阿部真央、イベントライヴ会場をホームに変えて
2009年1月、アルバム『ふりぃ』で衝撃的なデビューを飾ったロックーンロールな19歳、阿部真央。5月にリリースした1stシングル『伝えたいこと/I wanna see you」も好調のあべまが、<ぴあ デビューレビュー>に登場した。
今回で142回を数えるこのイベントは、いわば有望新人アーティストの登竜門。最近では、SuperflyやROCK'A'TRENCHなど、大活躍中の数々のアーティストたちも出演した。この日も、Peaky SALTやSCANDALなど、注目の2バンドが熱演を繰り広げた。そのトリを務める形で、バンドメンバーを従え、阿部真央がステージに表れた。
ショートパンツにショートブーツというカジュアルキュートな出で立ちで登場した阿部真央。ステージ中央に立つと、アコギを肩にかけ、力強いストロークをかき鳴らし、「人見知りの唄」でライヴは始まりを告げた。リズムを取りながら、こぼれるような笑顔で歌う姿からは、オフィシャルイメージのふてぶてしさは感じられない。むしろ、少女と大人の女性の間で揺れる年代ならではの、爽やかさとほのかな色気にドキリとさせられた。軽快かつパワフルなバンドサウンドに乗せ、伸びやかなハイトーンボイスがライヴハウスの空間いっぱいに広がる。間奏では「Shibuyaの皆さん、おはようございます!」と大きな声で挨拶。ステージ度胸もかなりのものだ。その呼びかけに応え、手を振ったり、拳を突き上げるオーディエンスに出だしは上々だ。
2曲目には、デビューアルバムのタイトル曲「ふりぃ」を披露。疾走感溢れるロックナンバーであるこの曲のイントロになった瞬間、あべまの顔つきががらりと変わった。朗らかな笑顔は消え、強い意志を感じさせる硬質の表情を浮かべながら、長いストレートヘアを振り乱し、ギターをかき鳴らす。<ゆずれない今を>と、自らの決心を歌うサビでは、さらにボーカルがパワーアップ。ほとばしる感情をメロディーと歌声に代えて歌える、生粋のシンガーソングライターなのだと感じた。それは、観客の拍手と歓声がいっそう大きくなったことからも、彼女の歌が響いていることが分かる。
続いて、「今夜は楽しんでください。次の曲は一緒に歌って」と紹介したのは、「I wanna see you」だ。カルピスウォーターのCMソングとしておなじみだが、阿部真央のメロディメーカーとしての振り幅の広さを感じさせる楽曲でもある。切ないA、Bメロからキャッチーでポップなサビへと流れるこの曲では、少女のようなピュアな歌声で魅せる。これほどまでに表情豊かなシンガーが、どれほどいるだろうか。
阿部真央マジックに惹き付けられた観客の口々から、「カッコいい!」の声が飛ぶ。すこし照れた表情で、「ありがとうございます」と応える、あべま。決して雄弁ではないが、素朴で飾らないMCも彼女のピュアな魅力を伝えていた。アコギのチューニングをしながら、さらりと、「8月5日にニューシングルを出します」と重大発言。ライヴやMySpaceなどですでに発表し、多くの心に届いた「貴女の恋人になりたいのです」がついに音源化されるというインフォメーションに、場内からはどよめきに似た声も上がった。
「恋してる人みんなに、共感してもらえたらうれしい」。
そう言った後、バンドバージョンで披露されたバラードは、さらなる阿部真央の可能性の扉を開くものだった。片思いの切なさを等身大の言葉で綴った歌詞や、柔らかで切な気な歌声は、阿部真央の女の子な部分を100%さらけ出していた。“一緒に花火を見たい”という願いを“厚かましい”と歌ういじらしさに、初恋の純真とほろ苦さが溢れている。<貴方と出会ったあの日から 他に欲しいものはないよ>と告げる大サビでは、故意の苦しみを受け止め、決意するかのような力強さをたたえていた。まるで、無垢な少女の裸のように赤裸々でピュアな言葉と歌に、胸を突き刺されるような錯覚すら覚えた。オーディエンスも、彼女の一挙手一投足を逃すまいと、かたずを飲んで聴き入っていた。
一方、MCではあべまワールドが炸裂。逗子海岸で行われる<音霊>への出演をインフォメーションしようとして、「イズです?あれズシ?」とおとぼけ発言。観客から助けられると、「ただでさえふてぶてしいキャラで、中卒説が出てるのに」と切り返し、会場がおおいに沸く一幕も見られた。今夏、阿部真央は<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009>をはじめとする全国各地の夏フェスへの参戦が決まっている。大きな舞台で彼女がどんな勝負を挑むのか、こちらも期待が膨らむ。楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。「これで最後です」との言葉に、「もっとやって」「朝まで!」の声が、あちこちからかかった。「これから、ライヴもCD(リリース)も頑張ります」と言うと、自然と拍手がわき起こった。いつしか、阿部真央はイベントライヴの会場を完全なホーム状態に変えていたのだ。
この日のラストソングは「伝えたいこと」。「大切な人に、今、大切だと伝えて欲しい」という温かな思いがこもったメッセージソングだ。パワフルなバンドサウンドにも負けない太くしなやかなボーカルから、思いの強さがダイレクトに伝わってくる。
わずか5曲を歌い切って、阿部真央は去って行った。しかし、彼女を讃える拍手はいつまでも続き、客電が点いた後もアンコールの声は鳴り止まなかった。天然石の輝きを持ったアーティスト、阿部真央が、さらに磨かれ、ますます光り輝くであろうことを確信した夜だった。
文:橘川有子
<ぴあ デビューレビューvol.142>
@渋谷DUO MUSIC EXCHANGE
1.人見知りの唄~共感してもらえたら嬉しいって話です~
2.ふりぃ
3.I wanna see you
