DIR EN GREY、ツアー佳境の東京3夜炎上でさらなる未踏の領域へ
去る2月に開始され、規模や形態を変えながら列島各地を巡演してきた<TOUR09 FEAST OF V SENSES>も、いよいよ大詰め。黄金週間まっただなかの5月2~4日の3日間、DIR EN GREYは、東京・新木場STUDIO COASTのステージを占拠した。すでに4月下旬にはZepp Tokyoでの3夜公演を消化している彼らだが、今回の3公演はいわゆる追加公演として組まれたもの。当然ながらすべての公演が超満員の大盛況となった。
3公演を通じて披露されたのは、アンコールも含めて、のべ60曲に及ぶ楽曲群。各公演とも、演奏曲の顔ぶれ自体に極端な違いがあったわけではない。が、プログラムを大胆に組み替えながら、まるで同一の物語の“章”を入れ替えるようにして展開された各日のライヴは、今回のツアーにおける収穫の大きさと、『UROBOROS』という作品の果てしない奥深さ、そして何よりもDIR EN GREYというバンドの凄味を伝えてくれるものだった。
3本の公演は、いずれもオープニングSEとしてすっかり浸透した「SA BIR」を導入に据えながら幕を開けた。が、その余韻のなかで聴こえてきたオープニング・チューンは各日とも異なっていた。2日は「BUGABOO」、3日は「INCONVENIENT IDEAL」、そして4日は前2公演では演奏されていなかった「我、闇とて…」。2008年11月にリリースされた『UROBOROS』を熟聴してきたオーディエンスの大半は、そこでアルバムと同様に「VINUSHKA」が始まることを想定しつつ、息を呑みながら身構えていたに違いない。実際、このバンドのさまざまな特性を凝縮したかのような「VINUSHKA」が体感させてくれる儀式めいた重厚な神秘的世界には、観る者を引きずり込まずにおかない説得力があるし、だからこそオープニング・チューンとしても比類なき効力を持つ。が、彼らは、何よりも定型化/定番化というものを好まない。様式を重んじるのではなく、自ら確立させたそれを破壊しながら、さらなる刺激を追求する。そうあってこそ、DIR EN GREYなのである。
そうしたオープニング曲の違いに象徴されるように、各公演とも随所に予想外の展開が仕掛けられていた。もちろん単純な意味でのマンネリ防止というか、もっと露骨な言い方をすれば“飽きてしまうこと”を未然に防ごうといった意図もそこにはあったことだろう。が、それによってもたらされたのは“新鮮な刺激”といった言葉では語り尽くせないような高揚感と興奮だった。楽曲の順列が異なっているだけで、そこに生じる余韻や落差、感情の起伏といったものに、これほどまでの差異が生じ得ることに、僕は無条件に驚嘆させられるしかなかった。ことに『UROBOROS』におけるクロージング・チューンである「INCONVENIENT IDEAL」から「VINUSHKA」へと連なっていく展開(2日の中盤及び3日の序盤)には、“逆もまた真なり”であることを痛感させられたし、『UROBOROS』を象徴する“己の尾に喰らいつく蛇”(神話世界の図案で、無限大を意味する記号“∞”の起源とされる)の図を連想せずにはいられなかった。
また、さまざまな演出効果が楽曲群とより密接な関係となり、さらに深い味わいを堪能させてくれた事実も付け加えておきたい。戦争の傷跡を思わせる映像を用いた「VINUSHKA」やステージを覆う紗幕上で魔方陣を思わせる図案が回転する「BUGABOO」、回転する閃光がイビツなスピード感を強調する「冷血なりせば」をはじめ、『UROBOROS』からの楽曲にはいずれも映像や照明を大胆かつ繊細に駆使した演出が伴っていた。それらが各楽曲の世界観をいっそう印象深いものとして体現することに一役買っていたことは言うまでもないし、さらに言うならば、同じ映像が白いスクリーンに映し出されるときと、ステージ背景のバックドロップ上に重ねられる場合とでは、微妙に印象を異にしている事実にも興味深いものがあった。そして、言うまでもないことだが、どんなに強烈な演出にも、進化/深化を遂げた楽曲たちにも負けていなかったのが、メンバー個々の存在感だった。
