| ──今年は、バンドの過去20年間に目を向ける企画が目白押しでしたね。
柴田直人(以下、柴田):20周年に関するミーティングは去年からやってたんですが、そこで出たアイデアを全部やってしまおうということになったんです。たくさんの方が長い間支持してくれているから、1年かけてみんなで楽しもうという発想です。7月のツアーにしても、ゲストを呼んで川崎で一回だけライヴっていうのは普通でつまらない。どうせなら全員呼んでツアーしちゃおうと。とくに過去とか未来を意識したわけではなくて、とにかく面白そうなことは全部やろうと思っただけ。ただこんなに消耗するとは思わなかった(笑)。
──ライヴ<プロローグ>シリーズで、現メンバーで初期の曲を演奏してみてどうでしたか?
柴田:以前の曲については僕はだいたい覚えてたけど、MCなしで全曲だったからちょっと大変だった。でも解散直前に参加した清水と、再結成から参加した本間君(本間大嗣:ds)にとってはかなりストレスだったと思うね。実際演ってみると、現メンバーは確かにうまい。よく言えば非常に進化してる。でも悪く言えば、今の僕たちは理論とかがたくさん身についているぶん、きちんとしちゃうんです。ハチャメチャさがなくなるというか。そういう違いが面白かったですね。
──清水さんは過去の曲にどうアプローチしましたか?
清水昭男(以下、清水):僕の場合は92年に参加したときから、完成されたもの、崩せないものがある中で、自分なりにどう弾くかということをやってきたんです。だから今回とくに苦労はなかった。ただ今回はこういう機会なので、むしろ完コピしてやろうと思ってそのまま再現したところもありました。初めて演る曲が多かったので大変だったけど、新鮮で楽しめました。
──7月のアニバーサリーツアーは日程も厳しくて大変だったのでは?
清水:いちばん大変だったのは柴田さんですよ。毎回3時間近く出っぱなしですから。僕らは各自の出番だけなんで、普段よりは短いんです。でもコンサートって、その間ずっと緊張しっぱなしになる。それにライヴ中に休憩があるのは不自然だし、その間やることもない。僕は過去のメンバーのプレイを見たかったんで関係者席で見たりしてましたが、結局精神的にはかなり疲れました。あと人数が多くて集中できなかったな。
柴田:体力的には問題ないんですけど、通常とは気持ちをピークにもっていくやり方が違いますから、相当疲れますね。ただ僕の場合はライヴが終わってからのほうが大変だった。丸々3ヶ月くらいDVD制作にかかってましたから、これが予想以上に疲れた。
──昔のメンバーと久々に一緒にやってみてどうでした?
柴田:基本的にはまったく変わってない。音とかリズム感とかすべて。10数年やそこらでは変わるもんじゃないんだなぁと思いました。
──第二部はもちろん楽しかったんですが、現メンバーの第一部もすごく気合が入ってましたね。
柴田:まぁイベントですからお祭りでもいいんですけど、何年か前に再結成して必死にやってきた今のバンドがあってここまで来れたわけで、そっちがしっかりしていないと本末転倒になっちゃう。別に第一部を目立たせようとは思わないけど、まずは今のオレたちを見てもらいたい、そしてその上で第二部を楽しんでもらえればと思ってた。実際現メンバーにも、これはオレたちのライブであって、そこにゲストがたまたま来て第二部をやるというつもりでやってくれ、という話はしてました。お客さんがどこに期待してくれてるのかはわからないけど、見ていてそう感じてくれればいいなと。
──それはすごく伝わってたと思いますよ。
柴田:であればよかったです。ただ僕の場合は映像を見ると、第一部で行き過ぎちゃって。第二部でぱったり動かなくなってる(笑)
──DVDに収録されている7月23日は、直前に地震があって大変でしたね。
柴田:電車が全部止まっちゃって来れなかった方もたくさんいただろうし、もう本当に残念。もう一度やり直したいくらい。でもなんとかして来てくれたお客さんもいたので、やるしかないと。地震の直後にミーティングして、とりあえず1時間遅らせることにしたんですが、ライヴ前に予定外の1時間が増えるっていうのはけっこう大変で。リハが終わってから開演までいつも決まった時間でピークにもっていくようになってるので、増えたのはいわばネガティブな1時間。これが困るんです。
清水:ネガティブな時間なのでテンションも下がるし指も冷えるし。でも隣の楽屋はうるさかったですけどね(笑)。
柴田:隣はうるさすぎ(笑)。それまでの経験から楽屋を一緒にすると集中できないんで、川崎では現メンバーと過去のメンバーで楽屋を別にしたんです。でも隣ってのが甘かった。階を別にしないとダメだ(笑)。
──個性的なメンバーをとりまとめてこれたのは、やはり柴田さんのリーダーシップ?
柴田:こいつらとやるのは大変だなぁなんて思いながらやってきたつもりだったんですが、今思えば大変なのはメンバーのほうだったのかなと。僕はいいと思ったらすぐやるけど、イヤだと思ったことは決まっていることでもやらない。わがままでいろんな人を振り回してきた。別に僕のリーダーシップと言うよりは、わけのわからないパワーとかそういうことじゃないかな。
──柴田さんは、DVDの制作にもかなり携わったんですね。
柴田:これがもう大変でした。どの曲もカットできないし、誰がどのくらい映らないと悪いとか考えるし。音も問題でしたね。全体の音量からバランスからまったく違うんです。オマケのサービス映像も70分くらいあるけど、撮ったのはその20倍くらいあって、それも全部見なきゃいけない。でも危なすぎて使えないところばっかり。撮ってるっていうのにみんな危ないことしたり言ったりしてる(笑)。裸で走り回るヤツはいるし、危ない発言を繰り返すヤツはいるし。でもまぁ面白かったですよ。やってよかったとは思います。
──DVDの中でお気に入りの映像はどの部分ですか?
清水:やっぱりサービス映像ですかねぇ。内容はここでは言えないけど(笑)。
柴田:ああ最後のヤツ?
──最後に、次のアルバムの予定は?
柴田:僕らは曲の上がりが遅いんで、すでに曲作りは始めてます。次作はロック度、メタル度はかなり上がると思いますよ。それと触れ幅も広げたいです。たとえばアコギ1本で歌うような曲があってもおかしくないし、同時にANTHEM史上最速の曲が入ってもいいと思ってる。自分たちがいいと思える楽曲であれば、曲のパターンや方向を選ぶつもりはない。あまりしばられないで曲を作りたいと思ってます。2月くらいにはレコーディングに入るはずです。。
取材・文●田澤 仁 |
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