業界関係者もお忍びで訪れた、若手バンドの灼熱ライヴ<Gloove'n Soul Night !>
7月13日、渋谷のO-Crestにてインディーズシーンの勢いあるバンドを集めたライヴ<Gloove'n Soul Night !>が開催された。いずれも将来性ある若手バンドが出演ということで、フロア後方には数社のレコード会社関係者や某大物プロデューサーがお忍びで訪れて様子をうかがう姿があったりと、業界的にも注目が集まったライヴとなった。ライヴレポが届いたので、将来の日本の音楽シーンを担うことになるかもしれない若手バンドのステージを紹介しよう。
◆若手バンドの灼熱ライヴ<Gloove'n Soul Night !>ライヴの画像
◆ ◆ ◆
梅雨明け直前、東京のこの日の最高気温33度!体感気温でいえばさらに+3度はあろうかという渋谷には、夏を思わせるような“熱”を持った5組のバンドが集結。サウンドも個性も年代もメンバー構成も様々ながら、強いてくくるなら“次世代を担う歌ものバンドたち”といったところか。
トップバッターは2001年結成。岩手は盛岡からやって来た3ピース“北の泣き赤子”こと、クライベイビーズ。
「伝えたいことたくさん持ってきました!」というMCから始まったプレイはケレン味のかけらもないビジュアルに似つかわしく、極々シンプルでド直球のギターロック。二つ名のとおりセットリストはマイナーコード中心。哀愁とノスタルジーあふれるメロディーにのるヴォーカルは時に感情的に、時に叙情的に、でもグイグイとオーディエンスに迫る。飾りっ気のない歌声が偽りのない心情を感じさせるのだ。丁寧に、しかし力強く歌われる言葉の中にはどこか牧歌的な日本の季節感や情景も散りばめられ聴き心地も上々。「さよならの駅」では決め球と思われる泣きのメロをリズム隊のテンションで後半に向けドラマティックに高揚させてみせる高い技量も見せた。この日披露した「サクラの下」が地元岩手の県内チャートで1位を獲得したというエピソードも納得できる。すでに関東圏にも進出し始めているようだが、近いうちに全国的なアクションを起こすであろう彼らが楽しみ、といえるライヴを見せてもらえた。
続いては登場前のSEの時点ですでに会場にクラップを起こさせていた人気者。それもそのはず、プロフィールによればこのバンド、2003年にメジャーデビューしていた某バンドだ。解散を経るも2009年6月再結成とある。そして新しく彼らが名乗ったのは、ヨーキー。
3ピース(+サポートギタリストの4人)がステージに登場すると同時にフロアからは歓声が。ネクタイ姿もキュートなヴォーカルに笑顔のベース、さらにドラムはアイドル的ルックスとくれば期待は高まるばかり。サウンドは期待通りのポップ&キャッチー。華のあるプレイを見せるドラムに、重厚感と飛び跳ねるようなイメージを併せ持つベースとリズム隊は申し分ない。ナイーヴな音色からアタック感のあるフレージングまで自在に魅せるヴォーカルが持つ求心力も好感触。MCでちょっとテレたりするところも女心をくすぐったはず?セットリストにユニコーンの名曲「働く男」なんかをもってきたりするところも“逃げ”じゃなくて純粋なサービス精神と見た。ルックスもプレゼンテーションも高い水準でまとまっている彼らのパフォーマンス、今のうちに見ておかないとプラチナチケット化するかも。ラストナンバー「ハジマリハココ」はバンドの持ち味が詰め込まれた1曲として出色の出来でした。
3番手はこの日のラインナップ中、異彩を放つ女性トリオ編成。2007年結成とキャリアは浅いものの、独自のインパクトを放った、EMPEROR。
プログレ的アプローチを魅せるリズムにラウドでノイジーなギター、強めにリバーヴのかかったヴォーカルがアバンギャルドというかアンダーグラウンドというかオルタネイティブというかサイケデリックというかインダストリアルというか…。イマドキのJ-POPには完全に背を向けた感のある彼女たちではあるのだが、朗々と淡々と歌う中、サビなどで見せるファルセットなんかには隠し切れない歌心も。さらに気がつけばこちらも足がリズムをとってたり…ややこしい形容詞の数々で評価を推し切るのはもったいない独特の存在感と(多分持っているであろう)中毒性といったあたりに期待したいバンドだった。「アサラヘ」「砂漠の海」あたりには彼女たちが持つ上っ面には見えてこないけど、本質的に秘めているであろうポップ性も感じたし。
