藤井フミヤ、26年目に向けての意気込みを示した初のコラボ・アルバム『F's KITCHEN』リリース記念大特集

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藤井フミヤ 26年目に向けての意気込みを示した初のコラボ・アルバム『F's KITCHEN』リリース記念大特集

デビュー25周年記念アニバーサリーイヤー

──『F's KITCHEN』に参加した作家陣は、バンドとしてもまるで違うよ。例えば村上てつやさん(ゴスペラーズ)と加藤ひさしさん(THE COLLECTORS)では、グループの性格が真逆だし(笑)。

藤井フミヤ:THE COLLECTORSは、完全に英国指向だからね。アメリカ音楽聴きません! って言い切るぐらいの勢いだから。

──ヴェスパ以外は乗りません! とか。言ってみれば、『F's KITCHEN』は、フミヤさんが持っている感性軸の端から端までを表わしているのかもしれないですね?

藤井フミヤ:強いて言うなら、「ポップ・シンガー」ということになるんでしょう。どんな歌が来ても、乗りこなして着こなすというような。

──フミヤさんのセンスの幅広さは、昔から感じているけれども、ぜんぜん狭まらないね? 普通、キャリアを積んでくる=年を重ねてくると、感性軸の振り幅が狭まってくるものでしょう?「頑固オヤジ」的に、さ。

藤井フミヤ:あー、そうなってくるのは、俺の場合、これからだろうね(笑)。身体が動かなくなってきたとか、そういう事態にならないと、狭まらないかもしれない。

──昔、フミヤさん言ってたものね。「ロック畑の人だと、バイクがあって革ジャンがあって、バーボン・ロックがあればそれでいい! みたいな人が多いけど、俺はそういうタイプではない」って。

藤井フミヤ:それで終わり、finish! になるのがイヤなんだよね。その意味では、強欲。新しいモノ好きだね。あー、でも最近は新しいモノ好きでは、なくなってきたよ。情報の量が多すぎて、面倒くさい(笑)。

──それは、気力・体力の問題ではなくて?

藤井フミヤ:いやでも、情報が多すぎるよ。アマゾン川やサハラ砂漠のことですら、オンタイムでわかるからね。それは、どうなんだろうって思うよ。

──たくさんの情報を、フミヤさんだったり僕の中心線である音楽に、どんなふうに収束させるのか? そこが難しいことはわかる。

藤井フミヤ:うん。音楽に限って言えば、25年前は、洋楽と邦楽の間に大きな川のようなものが流れていたけど、今は、もうないね。新しさを感じる洋楽が極端に少ない。だから、若いコたちもクラシック・ロック~ザ・ビートルズやレッド・ツェッペリンとかを聴くじゃない? 1曲7分の曲とか(笑)。売れる・売れないという判断だけで音楽を作っていなかった時代は強いね。いちいちサウンドが新しかった。サウンドが新しくないなら、邦楽ロックを聴くよね。歌詞がわかるもん。

──この四半世紀で劇的に変わった・進化したものは何だと感じてますか?

藤井フミヤ:やっぱりソフトじゃないかな? レコード盤はすでにないわけだし。「音楽を作るのに、作業が必要だった時代」を俺たちは通過したというか。音楽を作るのに、手間ひまが確実にかかったよね。CDだって、今や聴くものじゃないような気がする。インストールするものに近い。インストールし終わったら、棚にしまう…みたいな(笑)。

──では、この四半世紀で退化したものは? 情熱?

藤井フミヤ:かもね。よく「チェッカーズでデビューした頃は忙しかったんでしょう?」とか聞かれるけど、その頃はケータイも何もなかったからね。一度出かけたら探しようがない(笑)。今はどこまででも追いかけられるから、ひょっとしたら今の方が忙しいかも。昔は、よく遊んでいたもの。世の中に、ある種のすき間があったから、情熱も生まれたんじゃないかな?

──ここまで活動してきて、今だからこそ重要視しているものはありますか?

藤井フミヤ:今さらながら“音楽”ですよ。映画はもちろん、ゲームにもアニメにもPCのコンテンツにも、音楽は存在してるでしょう? だから、今さらながら、一生懸命音楽をやるっていうモードになってますよ。

取材・文●佐伯明

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