<SUMMER SONIC 2005>ザ・ラーズ、時空を超えて残っていく“うた”

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頭がおかしくなったとか、とても音楽なんて出来る状態じゃないとか。どこまで本当かわからないネガティヴな噂ばかりが流れていたヴォーカルのリー・メイバース。だがしかし、見事に帰還してくれました、リバプール第3世代のヒーロー、ラーズ。

オリジナル・アルバムはたった1枚。その後、ブリット・ポップ時代にベースのジョン・パワーが新バンド=キャストのリーダーとして活躍したことはまだ記憶に残っている人も多いだろうが、ラーズ自体は現在の若いリスナーにとっては半ば伝説と化してしまっている。名曲「ゼア・シー・ゴーズ」が海を超え、世代を超えて親しまれているこの奇跡を前に、復活した4人はどう応えてくれるのだろう。初来日公演を見ている年季の入ったファンの一人としては、賛否両論を呼んだ(私は盛り上がったクチだったが)当時の公演の感動と比べてみたい、なんて気持ちもないわではなかった。

4人、ステージに登場。人の波が一気に前へ前へと押し寄せていく。オープニングは「Son Of A Gun」。始まった途端に換気の声がいっせいに巻き起こる。無駄のないシンプルでラフな演奏。人懐こくビター・スウィートなリフとメロディ。間違いない。間違いなくラーズだ。自然と私自身も前へ前へと体が動く。リー・メイバースは、当然多少は老けた印象だが、思っていたよりも声は出ているし、客に対して怯えている様子もない。15年以上のブランクがあるとは思えないくらい、旋律を辿るそのヴォーカルは軽やかだ。

おそらく、会場に集まった約半数以上は当時のラーズをリアルタイムで体験していない若い世代だろう。だが、みんなたった1枚のオリジナル・アルバムを良く聴いている。ほとんどの曲にイントロ一発で反応し、サビ部分では一緒にハモる。リーの復帰、4人の復活を心から祝しているかのように、1曲1曲を丁寧にこなしていく彼らを暖かく応援するオーディエンスの笑顔は感動的だ。

そして、7曲目に早くも「ゼア・シー・ゴーズ」。盛り上がりはすでに最高潮。最初から最後まで場内は大合唱となる。それにしてもシンプルなヴァースの繰返しなのに、なぜこの曲は何度聴いてもこれほどまでに心を打ってくるのだろう。ビート・バンドのお手本のような曲なのに、なぜこれほどまでにいつまでも新鮮な感激をもたらしてくれるのだろう。「Feelin'」「Timeless Melody」と続く最強の流れに打ちのめされながら、誰もがそんな思いを新たにしたことだろうと思う。このバンドの持つポテンシャルの高さは、ポップ・ミュージックの持つマジック――一瞬のリフとメロディの輝きを永遠に封じ込めることができること――をいまだに持ち続けていることなのかもしれない、と。

演奏自体は決してカッチリとしたものではない。変わらぬスタンディング・ドラムと、ギターっぽいフレーズを重ねるベースに支えられたリズムは薄いし、そのサイケがかったギターの音色などにはリバプールの後輩バンド、コーラルへの影響も少なからず散見できるものの、大型フェスのトリをつとめるバンどとしては異例のスカスカ・サウンドだっただろうと思う。思っていたよりも頼りなかったのか、早々に会場を後にしたような人も目立ったし、「ゼア・シー・ゴーズ」を演奏し終わった時点で、マリン・スタジアムでのオアシスを見に走った人もいたようだが、少なくとも最後まであの場を離れなかった人たちは、時空を超えて残っていく“うた”に心を預けることの素晴らしさを知っていたに違いない。

東京公演は残念ながらアンコールなし。大阪では「ゼア・シー・ゴーズ」を二度やったとか、オアシスのメンバーも客席で盛り上がった単独公演では「マイ・ジェネレーション」をカヴァーしたとか、また数々の伝説を残してくれたラーズ。来年以降、新録アルバムをひっさげて、きっとまた戻ってきてくれることを信じている。

取材・文●岡村詩野
Photo●SUMMER SONIC / TETSURO SATO

THE LA'S
2005/8/14 SONIC STAGE

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
SUMMER SONIC 2005特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010617
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