ラス前。ここからは持ち時間も増え、いよいよクライマックスの予感?登場するは2006年結成、姫路からやってきた西のソウルメン、ソウルジャンクションズ。
その名の通りのSEの中、自ら手拍子(笑)しつつ「こんばんわー!」と現れるはスキニージーンズにTシャツで揃えた4人。どうにも東京っぽいというかシャイというか…で最前に来づらそうにしているオーディエンスを独特のハンドアクション+鉄柵に乗り上がって煽るヴォーカル。徐々に心を開き始めるフロアを見わたし、さらに引きずり込むバンドメンバーたち。関西人らしい、と言ってしまえばそれまでだが、その一言では言い尽くせない彼らの人懐っこさが伝わるステージだ。歯切れのよいヴォーカルと、ソウルミュージックを愛してやまないであろうギター、ベース、ドラムが奏でるサウンドはソウルであることはもちろんなのだが、ニッポンのメロディーでもあり誰のカラダにも馴染みやすい。
「恋のから騒ぎ“幸せになろうじゃあ~りませんか”」では恋愛、メロウなバラード「我がママ」では家族愛を、という風にサウンドやアプローチとは別のところにあるマインド=“愛”を感じることができれば楽しめること間違いナシ。新曲だというドライビングチューン「にじのわ」、ラストの「Rollin' Rollin'」の頃には、真っ直ぐすぎる熱さも、男の切なさもみっともなさもなぜか好もしく思え、すっかり彼らに引き込まれ“愛”を感じていたフロアだった。
いよいよ大トリ。そのバンド名からは正体を読み取ることが難しいながらも、得体の知れないエネルギーを発している5人、As gloove。ちなみに発音は「アズ・グローブ」です。
2003年結成のきっかけが音楽専門学校での出会いというだけあって、その演奏力は確実かつハイボルテージ。疾走しまくるロックやキラキラ感のあるポップチューン、ミクスチャーロックともいえる音楽性のベースにあるのはファンクのようだ。そんな多角的な構成に破綻をきたさず、グルーヴィーな仕上がりを与えているのも実力あってこそ、といえる。
中でも特筆すべきなのがヴォーカル。小柄な身体から発するビブラートの効いたハイトーンヴォイスとは裏腹に、貪欲なまでにオーディエンスへ繰り返されるアピール。いかなるときも崩さない笑顔でステージいっぱいに駆け回り、時にはシアトリカル(演劇的)ともいえる表現力でフロアを圧倒する。マイクスタンドでのアクション、オフマイクでの煽り。そこにいる全員と目をあわす、なんなら全員捕まえて、捕まえたら何があっても逃がさない…そんな鬼気迫る勢いでパフォーマンスを繰り広げるヴォーカルなのである。それに呼応するように、高度なプレイはそのままに、これまた終始笑顔のバンドメンバー。なんというかやれることは一つ残らず全部やる、しかもどこまでも全力で。いわば“全力力”の高いバンド、とでも言いたくなる感じ。あえてキャッチフレーズ風に言うなら「テクニカル初期衝動」みたいな。バンドで音楽ができていることが楽しくてしょうがない、みたいな…。しかし恐ろしいことに全員がテクニシャンだったりもする、という…。とにかく性急な判断は避け、より大きなステージでの大暴れを見たときにこそ評価したくなるであろうバンドがそこにいた(また、彼らのステージ後の会場の気温が+6度上昇した事も追記しておきたい)。
初見であったとか、未知数のバンドによるイベントだとか、そんなもの終わってみればなんのことはない。灼熱の都心などものともせずに“熱”を放出しつくした5組。そして、気がつけば彼らの熱にやられ、各々の次のスケジュールを気にし始めている筆者であった。
text by 石川 洋
<Gloove'n Soul Night !>
■クライベイビーズ
1.なみだいろ
2.サクラの下
3.さよならの駅
4.涙を越えて
■ヨーキー
1.タシカメザン
2.かすみ
3.働く男
4.夢のような
5.ハジマリハココ
■EMPEROR
1.プロローグ
2.Sofe
3.LHA
4.アサラヘ
5.砂漠の海
■ソウルジャンクションズ
1.恋のから騒ぎ“幸せになろうじゃあ~りませんか”
2.運命の女2
3.僕が英語を話せたら
4.我がママ
5.にじのわ
6.Rollin’Rollin’
■As gloove
1.A
2.out side Blues
3.メッセージ
4.オレンジカラー
5.始まりのあと
6.Plastic Soul