まさに『UROBOROS』をさまざまな角度から喰らい尽くそうとするかのような3日間のライヴを終えたところで、今回のツアーにおける都内での公演はすべて完了となった。ツアー自体が幕を閉じるのは、京の喉のアクシデントにより延期を余儀なくされた札幌と仙台での振替公演が終了してからということになるが、その瞬間を待つまでもなく、DIR EN GREYがまたもや未踏の領域へと歩みを進めたこと、『UROBOROS』が完全消化され、新たな可能性が生まれつつあることを実感させられた3公演だった。しかし『UROBOROS』を主題とするDIR EN GREYの探求はまだまだ終わらない。そのストーリーは6月、ヨーロッパで新局面へと突入することになる。
増田勇一
<TOUR09 FEAST OF V SENSES>
5月10日(日)宮城県 Zepp Sendai(4/7振替公演)
[問]G.I.P 022-222-9999
5月11日(月)宮城県 Zepp Sendai(4/8振替公演)
[問]G.I.P 022-222-9999
[総合問合せ]フリップサイド 03-3466-1100
◆チケット詳細&購入ページ(eプラス)
<欧州単独公演 TOUR09 FEAST OF V SENSES>
6月10日 オランダ/ユトレヒト/Heling
6月11日 フランス/パリ/Bataclan(この公演のみKILLSWITCH ENGAGEとの共演)
6月16日 ドイツ/ミュンヘン/Backstage Werk
6月17日 イタリア/ミラノ/Alcatraz
6月18日 スイス/チューリヒ/Alte Boerse
6月21日 ドイツ/ドレスデン/Strasse E
6月23日 チェコ/プラハ/Rock Cafe
6月24日 ポーランド/ワルシャワ/Progresia
6月25日 ドイツ/ベルリン/Columbia Club
<ライヴ・欧州ツアー フェス>
6月5日<ROCK IM PARK>ドイツ
◆rock-im-park.de
6月7日<ROCK AM RING>ドイツ
◆rock-am-ring.de
6月12日<DOWNLOAD>イギリス
◆downloadfestival.co.uk
6月20日<NOVAROCK>オーストリア
◆novarock.at
6月27日<METALTOWN>スウェーデン
◆metaltown.se
NEW DVD
『TOUR08 THE ROSE TRIMS AGAIN』
発売中
■初回生産限定盤
SFBD-0017~19 ¥8,800 (tax in)
■通常盤
SFBD-0020 ¥6,090 (tax in)
◆iTunes Store DIR EN GREY(※iTunesが開きます)
◆DIR EN GREYオフィシャルサイト
3公演を通じて披露されたのは、アンコールも含めて、のべ60曲に及ぶ楽曲群。各公演とも、演奏曲の顔ぶれ自体に極端な違いがあったわけではない。が、プログラムを大胆に組み替えながら、まるで同一の物語の“章”を入れ替えるようにして展開された各日のライヴは、今回のツアーにおける収穫の大きさと、『UROBOROS』という作品の果てしない奥深さ、そして何よりもDIR EN GREYというバンドの凄味を伝えてくれるものだった。
3本の公演は、いずれもオープニングSEとしてすっかり浸透した「SA BIR」を導入に据えながら幕を開けた。が、その余韻のなかで聴こえてきたオープニング・チューンは各日とも異なっていた。2日は「BUGABOO」、3日は「INCONVENIENT IDEAL」、そして4日は前2公演では演奏されていなかった「我、闇とて…」。2008年11月にリリースされた『UROBOROS』を熟聴してきたオーディエンスの大半は、そこでアルバムと同様に「VINUSHKA」が始まることを想定しつつ、息を呑みながら身構えていたに違いない。実際、このバンドのさまざまな特性を凝縮したかのような「VINUSHKA」が体感させてくれる儀式めいた重厚な神秘的世界には、観る者を引きずり込まずにおかない説得力があるし、だからこそオープニング・チューンとしても比類なき効力を持つ。が、彼らは、何よりも定型化/定番化というものを好まない。様式を重んじるのではなく、自ら確立させたそれを破壊しながら、さらなる刺激を追求する。そうあってこそ、DIR EN GREYなのである。
