その日、bonobosという名の宇宙船に乗って、旅をした! 7/16ライブレポ

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ニューアルバム『electlyric』を携えての全国ワンマンツアーを行なったbonobos。ツアー終盤、東京の恵比寿リキッドルームでは、ずばりハイライトから言ってしまうが、「THANK YOU FOR THE MUSIC」だった! 実はこの曲が本編のラストなのではあるが、このあと怒涛のアンコール攻めになるから…。

まずは前回、掲載されている彼らのインタヴュー(https://www.barks.jp/feature/?id=1000008455)を思い出してもらいたいが、蔡 忠浩(Vo&G)は、「CDにはCDのアレンジ、ライヴにはライヴならではのもの。何より、辻くん(辻 凡人/Dr)が入ったことで演奏することに関しては、まったく心配していない」と、言っていた。まさにこの日のライヴはその通りに“リズムがゆらゆらと漂っている不思議な浮遊感”と、5人全員の“今、ここでこの音を鳴らす喜び”をこの曲が一手に引き受けていた。

その「THANK YOU FOR THE MUSIC」が演奏されるとライトは会場全体を照らし、ゆかた姿のカップル、女の子同士も見え、彼女たちがメンバーにつられて大きく手をたたく。このとびっきり幸せな光景は本当に美しいものだった。何度も聴いたCDより、何度も観たプロモーション・ビデオ(https://www.barks.jp/watch/?id=1000004156)よりはるかにダイナミックで力強く、温かい。

もちろんライヴ全編でも、蔡くんはステージの中央に立って、心を込めて歌う。コジロー(佐々木康之)は暴れながらギターを弾く。松井くん(松井 泉)はパーカッションの前に立ち、笑顔で走りながら、リズムを叩く。夏ちゃん(森本夏子)はもくもくとベースに向かってはいるが、ときおり見せるキュートな笑顔がとても印象的だ。そして、辻くんはマイクがあるわけでもないのに大声で歌いながら、汗を飛ばしながらドラムを叩く。みんなとにかく“笑顔”だ。この結束から生まれる自然な笑顔……なんて素晴らしいものなんだろう。

そしてアンコールは、蔡くんの「ありがとう、もうちょっと歌いたかった」の一言で、「もうじき冬が来る」「愛してるぜ」「あの言葉、あの光」を続けて演奏。この公演が彼らのホームタウン=大阪を残してラストということもあって、力も入っているだろうし、ライヴをこなしてきた強みもあるだろう。ここ一番でまた抜群のパフォーマンスを見せた。特に「あの言葉、あの光」では、一瞬会場が静まりかえるも、蔡の歌に全員が惹きつけられ歌詞のストーリーと共に、会場が温まっていく。この歌は、本当に魔法のような歌だ。会場にいるファンすべてが、まっすぐと歌に聴き惚れている。ステージから会場へといった一方的なものでなく、このとき、恵比寿リキッドルームは丸くひとつになった。まるで星がキラキラと輝く宇宙の中に居るような体験。そしてダブル・アンコールは「mighty shine mighty rhythm」。最後の最後は、bonobosらしく、弾けて終わった。

素晴らしいライヴだった。スペース・シャトルに乗るクルーの一人が、「宇宙に持っていくCDは?」という問いに「三つのBを持っていきます。それはバッハ、ベートーベン、ビートルズです」という言葉が世界中を駆け巡ったが、ぜひもうひとつのBを…!なんて思いながら、恵比寿リキッドルームをあとにした。

文●山田正樹
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