7.雨のち晴れ
◆クライベイビーズのバイオグラフィなど
◆ヨーキーのバイオグラフィなど
◆EMPERORのバイオグラフィなど
◆ソウルジャンクションズのバイオグラフィなど
◆As glooveのバイオグラフィなど
◆若手バンドの灼熱ライヴ<Gloove'n Soul Night !>ライヴの画像
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梅雨明け直前、東京のこの日の最高気温33度!体感気温でいえばさらに+3度はあろうかという渋谷には、夏を思わせるような“熱”を持った5組のバンドが集結。サウンドも個性も年代もメンバー構成も様々ながら、強いてくくるなら“次世代を担う歌ものバンドたち”といったところか。
トップバッターは2001年結成。岩手は盛岡からやって来た3ピース“北の泣き赤子”こと、クライベイビーズ。
「伝えたいことたくさん持ってきました!」というMCから始まったプレイはケレン味のかけらもないビジュアルに似つかわしく、極々シンプルでド直球のギターロック。二つ名のとおりセットリストはマイナーコード中心。哀愁とノスタルジーあふれるメロディーにのるヴォーカルは時に感情的に、時に叙情的に、でもグイグイとオーディエンスに迫る。飾りっ気のない歌声が偽りのない心情を感じさせるのだ。丁寧に、しかし力強く歌われる言葉の中にはどこか牧歌的な日本の季節感や情景も散りばめられ聴き心地も上々。「さよならの駅」では決め球と思われる泣きのメロをリズム隊のテンションで後半に向けドラマティックに高揚させてみせる高い技量も見せた。この日披露した「サクラの下」が地元岩手の県内チャートで1位を獲得したというエピソードも納得できる。すでに関東圏にも進出し始めているようだが、近いうちに全国的なアクションを起こすであろう彼らが楽しみ、といえるライヴを見せてもらえた。
続いては登場前のSEの時点ですでに会場にクラップを起こさせていた人気者。それもそのはず、プロフィールによればこのバンド、2003年にメジャーデビューしていた某バンドだ。解散を経るも2009年6月再結成とある。そして新しく彼らが名乗ったのは、ヨーキー。
3ピース(+サポートギタリストの4人)がステージに登場すると同時にフロアからは歓声が。ネクタイ姿もキュートなヴォーカルに笑顔のベース、さらにドラムはアイドル的ルックスとくれば期待は高まるばかり。サウンドは期待通りのポップ&キャッチー。華のあるプレイを見せるドラムに、重厚感と飛び跳ねるようなイメージを併せ持つベースとリズム隊は申し分ない。ナイーヴな音色からアタック感のあるフレージングまで自在に魅せるヴォーカルが持つ求心力も好感触。MCでちょっとテレたりするところも女心をくすぐったはず?セットリストにユニコーンの名曲「働く男」なんかをもってきたりするところも“逃げ”じゃなくて純粋なサービス精神と見た。ルックスもプレゼンテーションも高い水準でまとまっている彼らのパフォーマンス、今のうちに見ておかないとプラチナチケット化するかも。ラストナンバー「ハジマリハココ」はバンドの持ち味が詰め込まれた1曲として出色の出来でした。
3番手はこの日のラインナップ中、異彩を放つ女性トリオ編成。2007年結成とキャリアは浅いものの、独自のインパクトを放った、EMPEROR。
プログレ的アプローチを魅せるリズムにラウドでノイジーなギター、強めにリバーヴのかかったヴォーカルがアバンギャルドというかアンダーグラウンドというかオルタネイティブというかサイケデリックというかインダストリアルというか…。イマドキのJ-POPには完全に背を向けた感のある彼女たちではあるのだが、朗々と淡々と歌う中、サビなどで見せるファルセットなんかには隠し切れない歌心も。さらに気がつけばこちらも足がリズムをとってたり…ややこしい形容詞の数々で評価を推し切るのはもったいない独特の存在感と(多分持っているであろう)中毒性といったあたりに期待したいバンドだった。「アサラヘ」「砂漠の海」あたりには彼女たちが持つ上っ面には見えてこないけど、本質的に秘めているであろうポップ性も感じたし。
ラス前。ここからは持ち時間も増え、いよいよクライマックスの予感?登場するは2006年結成、姫路からやってきた西のソウルメン、ソウルジャンクションズ。