そうしたオープニング曲の違いに象徴されるように、各公演とも随所に予想外の展開が仕掛けられていた。もちろん単純な意味でのマンネリ防止というか、もっと露骨な言い方をすれば“飽きてしまうこと”を未然に防ごうといった意図もそこにはあったことだろう。が、それによってもたらされたのは“新鮮な刺激”といった言葉では語り尽くせないような高揚感と興奮だった。楽曲の順列が異なっているだけで、そこに生じる余韻や落差、感情の起伏といったものに、これほどまでの差異が生じ得ることに、僕は無条件に驚嘆させられるしかなかった。ことに『UROBOROS』におけるクロージング・チューンである「INCONVENIENT IDEAL」から「VINUSHKA」へと連なっていく展開(2日の中盤及び3日の序盤)には、“逆もまた真なり”であることを痛感させられたし、『UROBOROS』を象徴する“己の尾に喰らいつく蛇”(神話世界の図案で、無限大を意味する記号“∞”の起源とされる)の図を連想せずにはいられなかった。
また、さまざまな演出効果が楽曲群とより密接な関係となり、さらに深い味わいを堪能させてくれた事実も付け加えておきたい。戦争の傷跡を思わせる映像を用いた「VINUSHKA」やステージを覆う紗幕上で魔方陣を思わせる図案が回転する「BUGABOO」、回転する閃光がイビツなスピード感を強調する「冷血なりせば」をはじめ、『UROBOROS』からの楽曲にはいずれも映像や照明を大胆かつ繊細に駆使した演出が伴っていた。それらが各楽曲の世界観をいっそう印象深いものとして体現することに一役買っていたことは言うまでもないし、さらに言うならば、同じ映像が白いスクリーンに映し出されるときと、ステージ背景のバックドロップ上に重ねられる場合とでは、微妙に印象を異にしている事実にも興味深いものがあった。そして、言うまでもないことだが、どんなに強烈な演出にも、進化/深化を遂げた楽曲たちにも負けていなかったのが、メンバー個々の存在感だった。
まさに『UROBOROS』をさまざまな角度から喰らい尽くそうとするかのような3日間のライヴを終えたところで、今回のツアーにおける都内での公演はすべて完了となった。ツアー自体が幕を閉じるのは、京の喉のアクシデントにより延期を余儀なくされた札幌と仙台での振替公演が終了してからということになるが、その瞬間を待つまでもなく、DIR EN GREYがまたもや未踏の領域へと歩みを進めたこと、『UROBOROS』が完全消化され、新たな可能性が生まれつつあることを実感させられた3公演だった。しかし『UROBOROS』を主題とするDIR EN GREYの探求はまだまだ終わらない。そのストーリーは6月、ヨーロッパで新局面へと突入することになる。
増田勇一
<TOUR09 FEAST OF V SENSES>
5月10日(日)宮城県 Zepp Sendai(4/7振替公演)
[問]G.I.P 022-222-9999
5月11日(月)宮城県 Zepp Sendai(4/8振替公演)
[問]G.I.P 022-222-9999
[総合問合せ]フリップサイド 03-3466-1100
◆チケット詳細&購入ページ(eプラス)
<欧州単独公演 TOUR09 FEAST OF V SENSES>
6月10日 オランダ/ユトレヒト/Heling
6月11日 フランス/パリ/Bataclan(この公演のみKILLSWITCH ENGAGEとの共演)
6月16日 ドイツ/ミュンヘン/Backstage Werk
6月17日 イタリア/ミラノ/Alcatraz
6月18日 スイス/チューリヒ/Alte Boerse
6月21日 ドイツ/ドレスデン/Strasse E
6月23日 チェコ/プラハ/Rock Cafe
6月24日 ポーランド/ワルシャワ/Progresia
6月25日 ドイツ/ベルリン/Columbia Club
<ライヴ・欧州ツアー フェス>
6月5日<ROCK IM PARK>ドイツ
◆rock-im-park.de
6月7日<ROCK AM RING>ドイツ
◆rock-am-ring.de
6月12日<DOWNLOAD>イギリス
◆downloadfestival.co.uk
6月20日<NOVAROCK>オーストリア
◆novarock.at
6月27日<METALTOWN>スウェーデン
◆metaltown.se
NEW DVD
『TOUR08 THE ROSE TRIMS AGAIN』
発売中
■初回生産限定盤
SFBD-0017~19 ¥8,800 (tax in)
■通常盤
SFBD-0020 ¥6,090 (tax in)
◆iTunes Store DIR EN GREY(※iTunesが開きます)
◆DIR EN GREYオフィシャルサイト
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