村田和人、約30年のときを経て明かされる珠玉の未発表曲集『NOW RECORDING+』リリース大特集
村田:リズムをどう重ねるか、ですね。今回、リズムにはループを使ってるんです。それもソリッドじゃなく土着的なリズムのループを。それと村田のアコースティックギターでアレンジの原型を作るというのが、今回のすべての曲についての最初のコンセプトだったんです。どんなループを選んで、そこにどんなアコギを重ねるか。その時点で基本的なアレンジとか全体の聴こえ方が決まっちゃうし、それを基にベースとかギターを重ねていくんで。
村田:かけましたね。機械的なリズムのループも混ぜたりしてるんですが、もとにあるのは生の人間のリズム、土着的なリズム。そこに機械的なものを混ぜたらどうなるのか、ある程度でき上がってきてからも、一晩中そんなことやってましたね。サビにこう入れたらどうだろう、エンディングにこう混ぜたらどうなるかって。そんな感じでやってると果てしないんです。結局、色々なところに色々なループを使ってます。
村田:そうです。ただ、最初はホントにシンプルに、アンプラグドのライヴみたいな形で、アコギと土着的なループ、ベースを入れて、それにちょっとエレキギターとかピアノのソロを足す程度の、アコースティックだけどリズムはちょっと凝っているというアルバムにしようと思ってたんですが、やっていくうちに、じゃあスネアも入れて、ループも重ねて、ってどんどん音数が増えちゃって。最終的には普通の4リズムのアルバムになっちゃった(笑)。
村田:歌も最初はスタジオで録ってたんですけど、正月休みになっちゃって。それで家の収納家具にウレタンをバーッと貼り付けて、そこで録っちゃいました。初めて自宅でやってみたんですけど、歌を録ることに関しては自宅はアリだと思いましたね。エンジニアやスタッフがいてというスタジオの環境よりリラックスして録れるから。こんなにいい感じで歌を録れるなら、スタジオ作っちゃおうかと思いましたね。
村田:アコギ、シンセ系の上モノ、ベースは自分で。あとエレキギターだけは自分のバンドの山本圭右っていうギタリストにやってもらって。だからミュージシャンは2人だけでした。
村田:洋楽ばっかりやってましたね。楽器を始めた中学くらいはストーンズ、ビートルズ、高校でブリティッシュハードみたいな感じ。日本の音楽も一応は聴いていたし、友達と一緒に演奏したりはしてましたけど、それが最高にカッコいいとは思えなかった。日本語はヤボったいイメージがあってね。それはそれでいいテイストなんですけど、自分が作りたい音楽ではなかった。
村田:高校生のときにはっぴいえんどが出てきて、これはすごいと思った。こういうふうに聴こえる日本語の音楽だったら自分もできるかもしれないと。そこからオリジナルを作り始めたんで、今回の10曲の中にも、いかにも“夏”っていう、いわゆる細野さん系の曲もあるんです。その後達郎さんを聴き始めて、オリジナルのクオリティも上がっていって、という感じですかね。でも松本隆さんほど歌詞はうまく作れないですね(笑)。アマチュアのときから、自分の歌詞は全然使えないと思ってたし。
村田:そうですね。大学に入ったときに、18~19歳のときに作った曲のデモテープを配ってメンバーを集めたんですが、そのときのメンバーに“お前にそっくりな人がいるよ”って聴かされたのがシュガーベイブだったんです。だから最初にオリジナルを作っていたときから、そんなテイストがあったんですね。達郎さんとか大瀧詠一さんとかと、好きな歌い回しとか声質とかが似てるんでしょう。で、シュガーベイブを知ってから達郎さんのアルバムとかを手に入れて、それ以降は影響を受けてますね。10代の頃、日本のアーティストでアルバムを買ったりライヴを見に行ったりしたの、達郎さんだけですから。
村田:コーラスのやり方なんかは、達郎さんのコーラスをやったり、達郎さんのレコーディングを見たりしながら覚えたことですね。ただ達郎さんはあまりアレコレ教えてくれる方ではないんです。これはダメっていう、やっちゃいけないことだけはしっかり教えてくれましたけど。