鈴木祥子 MEETS 横浜美術
2009年3月22日、横浜の街は雨。鈴木祥子のライヴは雨の日が多い。少なくとも私が行くライヴは、なぜか雨が多い。
この日は、<鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2 発売記念ツアー“砂時計とラジオ、そしてピアノ”SPECIAL>と名づけられたCD発売ツアーの最終日だ。
それまで、京都では旧立誠小学校で、神戸では旧グッゲンハイム邸で、そして、広島でも行なわれたこのツアー。今回のツアーの開催は、郷愁や旅情を感じる場所で行なおうと決めたという。そして、横浜は彼女にとって昔よく訪れた街であることから選んだと。
横浜美術館のグランドギャラリー。というかほぼエントランスに近い場所で行われたライヴ。もちろん、美術館では展示会が行なわれている。そして、今回のライヴチケットで、開催中の展示会を見ることができるという特典付き。ライヴ前に、開催中の金氏徹平氏の作品を見た。ポップと言ってしまってよいか分からないが、とにかく元気をもらう作品だ。そして、開演までしばし美術館を離れる。そう、美術館閉館後ライヴが始まる。閉館時点では、楽器とPAだけが準備されていた会場。一旦、会場を閉め椅子が並べられるのだ。
そして、開場。階段を少し上ると広い踊り場がある作りの横浜美術館、その部分にピアノとウォーリッツァーが置かれ、主役の登場を待っていた。
19時を少し過ぎ、会場に拍手が起こる。コンサートホールやライヴハウスのように客電が落ちることなく、会場は明るいまま。そこに着物姿の鈴木祥子が現れる。渋い紫の柄のある着物に白い帯。髪はアップでなく、後ろで束ねている。宝塚の大階段を下りるかのように、階段を下りてくる。和のテイストを出しながら、歌うのは、洋楽カバー曲「I Say a little Prayer」。続いて「Don't Go Breaking My Heart」。着物で洋楽、何とも彼女らしい。
今回のツアータイトルでもある『鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2』に含まれているアルバムは、『Hourglass』『RadioGenic』『Shoko Suzuki Sings Bacharach & David』。彼女の20代後半を彩るアルバムだ。なかでも、『Hourglass』は、当時の彼女の心の中を吐露したような一枚だと感じている。それらの曲を、10年以上の時を経て彼女がどう歌うのか、とても気になった。当時、あまりに率直な彼女の言葉が痛すぎると感じる曲もあったから。
そして、今回発売された『鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2』に収められているブックレットを見ると、彼女の当時の思いがとても丁寧に綴られている。自分の世界を表現し、充実していたように見えた彼女に多くの試練があったことを知らされた。
しかし、オリジナルアルバムの発売から時を経て、自分のスタイルを確立した彼女は、あの頃をとても誇らしく歌いあげた。そう、とても凛としたライヴだった。それは、彼女が着物という衣装を選んだことにも現れているのかもしれない。
ライヴは、渋谷毅氏と武川雅寛氏のサポートを受け、とても穏やかに進む。客席も明るいままなので、少しダークに感じる曲でも、曲の世界に引き込まれすぎることがない。非日常であるけど、日常を感じながら歌声を聴く。
ほぼ『鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2』に含まれている懐かしい曲だが、横浜をイメージして作ったという、最新アルバム『Sweet Serenity』に収められている「Father Figure」を披露。大きな公園、星と観覧車と月。そう、横浜なのだ。
そして、しばらくやらないとやらなくなるけど、久しぶりに演奏すると新しい発見があるということで「Love Child」。“着物だけど、気分はロック”と言いながら、盛り上がった曲のあとに、しんみりした曲をするというとてもギャップのあるライヴだった。
アンコールでは、金氏徹平氏を迎え、短いトーク。作品を見て“こうしなきゃいけないというものはない”というメッセージを受けたという感想を。
そして、19年半ぶりの「Little Wing」。ドラムの師匠であったという藤井章司さんへ追悼の意味を込め、一風堂の曲「ブラウン管の告白」。
最後には、新曲2曲。最初に演奏されたのは、男性に対する女性の未練?とも思えるような愛情がたっぷりあふれた曲。「DO YOU STILL REMEMBER ME ?」そして、もう1曲は、対照的に“超・強気な女”と名づけられた「I'LL GET WHAT I WANT」。こちらは、女性として、エナジーをガツンもらえるような曲。そして、このシングルは、なんとアナログ盤とカセットテープでの発売と発表。この決定も、超・強気な女、鈴木祥子の一面だろうか?
