聴き手の心の襞にくっきりと音楽を刻み込む。松千、BARKS初登場インタヴュー!

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――松千にとって、ライヴはどういうものですか? 花田千草:一番は、楽しくありたいと思う場所ではあります。でもたぶん私にとっては、自分の生活の中では他にないぐらい、進んで傷つきに行くし、進んでさらけ出しに行くし。自分の未熟な部分を受け入れるための場所というか。自分を一番見る場所であって、周りの人にも見てもらう場所でもあり。まぁ、楽しかったり楽しくなかったり、キツかったり苦しかったり感動したりっていうのは、その時々でぜんぜん違いますけど。自分の感情を見るっていうか。歌に対してのことだけじゃなくて、いま自分はどういう気持ちで歌を歌っているのか、とか。本当に歌いたくて歌っているのか、とか。自分の内面に疑問を持ちながら歌っている。他の生活ではそういうことには目を向けなくても生活できるけど、ライヴになったらイヤでも感じるんですよ。 松本健太:花田が言ったみたいに、自分の内面と向き合える時間でもあるし。最近は、ライヴがないとバランスがとれないなぁと感じ始めていたり。本当に音楽が好きなんで、悪くしたいとは思わないし。次のライヴで得るものがあるように、毎回必ず課題を作ってそれを繰り返して、前に進んでるっていう実感がありますね。 ――結成のきっかけは、コンテストに出るためだったんですよね? 千草:そうですね。佐世保の楽器屋さんの店員さんに言われて“思い出作りにちょっとやってみようか”みたいな感じで、スタジオ予選に出ようかっていうことで。だから、松千を続けるとも思ってなかったし。でもそれが、スタジオ予選だけのつもりが全国大会まで行くことになって、“これでいいんだろうか?”とか、ほかの出場バンドに申し訳ないと思ったりもして。“二人でやろう!”とか“ライヴやろう!”とか、すごくすごく考えて作り上げていったものだと自分たちではまったく思えなくて、自分たちは場違いなんじゃないかって考える時期があったんですけど。それが、ライヴをしていて、たくさんのお客さんや審査員の人に見てもらって、二人が歌を歌ったときに感じた空気が変わる瞬間というか、自分たちがただ歌を伝えたいと思う演奏をしているときに、強く感じて。 ――ライヴは緊張しますか? 千草:何に対してかはその頃とはちょっと変わったかもしれないですけど、緊張はしますね。良い緊張ができるときと、悪い緊張をしてるときがあるので。緊張するよりは、なるべく自分のテンションを絶好調に上げることに集中したいです。 松本:手が震えるくらい緊張するときもあるので、それがバレないようにするのが大変です(笑)。それでも途中からその緊張がいい具合に変わって、1曲1曲に集中できるようになることもあって。そういうことが毎回できればいいんですけど。 ――良い緊張と悪い緊張をしているときの違いは何でしょう? 千草:悪い緊張のときは、不安がすごく多いとき。自分の能力に関しての不安だったり、お客さんがどれだけ聴いてくれるんだろう?とか。マイナスのことが強いときはダメですね。良い緊張のときは、何も考えられないんです、不安なことも。最近はあんまり緊張しなくなったけど…歌い出すまでかな。 松本:不安な気持ちが先にあると、すごく悪循環になりますよね。余計なことばっかり考えたり。そうすると、曲の伝えたいことも伝えられなくて。1曲1曲がすごく長く感じたり。間違えないようにっていうことにばっかり頭がいって、何も伝えられないし、楽しくないし。 ――テンションをあげていく方法はあります? 千草:SEが流れて、ステージに出た瞬間が、今日の中で一番テンションが上がってるだろうとずっと思い込ませる。あとは、ライヴ前にわがままを言う。寝たり喋ったりダラダラわがままを言って、それもすべて“今日のライヴのため”と思う。自己暗示? 洗濯をするのも、自分の気持ちをライヴに持っていくためには今は洗濯をしなくては、みたいな。散歩に行くのもライヴのため、とか。だから、それを誰かに止められたら“あぁぁぁぁ”ってなっちゃうんで。もっと短時間でそういう気持ちになれるようになろうと思ってるんですけど(笑)。 松本:クラシックのCDを聴いたり、無理やり買い物をしたり、リラックスしようと思ってダラダラしたり、いろいろ試したんですけど、結局分からなくて。いいライヴをするためにできることをライヴの前までにやって、そうすれば、ひとつのライヴに向けて自分がこういうことをしてきたっていう自信ができるし、そうやって不安要素を消していくっていうことかなと。あとは深呼吸ぐらいですね。 ――今までのお話を聞いてると、デビューがライヴ盤だったことがすごく納得できますね。 千草:ライヴがいいバンドだと言われたいし、ライヴでどこまでかっこいいものを見せられるかっていう話をしていたら、メジャー・デビューはライヴ盤で、ということになって。スタッフの人は“いつもの松千のライヴをやればいいんだよ”って言ってくれたし。本当に感謝してますね。それで、そういうところに興味を持って聴いてくれた人たちが、実際にライヴを見て“少し大人になったね”とか、一瞬一瞬の想いを感じてくれたらなと。 ――4月26日には2ndシングル「涙色の夜」がリリースされますが、この曲は初期の楽曲だそうですね。 千草:そうなんです。松千を組む前から私が歌っていた曲で。さっき話したコンテストにエントリーしたときの曲でもあります。 ――その曲を、今この時期に出すに至った理由は? 千草:私たちにとってもこの歌はあまりにも長くやりすぎていて、ある時期、この曲の良さを自分たち自身が見失っていたことがあって。 松本:曲が持ってるエネルギーが強かったと思うんですよ。で、松千のイメージが「涙色の夜」っていう曲だけになってしまって。それで、二人の中では“これだけじゃない”っていう気持ちが強くなって。曲に反発するっていうか、聴いてくれる人に対してっていうか。 千草:周りの人たちに対してだったと思う。えらく過剰に考えすぎだったのかもしれないですけどね。 松本:それで「ショー」(1stシングル)みたいなテンポの速い曲を作ったり。それから松千がやってる音楽は、アコースティック・ロックだっていうのが自分たちででき始めて。その間にも「涙色の夜」はぼちぼちやってたんですけど、どうしても気持ちの上で曲に負けてしまってるところもあったと思うんですよ。それが5年かけて、やっと自分たちの音楽が少しずつ形になってきて、一番最初の曲を出すことで次に進めるっていうか。 千草:私たちに、すごくいろんなことを教えてくれる曲ですね。私よりお姉さんに思える(笑)。一人でも多くの人が、そういう歌と松千を受け入れてくれたらいいなと思います。 取材・文●望木 綾子

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