akiko、古き良きジャズと最先端のジャズを聴かせる『What's Jazz?-STYLE-』『What's Jazz?-SPIRIT-』連続リリース大特集

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akiko 『What's Jazz?-STYLE-』『What's Jazz?-SPIRIT-』連続リリース大特集

スタイル、スピリット どちらも『私の考えるジャズ』

古いスタイルへの好みと“What's Jazz?”

――akiko さんはなぜ、ジャズの古いスタイルに興味があるのでしょう? 直接ジャズの時代に生きているわけではないのに。

akiko:自分の趣味なんです。新しいものを買わないわけではないけれど、音楽だけではなく服とか家具とかも、昔のものが好きなんです。たとえば車とかでも、昔のドイツ車のほうが今のものより形として惹かれますね。性能はもちろん今のほうがいいんでしょうけど。モノが生まれるときに費やされるエネルギーや情熱が、昔といまとが違うんでしょう。

――なぜでしょうかね。

akiko:便利になったからでしょう。今なら、コンピュータがあれば誰でも音楽はできます。でも今回の『STYLE』でやっているドラムは、本人の技術がなければできません。

――でもノスタルジーでやっているわけではないですね?

akiko:あまり意識していたわけじゃないんです。ただ、同じような形や同じような曲で録音するので、そこになにかしら意味を持たせたいと思っているんです。いろいろな人にジャズに興味を持ってもらいたいし。当時のジャズというのは、今の時代に聴いてもすごくオシャレです。9曲めはわざとモノラルで録音してノイズを入れたり。なにか今の人でも感じるところがあればいいなと。古いジャズだけを聴くなら、はっきり言って、昔のアルバムを買ったほうがいい(笑)。だから、そこになにかを付け加えたいんです。今回、“してやったり”と思ったのは、自分が書いた曲がスタンダードと思われてたことですね。私にとっては最近のジャズの曲はつまらないです。

――『SPIRIT』のほうでかかわっている福冨幸宏さん(DJ、クリエイター)とはどういう経緯で?

akiko:彼とは今まで何回か仕事をさせていただいて、彼の職人的なところが、今のクリエーターにはない部分だなと思います。田中義人さんはアーティスティックな部分と職人的なものを持ち合わせている人ですね。もともと今回のアルバムを2枚に分けたらいいんじゃない、と言ってくれたのも田中義人さんだったんです。

――“STYLE”と“SPIRIT”、この2つの単語はそんなに簡単に出てこないでしょう。ジャズをこの2つの言葉で分けるというのはすごいことだと思います。

akiko:コンセプトからアートワークに至るまでよく考えました。最近マイルス(デイヴィス)の自伝をいまさらながら読んでみて、“ジャズはスタイルが命だ”ということと“ジャズはスピリットなんだよ”という言葉が両方出てくるんです。私が言っていることは、格別に新しい考えではないんですよ。


――そういえば、使っている言葉が多いですね。フランス語、ポルトガル語、そして英語。

akiko:私はフランス語を少し習っていたことがありますが、もちろんネイティヴではないです。でもそれは別にマイナスのことではなくて、なにか違う味が出ればそこに意味があると思うんです。アストラッド(ジルベルト)が日本語で歌って“微笑ましいな”と思うことがあれば、それでいいでしょ。最近自分の歌は下手になっているかもしれないです。以前は、うまく歌おうと思っていたんですが、うまいことが良いことではない。リズム感とか声量とか“うまく歌う”だけならアメリカにたくさんいるじゃないですか。でも、そもそも音楽って、上手い下手が問題なのかと常に思うんです。究極は趣味の世界かもしれない。それが”What's Jazz”という曲になっているんです。私自身は、どんどん自然に歌えるようになっていると思う。以前は歌に関して“日本人と思えない”とか“日本人ですか”と聞かれたので、日本人っぽくなく歌わなきゃと思っていた時期もあったんですけどね。

――日本という土地に合ったジャズが生まれてきているのかもしれませんね。

akiko:日本人らしさということを日本古来の楽器とか演歌という、わかりやすいスタイルで示す必要はないと思うんです。小西康陽さんと仕事をしているときに、それを感じました。日本人っぽいというのは誇れることだなと、小西さんと仕事をしていて思いましたね。

――今後は、どんな活動を予定していますか?

akiko:ロンドンナイト・トリビュート(ロンドンのパンク以降の好きな曲を集めたアルバムのこと)を作りたいです。もともと音楽を聴き始めたきっかけに戻っていっているかもしれないです。音楽で自分がグッと来るものって、若いときに聴いた音楽だったりするんじゃないですか。

取材・文●田中公一朗

 
 
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