横浜美術館という空間で行なわれたライヴは、彼女の20代後半を掘り起こすというよりも、あの時があって、今がある。だからあの時代は大変だったけど宝物だ、と感じさせてくれるライヴだった。
時間は、いろんなものを許し、生まれ変わらせていく。そう感じた。
<SINGS“SHO-CO-SONGS collection1”>
2009年5月16日(土)@南青山マンダラ
<SINGS“SHO-CO-SONGS collection2”>
2009年6月21日(日)@南青山マンダラ
<Le cinema de Juin~6月の映画~>
2009年6月4日(木)@浜離宮朝日ホール
◆チケット詳細&購入ページ
「I'LL GET WHAT I WANT」
2009年6月10日発売
※7inch EP & Cassette Tape
◆iTunes Store 鈴木祥子(※iTunesが開きます)
◆鈴木祥子オフィシャルサイト
[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/
この日は、<鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2 発売記念ツアー“砂時計とラジオ、そしてピアノ”SPECIAL>と名づけられたCD発売ツアーの最終日だ。
それまで、京都では旧立誠小学校で、神戸では旧グッゲンハイム邸で、そして、広島でも行なわれたこのツアー。今回のツアーの開催は、郷愁や旅情を感じる場所で行なおうと決めたという。そして、横浜は彼女にとって昔よく訪れた街であることから選んだと。
横浜美術館のグランドギャラリー。というかほぼエントランスに近い場所で行われたライヴ。もちろん、美術館では展示会が行なわれている。そして、今回のライヴチケットで、開催中の展示会を見ることができるという特典付き。ライヴ前に、開催中の金氏徹平氏の作品を見た。ポップと言ってしまってよいか分からないが、とにかく元気をもらう作品だ。そして、開演までしばし美術館を離れる。そう、美術館閉館後ライヴが始まる。閉館時点では、楽器とPAだけが準備されていた会場。一旦、会場を閉め椅子が並べられるのだ。
そして、開場。階段を少し上ると広い踊り場がある作りの横浜美術館、その部分にピアノとウォーリッツァーが置かれ、主役の登場を待っていた。
19時を少し過ぎ、会場に拍手が起こる。コンサートホールやライヴハウスのように客電が落ちることなく、会場は明るいまま。そこに着物姿の鈴木祥子が現れる。渋い紫の柄のある着物に白い帯。髪はアップでなく、後ろで束ねている。宝塚の大階段を下りるかのように、階段を下りてくる。和のテイストを出しながら、歌うのは、洋楽カバー曲「I Say a little Prayer」。続いて「Don't Go Breaking My Heart」。着物で洋楽、何とも彼女らしい。
今回のツアータイトルでもある『鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2』に含まれているアルバムは、『Hourglass』『RadioGenic』『Shoko Suzuki Sings Bacharach & David』。彼女の20代後半を彩るアルバムだ。なかでも、『Hourglass』は、当時の彼女の心の中を吐露したような一枚だと感じている。それらの曲を、10年以上の時を経て彼女がどう歌うのか、とても気になった。当時、あまりに率直な彼女の言葉が痛すぎると感じる曲もあったから。
そして、今回発売された『鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2』に収められているブックレットを見ると、彼女の当時の思いがとても丁寧に綴られている。自分の世界を表現し、充実していたように見えた彼女に多くの試練があったことを知らされた。
しかし、オリジナルアルバムの発売から時を経て、自分のスタイルを確立した彼女は、あの頃をとても誇らしく歌いあげた。そう、とても凛としたライヴだった。それは、彼女が着物という衣装を選んだことにも現れているのかもしれない。
ライヴは、渋谷毅氏と武川雅寛氏のサポートを受け、とても穏やかに進む。客席も明るいままなので、少しダークに感じる曲でも、曲の世界に引き込まれすぎることがない。非日常であるけど、日常を感じながら歌声を聴く。
ほぼ『鈴木祥子 SHO-CO-SONGS COLLECTION2』に含まれている懐かしい曲だが、横浜をイメージして作ったという、最新アルバム『Sweet Serenity』に収められている「Father Figure」を披露。大きな公園、星と観覧車と月。そう、横浜なのだ。
そして、しばらくやらないとやらなくなるけど、久しぶりに演奏すると新しい発見があるということで「Love Child」。“着物だけど、気分はロック”と言いながら、盛り上がった曲のあとに、しんみりした曲をするというとてもギャップのあるライヴだった。
アンコールでは、金氏徹平氏を迎え、短いトーク。作品を見て“こうしなきゃいけないというものはない”というメッセージを受けたという感想を。
そして、19年半ぶりの「Little Wing」。ドラムの師匠であったという藤井章司さんへ追悼の意味を込め、一風堂の曲「ブラウン管の告白」。
最後には、新曲2曲。最初に演奏されたのは、男性に対する女性の未練?とも思えるような愛情がたっぷりあふれた曲。「DO YOU STILL REMEMBER ME ?」そして、もう1曲は、対照的に“超・強気な女”と名づけられた「I'LL GET WHAT I WANT」。こちらは、女性として、エナジーをガツンもらえるような曲。そして、このシングルは、なんとアナログ盤とカセットテープでの発売と発表。この決定も、超・強気な女、鈴木祥子の一面だろうか?
横浜美術館という空間で行なわれたライヴは、彼女の20代後半を掘り起こすというよりも、あの時があって、今がある。だからあの時代は大変だったけど宝物だ、と感じさせてくれるライヴだった。
時間は、いろんなものを許し、生まれ変わらせていく。そう感じた。
<SINGS“SHO-CO-SONGS collection1”>
2009年5月16日(土)@南青山マンダラ
<SINGS“SHO-CO-SONGS collection2”>
2009年6月21日(日)@南青山マンダラ
<Le cinema de Juin~6月の映画~>
2009年6月4日(木)@浜離宮朝日ホール
◆チケット詳細&購入ページ
「I'LL GET WHAT I WANT」
2009年6月10日発売
※7inch EP & Cassette Tape
◆iTunes Store 鈴木祥子(※iTunesが開きます)
◆鈴木祥子オフィシャルサイト
[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/