阿部真央、生きるチカラを楽曲に込める注目の新人シンガーソングライター、デビューアルバム『ふりぃ』リリース大特集

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阿部真央 デビューアルバム『ふりぃ』リリース大特集

生きるチカラを楽曲に込める 最注目の新人シンガーソングライター 阿部真央 きらめく個性を存分に表現した アルバムで堂々のデビュー

――音楽に初めて興味を持った時のことを、覚えていますか?

阿部真央(以下、真央):小学校……確か2年生の時に見たSPEEDだと思います。自分よりも少しお姉さんの女の子が、歌って踊っているのがすごくカッコ良く見えたんですよ。それ以来、中学校までアイドルになりたかったんです。

――それをきかっけに、人前で歌いたいと思うようになった?

真央:そうですね。小学校6年生の時に、大分県の小さいカラオケ大会に出たんですけど、その時の緊張と興奮と、見てくれたお客さんが「わぁ……!」っとなるあの感じが、忘れられなくて。

――ピアノも習っていたんですよね?

真央:私はやりたいとは言わなかったんですけどね(苦笑)。私の母・恵里子と叔母が、従妹と一緒に通わせたんですよ。中3まで続けたので、7年くらいは通っていました。あまり上手くはならなかったですけどね。ただ、ピアノは今の活動に生きています。ミュージシャンとしてやっていることの基礎は、全部ピアノを習うことで身につけたことですね。

――学生時代は、どんな生徒でした?

真央:中学生時代は、普通にキャピキャピしていましたよ。女の子で集まって、群れて、グループ同士でいがみ合ったり。ホントに普通の女子中学生と同じで、学年で一番モテる女の子に嫉妬したり(笑)。今思えば、本当に普通の中学生。

――リアルないじめとかもあったり?

真央:ありました。自分も無視されたりしましたから。昨日まで仲良かった子が、次の日急に無視してきたりして。何でああいうことになるのか、まったくわからないんですよ。でも、それって順番で回ってくるんですよね。すごく嫌な経験だけど、その当時は当たり前のこととして受け止めていて。誰も助けてくれないことも、みんなわかっているんです。それって、今思うとすごく怖い。今はもう耐えられないかもなぁ……。

――でも真央さんが今歌っている楽曲は、その世界から脱却した後の世界観が歌われているわけで。そこから抜け出たのは、どういう経緯だったの?

真央:高校生になって、その環境から外れたからですね。入学したての頃はちょっとだけ続いていた関係も、2年生にもなれば完全に断たれて。それで、私は一人になったんですよ。「一人っていいなぁ……」って思えて。高2になると、もう自分で音楽活動をはじめていて、音楽で広がった自分の世界の方が、楽しくなっちゃったんですよね。

――それ以降は、音楽を作る楽しさにのめり込んでいった?

真央:音楽を作ることで見えるものって、日常とは違う世界のように感じたんですよ。もちろん、同級生たちと一緒になって「ワー!」って騒ぐ時もあったけど、どこかで冷めてしまっている自分がいて、騒ぐフリしかできなくなりました。次第にそういうフリにも疲れて、高校3年の頃には完全に一人になっていました。それ以来、授業中に歌詞を書いたりしていましたね。

――真央さんの歌われている歌詞には、そうやって一人になってしまった自分や、自分と同じ境遇にいるであろう誰かのために捧げられた曲も多く収録されていますが、逆にいえば、自分を肯定してくれる唯一のものが音楽だったという考え方ですよね?