4.貴方の恋人になりたいのです
5.伝えたいこと
◆阿部真央オフィシャルサイト
今回で142回を数えるこのイベントは、いわば有望新人アーティストの登竜門。最近では、SuperflyやROCK'A'TRENCHなど、大活躍中の数々のアーティストたちも出演した。この日も、Peaky SALTやSCANDALなど、注目の2バンドが熱演を繰り広げた。そのトリを務める形で、バンドメンバーを従え、阿部真央がステージに表れた。
ショートパンツにショートブーツというカジュアルキュートな出で立ちで登場した阿部真央。ステージ中央に立つと、アコギを肩にかけ、力強いストロークをかき鳴らし、「人見知りの唄」でライヴは始まりを告げた。リズムを取りながら、こぼれるような笑顔で歌う姿からは、オフィシャルイメージのふてぶてしさは感じられない。むしろ、少女と大人の女性の間で揺れる年代ならではの、爽やかさとほのかな色気にドキリとさせられた。軽快かつパワフルなバンドサウンドに乗せ、伸びやかなハイトーンボイスがライヴハウスの空間いっぱいに広がる。間奏では「Shibuyaの皆さん、おはようございます!」と大きな声で挨拶。ステージ度胸もかなりのものだ。その呼びかけに応え、手を振ったり、拳を突き上げるオーディエンスに出だしは上々だ。
2曲目には、デビューアルバムのタイトル曲「ふりぃ」を披露。疾走感溢れるロックナンバーであるこの曲のイントロになった瞬間、あべまの顔つきががらりと変わった。朗らかな笑顔は消え、強い意志を感じさせる硬質の表情を浮かべながら、長いストレートヘアを振り乱し、ギターをかき鳴らす。<ゆずれない今を>と、自らの決心を歌うサビでは、さらにボーカルがパワーアップ。ほとばしる感情をメロディーと歌声に代えて歌える、生粋のシンガーソングライターなのだと感じた。それは、観客の拍手と歓声がいっそう大きくなったことからも、彼女の歌が響いていることが分かる。
続いて、「今夜は楽しんでください。次の曲は一緒に歌って」と紹介したのは、「I wanna see you」だ。カルピスウォーターのCMソングとしておなじみだが、阿部真央のメロディメーカーとしての振り幅の広さを感じさせる楽曲でもある。切ないA、Bメロからキャッチーでポップなサビへと流れるこの曲では、少女のようなピュアな歌声で魅せる。これほどまでに表情豊かなシンガーが、どれほどいるだろうか。
阿部真央マジックに惹き付けられた観客の口々から、「カッコいい!」の声が飛ぶ。すこし照れた表情で、「ありがとうございます」と応える、あべま。決して雄弁ではないが、素朴で飾らないMCも彼女のピュアな魅力を伝えていた。アコギのチューニングをしながら、さらりと、「8月5日にニューシングルを出します」と重大発言。ライヴやMySpaceなどですでに発表し、多くの心に届いた「貴女の恋人になりたいのです」がついに音源化されるというインフォメーションに、場内からはどよめきに似た声も上がった。
「恋してる人みんなに、共感してもらえたらうれしい」。
そう言った後、バンドバージョンで披露されたバラードは、さらなる阿部真央の可能性の扉を開くものだった。片思いの切なさを等身大の言葉で綴った歌詞や、柔らかで切な気な歌声は、阿部真央の女の子な部分を100%さらけ出していた。“一緒に花火を見たい”という願いを“厚かましい”と歌ういじらしさに、初恋の純真とほろ苦さが溢れている。<貴方と出会ったあの日から 他に欲しいものはないよ>と告げる大サビでは、故意の苦しみを受け止め、決意するかのような力強さをたたえていた。まるで、無垢な少女の裸のように赤裸々でピュアな言葉と歌に、胸を突き刺されるような錯覚すら覚えた。オーディエンスも、彼女の一挙手一投足を逃すまいと、かたずを飲んで聴き入っていた。
一方、MCではあべまワールドが炸裂。逗子海岸で行われる<音霊>への出演をインフォメーションしようとして、「イズです?あれズシ?」とおとぼけ発言。観客から助けられると、「ただでさえふてぶてしいキャラで、中卒説が出てるのに」と切り返し、会場がおおいに沸く一幕も見られた。今夏、阿部真央は<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009>をはじめとする全国各地の夏フェスへの参戦が決まっている。大きな舞台で彼女がどんな勝負を挑むのか、こちらも期待が膨らむ。楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。「これで最後です」との言葉に、「もっとやって」「朝まで!」の声が、あちこちからかかった。「これから、ライヴもCD(リリース)も頑張ります」と言うと、自然と拍手がわき起こった。いつしか、阿部真央はイベントライヴの会場を完全なホーム状態に変えていたのだ。
この日のラストソングは「伝えたいこと」。「大切な人に、今、大切だと伝えて欲しい」という温かな思いがこもったメッセージソングだ。パワフルなバンドサウンドにも負けない太くしなやかなボーカルから、思いの強さがダイレクトに伝わってくる。
わずか5曲を歌い切って、阿部真央は去って行った。しかし、彼女を讃える拍手はいつまでも続き、客電が点いた後もアンコールの声は鳴り止まなかった。天然石の輝きを持ったアーティスト、阿部真央が、さらに磨かれ、ますます光り輝くであろうことを確信した夜だった。
文:橘川有子
<ぴあ デビューレビューvol.142>
@渋谷DUO MUSIC EXCHANGE
1.人見知りの唄~共感してもらえたら嬉しいって話です~
2.ふりぃ
3.I wanna see you
4.貴方の恋人になりたいのです
5.伝えたいこと
◆阿部真央オフィシャルサイト
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