしたいと思っていたんですよ。でもインディーズでのバンド活動を経て、Chicago Poodleのヴォーカルとしてメジャーデビューして、「最初に思っていたこととは違うな」と考えた時に、ちょっと考え込んだんですよ。でも、それを楽しんでくれる人がたくさんいるんだから、それを受け入れればいいんじゃないかなということを、自分の言葉で書きたいと思ったんですね。自分がヴォーカルをしているのは、空が青いのと一緒で、初めから決められていたことなんだと思おうと。そうやってできた詞です。

辻本：　僕もこのバンドで歌詞を書いてるんですけど、山口が書く歌詞がすごく好きで。今回もすごくいいのがあって、「旅人」っていうんですけど。花沢がでたらめ英語で歌っているデモを聴いた段階では、そこまでグッとこなかったんですよ。でも、いざ山口が歌詞を書いて、花沢が歌って、完成したものを聴いたら、本当に良くて。「そうだ、俺らは旅を続けるんだ」みたいな気持ちになれて、アルバムタイトルも「旅人」でいいんじゃない？って言ったぐらいなんですけど。今の3人の気持ちをうまく書いてくれた曲だと思いますね。

山口：　ありがとうございます(笑)。

辻本：　僕はけっこう物語仕立てで歌詞を書くんで、山口の、心境を吐露するみたいな歌詞の書き方がすごくいいなと思います。全然違うタイプなので、歌ってる花沢は大変だと思いますけど(笑)。

――アルバムの中でも異色のファンキーな曲「スーパースター」は、マイケル・ジャクソンに捧げる曲なんですよね。

辻本：　僕はそれほど聴いていなかったんですけど、花沢にマイケル・ジャクソンへの思いを聞いて、それをふくらませて書きました。かなり苦労しましたね。花沢からも珍しく、歌詞の内容に対するダメ出しもありましたし。「もっとマイケルのことを書いてくれ」と。「空の青」じゃなくてこっちの歌詞を書けばいいのにと思ったんですけど(笑)。

花沢：　マイケル・ジャクソンは、一番聴いてた洋楽アーティストだったので。自分もああいうメロディや曲を作ってみたいなと思って作った曲です。

――そうした様々な曲を、すべてをまとめるタイトルが『僕旅』です。

花沢：　さっき言ったみたいに、辻本が「旅人」でいいんちゃう？　って言った時に、旅がテーマになったんですよね。旅をテーマにいろんな候補を出していって、スタッフも含めて選んだ時に、『僕旅』が多かったので、これにしようと。

山口：　ちょうどデビューの年だし、これから旅が始まるということで、いいんじゃないかと。

――どんな人にどんなふうに聴いてほしいというイメージはありますか？

花沢：　いえ、特にないですね。より多くの人に聴いてもらいたいというのはありますけど、シチュエーションはどこでもいいし、何を感じてもらってもいいし。僕らはこうしてリリースした以上、作品を判断するのはリスナーなので。今の段階ではできることのすべてを注げたので、悔いはないです。

――11月から来年2月にかけて、初の全国ワンマンツアーも始まります。これを読んでいる人に向けて、メッセージをもらえますか。

辻本：　まだ行ったことのない場所もあるんですけど、挑戦的な意味も込めてワンマンツアーを組んでもらいました。『僕旅』をより多くの人に聴いてほしいし、僕らは関西中心にライヴをやってきたんですけど、北海道や九州から来てくれる人もいるんですよ。そういう人たちに対して「ありがとう」というか、「今までもこれからもお願いします」という思いで、今度はこっちから行こうと思うので。ライヴを見て、もっとChicago Poodleのことを知ってもらえるとうれしいです。楽しみですね。

取材・文●宮本英夫