柴田淳、自分の感覚を信じて作り上げた一つの絵本のようなアルバム『月夜の雨』インタヴュー
いえ、なにもないですね。いつもどおり曲を作って…。移籍したからって今までのスタイルを変えるつもりもないし。ただ移籍したことで環境が変わったから、それによって自分を見失わないようには意識しましたね。
私が“この音ってああじゃない?”“ここってこうだよね?”って言ったことに対して、“そうですね”って言ってくれる人を求めましたね。つまり<私のイエスマン>。私が“こうだよね?”って言ってるのは、意見を求めて言ってるんじゃなくて、ただ“いいじゃん”と答えてほしいだけなんです。
そうそう。自信を与えてくれる人。“いや、ここはこうでしょう”とか“こっちにしたら?”とか真剣に言われちゃうと、私の感性・感覚が揺らいじゃう。みんなの顔色を伺っちゃうと何も作れなくなっちゃうんです。
それがなかなかいなくて(笑)。みんな真剣だから意見もあるし。だからアレンジャーさんやプロデューサーさんが“これ、すごくいいじゃん!”って言ってくれた言葉をずっと信じて乗り越えた(笑)。あ、「プロローグ」やヴォーカルソロ(「月夜畑~vocal solo~」)みたいな曲は、誰の後押しもなくて、いいって言ってくれる雰囲気じゃなかったんですね。でも、収録曲決定のときに(みんなの顔見ないように)目をつぶって“コレ入れます…!”と勝手に断言しました(笑)。
単音でしか表現できない曲だなって思ったんです。声も楽器の一つだと思うから、それだけで表現したかったんです。
アルバムとして最終的には一つの作品、絵本のようにしたいと思っているんです。今回は「プロローグ」と「青の時間」のメロディができてた時点で、これでアルバムの1曲目になったらカッコいいなってヴィジョンが出てきたんですね。リスナーもその冒頭があったら“この柴田淳のアルバムはどんな曲が飛び出てくるんだろう”ってワクワクしてくれるだろうなって。ちょっと奇妙で不思議な世界…っていうのかな。ここから他の曲がつながって出てきましたね。
ですよね。月が見えてる晴れた夜に雨……って夜のお天気雨じゃないですか。これ、体験したことあるんですよ。だからちょっと不思議な世界が出た「プロローグ」や「青の時間」を壊さないタイトルはこれしかなかったかなと。
“アルバムで1曲は遊ぶ”っていうテーマでやってるんですけど、この曲が一番つらかったですね。
歌入れしているときはエンジニアと私だけだし、そのエンジニアの方も長い付き合いなので私がどこで照れるとか、どういう癖があるとかわかってくれてるからいいんですけど、それを他のスタッフにも聴かせなきゃいけないのがつらくて……。一番つらいのがトラックダウン(音のバランスを調整する)のときに、そのエンジニアさんもアレンジャーさんも、すっごいシビアに音に耳を傾けてるんですよ~。“もうこんな曲でそんな真剣にならないで~~~!”って感じですよね。
いや、まだ続きますよ! 私のなかのストレス発散なんですね。そろそろ別の登場人物の立場で書いてみようかなと思ってます。
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