GRAPEVINE、かつてなかったライヴでのモッシュ発生

ポスト
正直言って、こんなことは想像出来なかった。バインのライヴで「モッシュ」が起こるなんてことは。

メジャーデビュー10周年を飾る通算8枚目の傑作アルバム「From a smalltown」を引っ提げての全国ツアー「GRAPEVINE tour 2007 ママとマスター」。最終日の新木場スタジオコースト公演は、先のアルバムの内容からしてもバンドの進化が随所に垣間見えるだろうことは、ある程度予想していた。そしてGRAPEVINEは、その予想をはるかに超えたパフォーマンスを見せてくれた。

GRAPEVINEのライヴと言えば、客を突き放した上で寄せつけない独自の世界観が、逆にバンドの実力を強調し話題を呼んでいたのだが、この日は、と言うか、きっとこのツアー全体が「それだけ」では無かった。

1曲目に演奏されたのはニューアルバム収録の「ランチェロ'58」。深いディレイの効いたスライドギターのフレーズが印象的な楽曲だが、ニューアルバムの中でもメンバーの自信作の一つと公言しているこの曲の持つ壮大さはオープニングに相応しく、ライヴの期待感やカタルシスを煽ってくれる。10周年のツアーファイナルということが意識されたのか、その後の演奏曲に1stアルバム「退屈の花」からの選曲が多かったことも興味深い。「涙と身体」「君を待つ間」、そしてアンコールでの「遠くの君へ」などは、ファンサービスなのかそれとも自らの10年の成長を確認するためのものであろうか。

圧巻は、いまやバインライヴの定番ともいうべきヘビィナンバー「豚の皿」や、ニューアルバムでもひときわ異彩を放っていた「Juxtaposed」あたりの中盤戦。照明の妖しさ、鮮やかさも相まって、引き込まれそうな世界を作っている。このあたり、先述したようなパフォーマンスはこれまでのバイン通りなのだが、より濃密にその世界に引き込まれるような感覚を覚える。ヴォーカル田中和将のパフォーマンスが、何か変わったと感じることが、受ける印象が変わってきた要因なのだろうか。言うなれば、突き放すというより包み込むと言うか。それが、これまでとは違う形の一体感を産んでいるのかもしれない。

観客の反応も、そんな感覚を自覚しているのかいないのか、いつにも増してすこぶる良い。10年の余裕と自信、そして更なる成長。GRAPEVINEのライヴが凄いとはよく言われるが、こうして実際目の当たりにすると、凄いという言葉でさえ正確に表せていないような気もする。

終盤戦の「FLY」にさしかかるところでは、堪えきれない観客席からなんとモッシュが起こる。こんなことは、バインのライヴであまりお目にかかったことがなかったことだが、彼らにとって(意外にも)初めてバンドセッションで作られたというこの曲がライヴ栄えするのは、考えたら至極当然だ。そんな新たなアプローチの楽曲で、これまでとは違う最高潮の盛り上がりを見せたことに、改めて彼らの「凄さ」を感じずにはいられない。

2度のアンコールを含めて、全30曲、3時間にわたるパフォーマンスは、バイン流のエンターテイメントが詰まった、バインのこれまでと、そしてこれからのバインを予感させるものであった。デビュー10年にして、いまだ「先を」見せてくれるバンドはそうはいない。ますますGRAPEVINEに期待を抱かずにはいられない。

文:ヌーノ川均

「GRAPEVINE、かつてなかったライヴでのモッシュ発生 ~写真編~」はこちら

GRAPEVINE tour 2007「ママとマスター」最終公演@新木場コースト

M1 ランチェロ'58 
M2 スレドニ・ヴァシュター 
M3 シスター 
M4 (ALL the young)Yellow 
M5 放浪フリー
ク M6 南行き 
M7 GRAVEYARD 
M8 光について 
M9 涙と身体 
M10 君を待つ間 
M11 Good bye my world 
M12 ママ 
M13 アナザーワールド 
M14 インダストリアル
M15 豚の皿 
M16 Juxtaposed 
M17 FORGE MASTER
M18 指先 
M19 I must be high 
M20 棘に毒 
M21 COME ON 
M22 Scare 
M23 FLY 
M24 その未来 
M25 smalltown,superhero 

EN1 遠くの君へ 
EN2 ナツノ ヒカリ 
EN3 マダカレークッテナイデショー 
EN4 HEAD 

D/EN1 everyman,everywhere
この記事をポスト

この記事の関連情報