バンドとしての思春期を迎えたアンダーグラフ、4thアルバム『この場所に生まれた僕達は いつも何が出来るかを考えている』特集
アンダーグラフというバンドは、どう見られようとも、今の時代に合ってなくても、メッセージを伝えるバンドでいようという意識がすごく強くなった
真戸原直人(Vo & G):デビューしてからが9年ぐらいで、インディーズのときは1年ぐらいに感じます。実際には、インディーズ時代は約5年あって、もっと長いんですけど。懐かしく感じますね。
真戸原:1枚目『ゼロへの調和』はインディーズの頃にやっていたことを世に知ってもらうという感覚で、それまでの歴史を出した感じですね。2枚目『素晴らしき日常』を作っているときは希望にあふれていて、"これが音楽を作る意味だ"ということを感じながら作れたんですけど、3枚目『呼吸する時間』で急に意味がわからなくなったというか…(笑)。伝えたいことは2枚目で全部いえた気がして、その先どうやっていいかわからない感じで。"音楽は音があるから音楽なんだから、音を追求しよう"ということで、いろんな音を入れた完成度の高いもので、僕らが思うロックやポップを探そうと思って実験的に作ったのが3枚目です。それが終わったら、やっぱり"音楽にはもっとメッセージがあるべきだ"と思ってきたんですね。
真戸原:アンダーグラフというバンドは、どう見られようとも、今の時代に合ってなくても、メッセージを伝えるバンドでいようという意識がすごく強くなって。言葉が降りてくるまで曲を書かないとか、そういう感覚でした。パソコン上で曲を作ると、自分の引き出しにはないカッコいいものがたくさんできるんですけど、それをわざと遮断して、言葉を中心に曲を作っていこうという感じでしたね。3枚目までは、定期的にシングルやアルバムを出そうという意識が強かったんですけど、"できなかったらできなかったで、しばらく出さなくてもいいかな"ぐらいの気持ちで。そうすると逆に、どんどん生まれてくるんですね。"もっとこんなに言いたいことがあったんだ"って。それはうれしかったです。
バンドとしての生きがいを見つけないと、続ける意味がないんじゃないか? という感覚がすごくあるんです
真戸原:"命"というテーマは抽象的ですけど、自分たちがやるからにはもっと具体的に出していこうというのはありました。作り方は、僕は言葉とメロディを作るからメンバーは音を作ってほしい、というふうに、分担していましたね。
真戸原:アンダーグラフとして、バンドとしての思春期を迎えている感覚がすごくあるんですね。最初はメジャー・デビューという目標に向かって進んで、それを実現できて、やりたいことをやっているんですけど、次はどういうふうにして自分たちが大人になっていくか? というところにさしかかっている。バンドとしての生きがいを見つけないと続ける意味がないんじゃないか? という感覚があったんですね。応援してくれているみんなには申し訳ないんですけど、メンバーには自信がないところがたくさんあるんですよ。"カッコいい"といってくれるけど、"いや、アンダーグラフはカッコいいとかじゃないかもしれん"って、4人でずっと思っていたんですね。メッセージをちゃんと伝えるバンドといわれるとうれしいんですけど、"カッコいいとかロックだとかそういう感じじゃないよな"という話をして、バンドの芯になるものを探していたんです。その中で、"この世に生まれてきて僕は何をするか"とか、そういう言葉をメモってることが最近すごく多いことに気づいて、"それをテーマにアルバムを作るのはどうかな?"といってみたら、みんなの顔がすごく活き活きして、"そういうバンドの強さを出したいね"という話になって。ギターが歪んでいなくても、テンポが速くなくても、叫んでなくても、バンドの強さはあるんじゃないかということで、"伝えるメッセージの内容で強くしよう"というコンセプトでアルバムを作っていったんです。
真戸原:ストーリー性を持たせようという気持ちは、最初はまったくなかったです。ただ"命"について書いた曲がすごく多いけれども、そうじゃない曲もあるから、それをまとめるときに"1本の映画みたいにしたいな"と思い出して。それで1曲目の「Birth」と最後の「流転」を作って、途中の「puberty」というインストを作って。アルバムは、伝えたいテーマを持って作るものだということをあらためて改めて思いましたね。僕の好きなビートルズの『サージェント・ペパーズ』もそうですけど、アルバムにはコンセプトがあるべきだし、そういうものができたと思います。
真戸原:「ジャパニーズ・ロック・ファイター」という曲をなぜシングルで出したかったかというと、さっきもいったようにバンドが思春期にあって、自分たちの場所を探していたんですね。あの曲に対しては"新しい面が見れてうれしい"という声もたくさんあったし、"こういうのはやらなくていいんじゃない?"という声もたくさんあった。でもあの曲を作ることは必要だったと思うんですね。それがコンセプトの中にちゃんと収まって、納得できるアルバムに仕上がったなと思います。
応援してくれる人がいなかったら、早々に解散してたと思います(笑)
真戸原:感謝の意味をこめて、楽しいことをたくさんやれたらいいなということで、スタッフみんなで考えました。シングル、ライヴ、アルバムと来て、今はアンダーグラフのカヴァー・コンテストをやろうとしてます。まだ10個全部決まってないので、「こんなことしてほしい」というのがあればどんどんいってください(笑)。
真戸原:本当にそうです。応援してくれる人がいなかったら、早々に解散してたと思います(笑)。初めてシロ天(大阪城公園内)でやったときに、2人ぐらいの人が"この曲好きです"っていってくれたから、2回目もやろうと思ったわけだし。そのスタートが今につながっているので。
真戸原:他のアーティストに曲を提供するのは初めてだったので、楽しい作業でした。アレンジも演奏もアンダーグラフで、仮歌は僕が歌ったから、デモの時点ではそのままアンダーグラフなんですよね(笑)。でもV6のメンバーが歌入れしたものを聴いたら、ヴォーカルが変わるとこんな化学反応があるんだなって、メンバーも不思議がってましたね。いい経験になりました。
真戸原:月並みですけど、バンドで音を出すのが楽しいから。すごく壮大なプランを考えてスタジオに入っても、一小節のフレーズがすごく気になったりして、そういうミクロとマクロがたくさんある感じが楽しいんですね。逆もあって、すごく細かいことばかり気にしていたのに、ライヴをすると急に広い世界が見えて感動するとか。そういうことが楽しいので、続けていこうという気持ちになるんだと思います。"命"というテーマを歌うことで今はいい意味でゼロに戻った感覚で、次はもっと生きていく上での大切なものを伝えられたらいいなという気持ちがありますね。今までと違って、アルバムを作り終えた満足感よりも、"これができたから次もできる気がする"というプラスに向かっていく感覚がすごくあるんですよ。伝えたいことがどんどん出てくるだろうなという感覚は、作詞作曲している立場でいうとすごく安心感がありますね。
取材・文●宮本英夫
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