レミオロメン、切なさと儚さのなかに確固とした意志を持つ、初のベストアルバム『レミオベスト』リリース総力特集

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[BARKS FEATURE] レミオロメン

記念すべき3月9日に奇跡は起こる 初のベストアルバム『レミオベスト』リリース総力特集

――シングルコレクションでもなく、ファン投票ベスト15という感じでもない。オリジナルのようなコンセプトのあるベスト盤だと思って聴けますね。

藤巻亮太(以下、藤巻):ベストというのはそれぞれの人の中に存在するものだと思うので、難しく考えたら答えのない世界だと思うんですけど。僕たちの中で、その曲があって大きく何かが変わったとか、その曲によって飛躍できたような曲を選ぼう、というコンセプトで選んでいきましたね。1曲目と最後に新曲を入れることで、これを節目としてまた次に向かっていくというベストアルバムになったと思います。

――タイミングでいうと、去年の終わりに『風のクロマ』というこれまでの集大成的なアルバムをリリースしたこと、活動の環境が変わったこと、過去最大規模のホール・アリーナツアーの真っ最中ということと、いろんな要素が絶妙に重なってますね。

藤巻:『風のクロマ』を作るまでに2年半もかかったという、ある意味ちょっとウロウロしていたので。そこから、自分たちが音楽をやっていく楽しさを明確に出したアルバムができたことで、バンドを始めてから何かが一周した感じがしたんです。そういう意味でのタイミングなんでしょうね。

――前田さんと神宮司さんは、このベストにどんな思いを?

前田啓介(以下、前田):おそらく一般の方々は、僕らに対して『ether(エーテル)』や『HORIZON』以降のイメージが強いと思うんですよ。そういう中でこのベストアルバムが、『朝顔』とか、それ以前の作品への入口になっていってほしいんですよね。「電話」や「ビールとプリン」の頃の僕らと、「スタンドバイミー」「明日に架かる橋」の頃の僕らと、「同じバンドなの?」って思うぐらいの大きな振れ幅があるので。そういう色のグラデーションを楽しんでほしいと思います。

神宮司治(以下、神宮司):ベストを出せるようになれたというのはうれしいことですよね。これがきっかけで、また新たなスタートが切れるのかなと思いますし、ここで新たにレミオロメンの世界に入っていただける方も多いと思うので、ここからどんどん広げていきたいなという気持ちも込めてます。

――選曲はどんなふうに?

神宮司:最初はある程度スタッフサイドから上がってきて、「やっぱりこれは入れたい」とか、そういうやりとりをして。1枚のCDの限界まで入れようということで、一番いいと思える選曲をしたつもりです。

──藤巻さんは、歌詞を書く立場として、すごく苦労したとか、思い入れが深いのはどの曲ですか。

藤巻:そうですね…とにかく一番歌詞が書けなかったのは「もっと遠くへ」ですね。始まりは北京オリンピックのテーマ曲(フジテレビ)のお話をいただいたことだったんですけど、ストイックに自分と向き合う方向にどんどんなっていったので。「もっと遠くへ」は、作った時よりも今のほうが、いい距離感で付き合えてるかなと思います。曲もそうだけど、自分たちも変わるんだなということを、今一番感じるのが「もっと遠くへ」ですね。

前田:ちょうどツアー中ということもあるんですけど、「もっと遠くへ」は、すごく強い曲になってきているんですよ。作った当時は、自分から外へ向けての「もっと遠くへ」だったんですけど、今は自分たちの心の奥に向けて歌われているような気がして。ツアーで演奏していても、「ああ、そうなんだよな」と日々思いながら演奏できる楽曲で、すごく感情が昂ぶる1曲になってます。3月7日から始まるアリーナ・ツアーでは、ぜひみなさんに聴いてほしいですね。ツアーの肝になる1曲だと思うので。

――個人的には「アイランド」と「粉雪」が並んでいるところに、圧倒的にエモーショナルな感情のほとばしりを感じました。「こんなにすごい曲だったんだ」って、再発見させてもらいました。

藤巻:人間って、意識と無意識があったら絶対に無意識のほうが広いですよね。「粉雪」はそういう圧倒的な無意識に気づかされるような曲だなぁと思って、そのへんがリアルなんだろうなと思ってます。人間って、いろんな思いがどんどん無意識の世界の中に消えていってしまうけど、逆にそうやって忘れていかないと生きていけないんでしょうし。この曲は、アスファルトに溶ける粉雪のように、無意識の中に思いが溶けていくような感じがすごくリアルだなぁと思います。「アイランド」は、状況で言えばサードアルバムの『HORIZON』でガーッと駆け上がっていったレミオロメンがいたんだけど、その裏で自分の意識の外に追いやっていたものに、不意にパッと向き合った時に、そこにネガティヴなものもいっぱいあったし、それを音楽にしないわけにはいかなかった時期だったから。そういう意味ですごくリアルな曲なんですね。

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