<RIJF2006>奥田民生、“ひとり股旅”スタイルでGRASS STAGEに登場

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ELLEGARDENの勢いあるライヴで体力を消耗したオーディエンスたちが、芝生に座って休憩する中、ステージには1脚の椅子とテーブルだけがぽつんと用意された。そこにアコギを1本抱えてスススと登場したのは奥田民生だ。

あまりにさりげなくライヴが始まったため、最初はライヴが始まったことに気づかない人がいたほど。ひたちなかの自然にすっかり溶け込んでしまう民生のゆる~い声とサウンドが、疲れた体を癒してくれるようで、これがまたいい。“ひとり股旅”スタイルでのGRASS STAGEへの登場は、今年が初めて。“今年は一人でやらせてみて欲しい”と自らお願いして、このスタイルを選んだとのこと。ビールを嗜みながら歌う、のんびりとした民生のライヴがスタートした。

まずは「愛のために」でラヴ&ピースな気分を誘う。他のアーティストのライヴとはまったく違う、アコギの音だけが響くライヴは、派手さはないが、民生の伸びやかな歌声がじっくり堪能できる極上のひとときだ。ホッとするような雰囲気に、道行くオーディエンスもまるで心の休息を求めるかのように会場へ入ってくる。気がつけばビールやお茶、そして酒の肴を片手に持ったオーディエンスが、民生の周りを囲むように集まっていた。

夕陽が赤く染まっていく中、民生の顔もビールで(?)赤く染まっていく。ロック・フェスでこれほど穏やかで気の抜けるライヴを観たことがあるだろうか。そして夏にピッタリな「渚にまつわるエトセトラ」を高らかに歌う民生。PUFFYが歌う元気な同曲もいいが、民生のアコースティック・バージョンも趣があっていい。その後は、ユニコーン時代の曲も披露。季節外れの「雪が降る町」も演奏し、熱い日差しに照らされた会場に涼を運んだ。

“いい休憩になってんじゃない?”なんてニコニコしながら言う民生。今回はオーディエンスの休憩時間を作ることに徹底すると最初から決めていたようだ。長時間のフェスではありがたい演出となり、オーディエンスも徐々に元気を回復してきていた。さすが、民生。“次は昭和の名曲”と言って演奏したのは「働く男」。懐かしい選曲に、ユニコーン時代のファンもうれしそうな顔で曲に聴き入る。フェスでは1アーティストの出演時間が限られているため、通常は時間が経つのが早く感じるものだが、このときばかりは、緩やかに過ぎる時間の流れを楽しむことができた。

まるで民生と一緒に火を囲み、お酒や食事を楽しみながら歌を聴いているような気分になったこのライヴ。広い会場でアコギ1本でそれをやってのける彼は、やはりただ者ではない。

写真●TSUKASA/文●菅原麻紀

セットリスト@<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006> GRASS STAGE 2006.8.5
1.愛のために
2.野ばら
3.荒野を行く
4.渚にまつわるエトセトラ
5.MANY
6.The STANDARD
7.雪が降る町
8.CUSTOM
9.働く男
10.さすらい
11.イージュー★ライダー

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006 特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000025727
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