真央:そうだと思います。コンテストに出て、「デモ音源を作ってみようか?」と声をかけてもらった時に、「私が表現するものに、そう言ってもらえるだけの魅力があるのかもしれない」と、思うことができたんです。生々しい話、誰かが私の音楽にお金をかけても良いと思ってくれたってことですから。それが自信にも繋がっていきました。

――書かれる歌詞は独白ではなく、人に訴えたいという思いが強く出ているように感じます。

真央:そうですね。私が思っていることを、わかりやすい形でみんなに伝えたいんだと思う。結局、歌うことの醍醐味ってそこかな? と思うこともあるんですよ。私はごくごく普通の人間なので、考えていることも普通だし、みんなと同じことを日常感じながら生活しているわけで。ありがたいことに、今はそれを表現する場を与えてもらっているので、その私の感情に触れてもらいたというのは、私の素直な気持ちですね。どこにでもいる、普通な存在である私にしかできない歌も、間違いなくあると思っています。

――実際、「ふりぃ」や「人見知りの唄」で歌われている「一人じゃない」というメッセージは、真央さんの境遇が世間的な日常と近いからこそ、届いたり響いたりするものがあると思います。

真央:そこに込める歌の意味には、2つあると思っているんです。1つは「君だけじゃないよ」と伝えること。もう1つは「君は悲劇のヒロインじゃない」と伝えること。自分にも言えることだけど、地球の広さや人類の歴史の長さを、少し意識するだけで考え方って変われると思う。自分一人が悩んでいると思ったら大間違いだって。でも、それって結構見失いがちになっちゃうんです、私も含めて(笑)。

――真央さん自身は、なぜそこに気付くことができたんでしょうか?

真央:う~ん……人間に、すごく興味があるから、かな。他人にも興味があるし、自分の内面にもすごく興味があって。それが結果的に、人を客観的に見ることに繋がっているのかもしれないのですが、自分ではまだまだ全然、客観的とか俯瞰的に見ているだなんて考えてないんです。

――そういった真央さんのリアルな視点で切り取られた歌たちが、1枚の銀盤に集約されたものがこのデビュー・アルバム『ふりぃ』です。はじめてのアルバム制作はいかがでしたか?

真央:楽しかったです! それと素直に「すごい!」って。私が作詞作曲した曲がバンドアレンジで生まれ変わっていく過程を見ながら「こうやって作られていくんだ」と驚かされました。アルバムが完成する最後まで、驚きの連続でしたね。「なんで私なんかのためにここまでしてくれるんだろう」って思うくらい、いろいろなことをスタッフのみんながやってくれて。もう、感謝しまくりです。

――レコーディングで最も尊重したかった部分は?

真央:全曲、私が前から歌っていた楽曲だったので、レコーディングは歌に集中することができたんですよ。なので尊重したかったのは、その楽曲の主人公の気持ちになりきって歌うこと、ですね。基本的に自分の意識で歌うけど、そこに最適な“阿部真央”を当てはめるんです。歌う内容は違っても、それぞれがリアルな私であることに間違いはなくて。たとえば「MY BABY」って曲が人生で最初に作った曲なんですけど、恋の経験とかまったくないのに作ったんですよ。でも、それが私の「恋に恋している」素直な感情の表われで(苦笑)。

――「恋に恋している」という状況は、いまだに変わらず?

真央:どうでしょうねー? まー、私だってもう18歳ですから(一同笑)。

――でもその中に、「デッドライン」のように剥き出しの感情を込めた、ある意味で突き放すような曲も入っていて。この曲が入ることでアルバム全体が複雑な色味を帯びてくるんですよ。

真央:これは狙いました。いるじゃないですか、人のプライベートにヅカヅカと踏み込んでくる人って。そういう人に限って、自分は理解ある人間だとか思っていたり(笑)。でも、こういう部分も私の本音です。

――この多彩なキャラ性を維持しながら一枚のアルバムに落とし込んでいく作業は、かなりの苦労があったと思います。

真央:そうですね。だから、とにかく集中しました。そして、絶対に妥協もしない。音楽性について仕方なく揉めたりもしていたけど、そこからいろいろな人の意見が出てきて、結果アルバムがより良いものになっていったんです。この『ふりぃ』は、本当に私のリアルが詰まったアルバムになったと思います。私は常に、音楽には正直でいたいと思っているんですよ。これから先、私が経験を重ねていくことで音楽性が変わったり、メッセージ性が変わったりすることがあるかもしれないけど、それも包み隠さずに表現していきたいです。それが、阿部真央のリアルですね。

取材・文●冨田明宏

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