自分達らしさを追い求めたミスチル流バンドサウンドのアルバム『SUPERMARKET FANTASY』特集

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Mr.Children 15thオリジナルアルバム『SUPERMARKET FANTASY』2008.12.10リリース特集

自分達らしさを追い求めたミスチル流バンドサウンドの結論

4人それぞれの音楽性が高い次元で融合した音それがここにある!

──15枚目のオリジナル・アルバム『SUPERMARKET FANTASY』が完成しましたが、そのクオリティの高さを知るために、Mr.Childrenのバンド内部での音楽的な話の変遷を聞いてみたいんです。メンバー間で「最近、どんな音楽聴いているの?」みたいな話はするんですか?

鈴木英哉(以下、鈴木):特にしないなー。「(誰かアーティストの)あのアルバム聴いた?」って話は、たまにするけど、それも、あんまりしない。

──鈴木さん以外のメンバー3人は、同じ高校に通っていたわけですが、「どんな音楽が好きなの?」とかっていう話はしていたんですか? 古い記憶になりますが(笑)。

桜井和寿(以下、桜井):してましたね。まだLP(アナログ盤)だったかな? CDもあったけど、LPの方が多かった。カセットテープを借りたりだとか…。

──桜井さんは、例えば中川さんにどんなLPやCDを借りていたんですか?

桜井:中川はあんまり学校に来てくれなかったので、借りられなかったけど(笑)、田原からは鈴木ケンジさんのギター・アルバムだとか、U2もそう。あっ、エコーズとかも借りたな。

──UKモノとギター中心のJ-ROCKが田原さんは好きだった、と。

田原健一(以下、田原):はい。当時は好きでしたね。

中川敬輔(以下、中川):俺も、田原からU2やヒートウェイヴなんかを借りた記憶がある。

──田原さんは野球部に所属してたんですよね。

田原:野球部に在籍したのは3ヶ月たらずで、その後は、音楽に傾いていきましたね。多感な年ごろだったし、音楽がおもしろくてしょうがなかった。

──今回の『SUPERMARKET FANTASY』が、とても高い次元で4人の音楽性が融合していると思ったので、バンドを始めた時は、それぞれが何を指向していたのかなと興味が湧いたんです。例えば、桜井さんが「こういうタイプの音楽を演りたいから、みんなついてきてくれないか」みたいなことを言うバンドではないと思うんです。

 

桜井:そうですね。そういう話はしたことがない。自分ではしたことがないと思っているだけで、実はしてたのかな?(笑)

鈴木:初期の頃、渋谷のラ・ママ(ライヴハウス)でワンマンをやっていて、それが一区切りついた頃に、「こういう音楽の方向性はイイよね?」って、下北沢で4人で話したことはある。アズテック・カメラやフェアグラウンド・アトラクションみたいなアコースティックで垢抜けてるような音楽をやろうか、みたいな話は1度だけしたことがある。

──中川さんからの強力なプレゼンとかはなかった?「P-FUNKを聴け!」とか…。

中川:まったく、ないです。

桜井:あ、でも、僕は初期の頃ラヴソングばかりを書いていたんですね。そしたら田原が「ラヴソングじゃないのも作ってみたら」と言った。僕は「はいはいー」ってすぐ作ったんだけど、曲名が「ベルリンの壁」(笑)。

鈴木:急に社会派になっちゃった。その曲、演ったなー。コーラス付けた記憶があるもん。

田原:その曲を桜井が持ってきたのは“政治・経済”とか、そういう授業の後ですよ?

──授業でペレストロイカとかやっていたんじゃない? ある意味で、即効性がある(笑)。そんな楽しいエピソードもありつつ、15枚目のオリジナル・アルバムまできたわけですよね。

鈴木:皆で共通する好きなバンドはあったけれど、特定の音楽ジャンルを絞って、そこに向かっていくようなことはしてこなかったですね。

桜井:一度、僕らはオーディションに落ちたんですね。その時に「もう少し明るい音楽をやろう!」っていう“大ざっぱな方向転換”がありました(笑)。そんなに悩みもないのに、無理やり悩んだような曲が多かったから…。で、そのオーディションのゲストにUNICORNが出演して、すごいなと思った。明らかに僕らと違ったのは、楽曲に対するアレンジですね。その後、Mr.Childrenの初期に小林(武史)さんが参加してきて、僕らはアレンジの仕方を主に学んでいったんです。

──近年、桜井さんが持ってきたデモテープに、小林さん含めメンバーは即座に反応して、レコーディングが始まっていくわけですが、初期の頃には、そうはいかなかったでしょう?

 

桜井:一応アレンジのようなものをするんですが、かなり時間がかかるし、楽曲にとって、どの形がいちばんいいのかもわからなかった。

鈴木:1曲に1ヶ月くらいかかる時もあったなー。

中川:曲に対してどう弾いたらいいのか?…それが出てこないことは昔も今もないんだけど、曲の構成を含め“何がいちばん正しいのか?”を見極めることが、昔はできなかった。曲の全体を見られない…というか。“しっくりする感じ”をずっと探してましたね。

──桜井さんが、バンドに持ってくる時は、基本“弾き語り”のスタイルだものね。でも、それをそのまま出していいと思っているわけではないから、Mr.Childrenというバンドが成立しているわけですしね。

桜井:そうですね。弾き語りをするシンガー=ソングライターの桜井として、世の中に出ていったら、聴く人に認めてもらえないと思う。暗いから(笑)。

──では、Mr.Childrenというバンドに自分の歌を“通して”表現するのはなぜか? と問われたら、なんと答えますか?

桜井:うーん……「魂が乗らないから」かな? 自分ひとりでやっていても、それなりにはできるけど、この4人で、小林さんを含め5人で音を出し歌わないと、自分の魂が乗らないんです。だから、佐伯さんが言ったように“『SUPERMARKET FANTASY』が、メンバーそれぞれの音楽性が高い次元で融合した音”だとしたら、それはすごく嬉しいし、ある種目指してきたことでもある。ここに来るまでに、16年かかったってことですよね。だから、できればこのアルバムをデビュー作にしたいな(笑)。

取材・文●佐伯 明

 
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