三寒志恩ムック初春の宴(11)シカゴ編:その弐
3月11日、午後4時25分。予定時刻を25分遅れて開場したアラゴン・ボールルームのフロアを、最前列確保を目指すファンが走っている。そしてその5分後にはきっちりと定刻開演。最初にセカンド・ステージに登場したのはRED LETTER REASON。例によって今日も一番手は地元のローカル・バンドである。
ついさきほどまでステージ裏でオロオロしていた頼りなげな若者たちが、今はステージ上で髪の毛を振り乱していたりする。メンバーたちは見るからにとても若そう。なにしろセカンド・ステージの最終バッター、BLESS THE FALLの面々ですら20~23歳。そんな世代のバンドに、「同年代、もしくは少し下」に見られがちなのが日本のバンドの常だったりもするわけだが。ちなみに筆者はアメリカ国内の某空港のカフェでビールを注文した際、店のおばちゃんに「十代じゃないのはわかるけど、一応パスポートを見せて」と言われて差し出し、「あららら、ホントにいい年齢だったのね。あたしと変わらないじゃない」と大笑いされたことがある。
そんな話はともかく、近年のアメリカの若いバンドというのは全般的に、たとえばメンバーが5人いればそのうち2~3人はかならず髪の毛が“横分け”だったり、全員でシンクロした動きをする場面が多かったり、メロディックな曲でもかならずデス声シャウトの部分が一箇所はあったり…と、確かに似たり寄ったりだったりする部分が多い。ま、もちろん個性的なバンドもたくさんいるし、これは80年代にポイズンみたいなバンド、90年代にニルヴァーナみたいなバンドがたくさんいたことと遠からずの現象だともいえる。
が、こうした状況は、それこそ昼間のハード・ロック・カフェでの懇親会で出会ったおばちゃんが言っていたように(前回分原稿参照)、「アメリカの若いバンドはどれもみんな同じような音でウンザリ」という音楽ファンも増殖させているはず。そこで日本のバンドが「大半のアメリカのバンドとは違う何かを持った個性的な存在」と受け止められることは、当然でもあるのかもしれない。
そして実際、ムックのステージはこの夜も、彼らが持つ独特の空気感を色濃く感じさせるものになっていた。正直、それがどれだけシカゴのオーディエンスに受け入れられたのかは、この夜の反応を見ただけでは判断できないし、結果はむしろ、彼らが次にこの街を訪れる機会を得たときに判明することになる。また、僕はこの場で「全米がムックに熱狂!」みたいな、事実を過剰デフォルメした発言をしようとは思わない。事実、写真を見ていただければおわかりのように、拳を振り上げているファンよりは棒立ちの観客のほうがずっと多いのだ。が、仮にそうした大半のオーディエンスのお目当てがA7XやATREYU、BFMVだったとしても、フロアを埋め尽くした群集のほとんどは、ムックの演奏中にその場を立ち去ることがなかった。わずか6曲、たった30分のステージではある。が、少なくともムックがその30分間、楽曲はおろか彼らの名前すら知らないような人々を飽きさせることなく、ずっと目と耳を惹きつけ続けていたことは事実なのである。
そしてもうひとつ付け加えておきたいのは、デトロイト、ロチェスター、シカゴと3箇所で観てきたムックのライヴ・パフォーマンスが、回を重ねるごとに大きく、強く、鋭いものになっていたということ。だから今回の渡米中、僕のなかでのベスト・ライヴはこのシカゴ公演だった。ちなみにこの“シカゴ編”はあと1回で終了することになる。なにしろ僕はこの公演翌日に帰国してしまったのだから。しかしこの『三寒志恩ムック初春の宴』は、どうやらそこでは終わりそうにない。というわけで、とにかく毎日BARKSをチェックすべし!
増田勇一
▲この日のタイム・テーブルはこんな感じ。ヘッドライナーのA7Xが登場するまで、いわゆるインターヴァル(転換待ち)は一切ない。 |
▲演奏開始間際の光景。左側のバルコニーみたいなところで観ているカップルがなんだかおかしい。ちなみにここは関係者エリアなんだけども。 |
▲さすがにアメリカ第三の大都市、シカゴ。ムックのことをあらかじめ知っているファンも、他の2都市に比べて多かったようだ。 |
そんな話はともかく、近年のアメリカの若いバンドというのは全般的に、たとえばメンバーが5人いればそのうち2~3人はかならず髪の毛が“横分け”だったり、全員でシンクロした動きをする場面が多かったり、メロディックな曲でもかならずデス声シャウトの部分が一箇所はあったり…と、確かに似たり寄ったりだったりする部分が多い。ま、もちろん個性的なバンドもたくさんいるし、これは80年代にポイズンみたいなバンド、90年代にニルヴァーナみたいなバンドがたくさんいたことと遠からずの現象だともいえる。
が、こうした状況は、それこそ昼間のハード・ロック・カフェでの懇親会で出会ったおばちゃんが言っていたように(前回分原稿参照)、「アメリカの若いバンドはどれもみんな同じような音でウンザリ」という音楽ファンも増殖させているはず。そこで日本のバンドが「大半のアメリカのバンドとは違う何かを持った個性的な存在」と受け止められることは、当然でもあるのかもしれない。
そして実際、ムックのステージはこの夜も、彼らが持つ独特の空気感を色濃く感じさせるものになっていた。正直、それがどれだけシカゴのオーディエンスに受け入れられたのかは、この夜の反応を見ただけでは判断できないし、結果はむしろ、彼らが次にこの街を訪れる機会を得たときに判明することになる。また、僕はこの場で「全米がムックに熱狂!」みたいな、事実を過剰デフォルメした発言をしようとは思わない。事実、写真を見ていただければおわかりのように、拳を振り上げているファンよりは棒立ちの観客のほうがずっと多いのだ。が、仮にそうした大半のオーディエンスのお目当てがA7XやATREYU、BFMVだったとしても、フロアを埋め尽くした群集のほとんどは、ムックの演奏中にその場を立ち去ることがなかった。わずか6曲、たった30分のステージではある。が、少なくともムックがその30分間、楽曲はおろか彼らの名前すら知らないような人々を飽きさせることなく、ずっと目と耳を惹きつけ続けていたことは事実なのである。
そしてもうひとつ付け加えておきたいのは、デトロイト、ロチェスター、シカゴと3箇所で観てきたムックのライヴ・パフォーマンスが、回を重ねるごとに大きく、強く、鋭いものになっていたということ。だから今回の渡米中、僕のなかでのベスト・ライヴはこのシカゴ公演だった。ちなみにこの“シカゴ編”はあと1回で終了することになる。なにしろ僕はこの公演翌日に帰国してしまったのだから。しかしこの『三寒志恩ムック初春の宴』は、どうやらそこでは終わりそうにない。というわけで、とにかく毎日BARKSをチェックすべし!
増田勇一
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