シングル「supernova/カルマ」インタビュー
──「カルマ」は『テイルズ・オブ・ジ・アビス』の主題歌ですが、これは作る前に台本を読んだんですか?
藤原:僕等が読ませてもらたのはB5の紙2、3枚なんです。それで、最初の感想は“良くわかんない”だった(笑)。僕等がゲームの制作者側に確認したかったのは、ストーリーうんぬんとか、どういうベクトルのゲームを作りたいとかそういうことではないんです。まず一番最初に何度も何度もお互いが行なったのは、意思を伝えること、感じることだったんですよね。
──何に対しての意思ですか?
藤原:一番心配だったのは、結局は話題先行っていうか、そこに重きがある話なのかっていうこと。単なるタイアップがやりたいのか、それとも僕等の音楽を聴いたうえで、一緒にものを作ろうよっていう感じなのかということです。もし前者だったら、それは出来ないことなので。あとは、そのゲームをどのくらいの情熱で作っているのかっていうのも、絶対に聞かなきゃいけないことだったし。それに僕等もやるからには、僕等が作った曲がゲームの邪魔をしたくないし、おこがましいことを言わせてもらえば、ゲームが僕等の曲を邪魔してほしくもない。ゲームが伝わる時に曲が手助けできればいいと思うし、曲が伝わる時にゲームを利用できたらいいなって思うし。僕等は曲には命があると思っていて、当然あちらはゲームには命があると思っている。どちらにとっても有機的に働くものを作るっていうことじゃないと、やっていけないんじゃないかっていうのが僕等の中にあって。それで、その確認に対してすごく情熱的な返答が得られて、そこで始まったプロジェクトなんですよね。それで、あらすじ書きを読んでみたんですけど、やっぱりあらすじではどうしても分からなくて。
──では、どういうアプローチをしたんですか?
藤原:僕には昔からずっと書きたいテーマがあって、それが「カルマ」だったんですよ。それに、俺が書きたいものを書いちゃえば間違いないような気がするっていうのがあったんです。最初の話し合いの中で、確認しなきゃいけなかったのが、例えば曲があがった時に、ここにこういう詩を入れてくれとか、この詩はゲームの中には関係ない部分だから変えてくれとか、僕等が曲のカラーをゲームにすり合わせていかなきゃいけないのかっていうところ。もしそれがあるとしたら、どうしょうもない話なんで。それに、僕等がゲームに歩み寄ったり、作品をあちらの意向どおりに、発注書どおりに曲を書くっていうのが、すごく失礼だと思ったんですよ。向こうに対して。何で僕等に曲を依頼してくれたかっていうと、僕等の今までの活動を見てきて興味を持ってくれたからで。僕等の今までを振り返ってみたら、僕等のやりたいことをずっと貫いてやっていて、そのスタイルを見込んで依頼してくれたんであれば、そのスタイルを貫かなきゃいけないじゃないですか。だから、俺がやりたいようにやったものが間違いないって言ってもらえなければ、これはぜんぜん応えようがないことだし、書いちゃってから言われても遅いことですからね。だから最初に情熱を確認したっていうのはそこなんですよね。俺等はやりたい音を出すよって。
──その確認が取れてから、曲自体はどのくらいで書けたんですか?
藤原:マッハで書けました。一週間もしないうちに上がって、最初はシーケンサーで仮歌入れて、“それで大丈夫ですか?”って聞いたら“もう、これしかない”ぐらいのことを言ってくれて、4人でイエーイ!って。
──他のメンバーにも聞いてみたいと思うのですが、「カルマ」は慣れ親しんだエイトビートの楽曲ですけれど「カルマ」ならではの新しさっていうのは何処に感じましたか?
直井:初めて聴いた時“あ、俺のおハコだ”と思いました。でもやっぱり、いざプレイしてみるとね。俺の場合は気にするのはドラム。それは常に生きてるもので、機械のようにはいかない。やっぱりそういう意識が前とは全然違いますね。前だったら、エモーションで通しちゃったと思うんです。すごい熱い気持ちで。その気持ちは嘘ではないですし、未だにそういう風に一発録りするバンドって沢山いますしね。それでしか生まれないグルーヴっていうのもあるんですけど。でも、この曲はぜんぜんそれを求めていないんですよ。本当にめちゃくちゃ熱いんですけど、炎が全く見えないで氷のように立っているような。だから、より機械的にというか。機械になるっていうのは感情を捨てるということじゃなくて、曲が求めているのが機械ならば、もうそれに形を変えようという情熱ですね。綺麗にハメていくという。やっぱり俺がこの曲で一番気に入っているのは、ビー玉を弾き出すニュアンスのフレーズですね。藤くんにイメージを聞いた時に、なんか上からビー玉を落として下でポンとはじけるような感じだって。ちょうどベースの弦に似てるなって思ったんです。落ちていってポンと弾けるっていう。
──そのイメージをサウンド化しようと?
直井:というか、そうしてくれって言ってるんですよね、詩も曲も。こういうふうにお前はやるんだよって。普通にグルーヴしても違うんだよって。それで、なんかできないかって思って。
──増川さんはどうですか? 「カルマ」の今までの違ったところというのは何ですか?
増川:特に違いというのはいつも思わないんですけど、もちろんその曲としてすごく素晴らしいという感動はありますけど。でも最初に聴いて、すごくビックリしたっていうのはありましたね。その段階ではシーケンスだったんですけど、さっき言っていたバイオリンっぽいっていう音も、ほとんど全部入っていて。
直井:コイツ(増川)、今こんなことカッコつけて言ってますけど、練習の時ダウン・ストロークであのリズムを弾くのに、ブッサイクな顔して弾いてましたからね(笑)。こいつ、けっこうイケメンでしょ? でもあの時は超ブッサイクだったよ。
──升さんはいかがですか?
升:昔も速い8ビートの曲をやっているんですけど、当時と同じような解釈ではやっていないんですよ。それで「カルマ」ならではと言うと、俺の場合は全編に渡る8ビートと、瞬間的に繰り出される16分の妙ですね。ギターとかではけっこう出てくるけど、ドラムではそういう16分はほとんど出てこないので、いかに8分で表現するかっていうのと、それがどこで出てくるかっていう。個人的なテーマはそこでしたね。音に出さない音と、それが一瞬出てきてしまう時のポイントというところで。
取材・文●佐伯 明
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