TAHITI80、ロックの原点に立ち返った意欲作4thアルバム『アクティヴィティー・センター』リリース大特集

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Tahiti80 約3年半ぶり通算4枚目のオリジナルアルバム『アクティヴィティー・センター』リリース大特集 INTERVIEW

──今作のソングライティングに関して、特に意識したこと、書きたかった曲のイメージはどういうもの?

グザヴィエ:あまり独善的にはなりたくなかった。僕以外は誰も分からないようなコードを入れてみたりとか、そういったことはしたくなかったのさ。とにかく、不可思議なコード・ストラクチャーや変わったメロディーといったようなものに身を隠したくはなかった。とにかく、力強いメロディーを伝えたい、という思いだった。今回のアルバムで書いたことは……ティーンエイジャーみたいな歌詞もあるよ。僕がミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた頃に感じたことなんかも書いているし、これまで経験してきた旅行についても書いている。東京の明治神宮のことも歌詞に入れているし、インドネシアへ行った時のことも書かれている。それから、ラヴソングもあるよ。

──これまでのすべてのサウンドが凝縮されつつ、肩の力がストンと抜けた曲が揃っている印象がある。

グザヴィエ:スムーズでナチュラルな雰囲気を曲から醸し出したかった。自分に嘘はつけないから、最初に感じた衝動や、本能を大切にしたんだ。だから、レコーディング中にも、自分達を偽っていると感じた瞬間はなかったと思う。

──ソングライティングそのものもスムーズに?

グザヴィエ:バンドの他のメンバーもいくつか曲を書いたんだ。素晴らしい曲だったんだけど、そのうちの幾つかで僕は別のルールを採用し、徹底的にリアレンジしてしまった。自分のアイディアではないところから曲を作ることは面白かった。それから、僕は歌詞を全て書いたけれど、他人のアイディアから、その人の身になって歌詞を書くのはなかなか大変だった。それに、僕はちょっと怠け者な一面もあって(笑)、メロディーを思いついたら、それを口ずさめるような言葉を適当につけて歌うんだ。そんな感じで数か月もずっと歌い続け、スタジオに入ってレコーディングという時になって、慌てて歌詞を完成させるんだ。まあ、緊迫感があった方が、いいものが生まれるから、それはそれでいいんだけど、なかなか骨の折れる作業だね。

──「All Around」を聴いていると新しい一歩を踏み出す勇気が出てくる。この歌詞のモチーフが浮かんだきっかけは?

グザヴィエ:この曲は、シルヴァンのアイディアから作られた。彼が“Love is all around”って言ってるデモを持ってきたんだけど、できていたのはその部分だけで、その他の部分はなかった(笑)。僕達の曲って、メランコリックだけど悲観的ではない。この曲にもポジティヴなメッセージが含まれているしね。この曲は、友達に再び勇気を与えようとしている歌。一般的なテーマだけど、独自のメタファーとアイディアを入れようと頑張ったよ。だから、皆がこの曲をシングルに推した時はびっくりした。僕としては、ストラクチャーも少々複雑だと思っていたんだけど、レーベル側はすごく曲の出来に喜んでいたから、「それならいいだろう」って同意したよ。

──「One Parachute」には明治神宮というフレーズが出てくるね。あなた自身も実際、ここでお祈りをしたの?

グザヴィエ:うん、明治神宮には何回か行っているよ。絵馬に願い事を書いてお祈りした。明治神宮には感動したよ。東京に行った時には必ずといっていいほど訪れてる。素晴らしい場所だと思う。ビルや車で溢れ返っている都会に、あんなオアシスがあるんだから、驚きだね。美しい上に、ヨーロッパの文化とは全然違うものだから、興味深かった。僕にとって明治神宮はずっと特別な場所だったから、歌詞の中に入れようと思ったのさ。

──恋や愛のいろんな形を通して、様々な価値観と人間模様がこのアルバムでは描かれているね。今作の歌詞を書くにあたっては、何か大きな「人間を描く」というテーマのようなものがあったの?

グザヴィエ:大きなテーマのようなものはなかった。ソングライティングもレコーディングも、かなり短期間でやったから、曲の中になんとなく共通の傾向のようなものはあるかもしれないけれど、ソングライティングやレコーディングの間は、特に意識していなかった。

──「Dream On」は、女としては「こんなこと言われたら嬉しすぎて泣いちゃう」と思っちゃうような歌詞でありつつ、生きることへの希望をはっきり伝えるもっと大きな視点の歌詞としても届いてくる。この歌詞を書く際に、あなたの脳裏に浮かんでいた景色や光景がもしあれば教えて。

グザヴィエ:ええと、あの曲を書いていた時、僕はなんとなくシルヴァンのことを考えていたんだ。彼が経験している様々な問題……僕がそんなことを考えてあの曲を作っていたなんて、彼自身は知らないけど、僕はシルヴァンと彼の奥さんを考えていたんだ。彼の耳の問題で、2人は大きな変化に直面しなければならないけれど、そういった辛い経験から何か得るものがあったらいいなと思っていたんだ。

──今作を作ったことでTahiti80が得たものは?

グザヴィエ:僕達は前作でひとつのサイクルを終え、今作で、キャリアにおけるセカンド・ステージに進んだと思う。このアルバムでは、そのステージの基盤を作ったという感じかな。それが今作を作ったことで得たものだと思う。次に何をやるのか、自分達で予測するのはなかなか難しいけれど、メロディーとリズムをがっちり抑えていれば、今後も間違った方向には進まないだろうとは思っている。でも、次のアルバムはジャマイカン・ミュージック一色になるかもしれなければ、30分の曲が2曲しか入ってない、なんてことになるかもしれない(笑)。今の時点ではわからないなあ。

取材・文●妹沢奈美

 
 
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