その名の通りのSEの中、自ら手拍子(笑)しつつ「こんばんわー!」と現れるはスキニージーンズにTシャツで揃えた4人。どうにも東京っぽいというかシャイというか…で最前に来づらそうにしているオーディエンスを独特のハンドアクション+鉄柵に乗り上がって煽るヴォーカル。徐々に心を開き始めるフロアを見わたし、さらに引きずり込むバンドメンバーたち。関西人らしい、と言ってしまえばそれまでだが、その一言では言い尽くせない彼らの人懐っこさが伝わるステージだ。歯切れのよいヴォーカルと、ソウルミュージックを愛してやまないであろうギター、ベース、ドラムが奏でるサウンドはソウルであることはもちろんなのだが、ニッポンのメロディーでもあり誰のカラダにも馴染みやすい。
「恋のから騒ぎ“幸せになろうじゃあ~りませんか”」では恋愛、メロウなバラード「我がママ」では家族愛を、という風にサウンドやアプローチとは別のところにあるマインド=“愛”を感じることができれば楽しめること間違いナシ。新曲だというドライビングチューン「にじのわ」、ラストの「Rollin' Rollin'」の頃には、真っ直ぐすぎる熱さも、男の切なさもみっともなさもなぜか好もしく思え、すっかり彼らに引き込まれ“愛”を感じていたフロアだった。
いよいよ大トリ。そのバンド名からは正体を読み取ることが難しいながらも、得体の知れないエネルギーを発している5人、As gloove。ちなみに発音は「アズ・グローブ」です。
2003年結成のきっかけが音楽専門学校での出会いというだけあって、その演奏力は確実かつハイボルテージ。疾走しまくるロックやキラキラ感のあるポップチューン、ミクスチャーロックともいえる音楽性のベースにあるのはファンクのようだ。そんな多角的な構成に破綻をきたさず、グルーヴィーな仕上がりを与えているのも実力あってこそ、といえる。
中でも特筆すべきなのがヴォーカル。小柄な身体から発するビブラートの効いたハイトーンヴォイスとは裏腹に、貪欲なまでにオーディエンスへ繰り返されるアピール。いかなるときも崩さない笑顔でステージいっぱいに駆け回り、時にはシアトリカル(演劇的)ともいえる表現力でフロアを圧倒する。マイクスタンドでのアクション、オフマイクでの煽り。そこにいる全員と目をあわす、なんなら全員捕まえて、捕まえたら何があっても逃がさない…そんな鬼気迫る勢いでパフォーマンスを繰り広げるヴォーカルなのである。それに呼応するように、高度なプレイはそのままに、これまた終始笑顔のバンドメンバー。なんというかやれることは一つ残らず全部やる、しかもどこまでも全力で。いわば“全力力”の高いバンド、とでも言いたくなる感じ。あえてキャッチフレーズ風に言うなら「テクニカル初期衝動」みたいな。バンドで音楽ができていることが楽しくてしょうがない、みたいな…。しかし恐ろしいことに全員がテクニシャンだったりもする、という…。とにかく性急な判断は避け、より大きなステージでの大暴れを見たときにこそ評価したくなるであろうバンドがそこにいた(また、彼らのステージ後の会場の気温が+6度上昇した事も追記しておきたい)。
初見であったとか、未知数のバンドによるイベントだとか、そんなもの終わってみればなんのことはない。灼熱の都心などものともせずに“熱”を放出しつくした5組。そして、気がつけば彼らの熱にやられ、各々の次のスケジュールを気にし始めている筆者であった。
text by 石川 洋
<Gloove'n Soul Night !>
■クライベイビーズ
1.なみだいろ
2.サクラの下
3.さよならの駅
4.涙を越えて
■ヨーキー
1.タシカメザン
2.かすみ
3.働く男
4.夢のような
5.ハジマリハココ
■EMPEROR
1.プロローグ
2.Sofe
3.LHA
4.アサラヘ
5.砂漠の海
■ソウルジャンクションズ
1.恋のから騒ぎ“幸せになろうじゃあ~りませんか”
2.運命の女2
3.僕が英語を話せたら
4.我がママ
5.にじのわ
6.Rollin’Rollin’
■As gloove
1.A
2.out side Blues
3.メッセージ
4.オレンジカラー
5.始まりのあと
6.Plastic Soul
7.雨のち晴れ
◆クライベイビーズのバイオグラフィなど
◆ヨーキーのバイオグラフィなど
◆EMPERORのバイオグラフィなど
◆ソウルジャンクションズのバイオグラフィなど
◆As glooveのバイオグラフィなど