【インタビュー】HYDE、映像作品『HYDE [INSIDE] LIVE 2024 -EXTRA-』と<LuckyFes>出演を語る「僕の理想的なライヴにまたひとつ近付いた」

2025.07.03 12:00

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HYDEが7月2日、ライヴ映像作品『LIVE DVD & Blu-ray「HYDE [INSIDE] LIVE 2024 -EXTRA-」』をリリースする。『ANTI』以来約5年ぶりのアルバム『HYDE [INSIDE]』はメタルコアを標榜したラウドな作品で、バラード「LAST SONG」は暴れるというベクトルではないものの、聴く者、観る者の心を深くえぐるという意味では最も狂暴かもしれず、結果的に全曲が激しく感情を揺さぶる。それをライヴに移し変えた表現も、必然的に極めてエモーショナルなものとなった。

ライヴ映像作品には、2024年10月27日に開催された幕張メッセ公演の模様を収録。2025年6月21日にスタートした<HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR>とは、『HYDE [INSIDE]』を引っ提げている点では地続きだが、表現に向かうHYDEのマインドには少し変化があるようだ。

インタビューでは、8月11日(月/祝)に初出演するLuckyFM×BARKS共催<LuckyFes>や、8月20日にリリースするソロとしては初のアナログ盤『HYDE [INSIDE]』についても尋ねた。BARKSとしては2025年初のインタビュー取材となるため、1月のL’Arc-en-Cielの東京ドーム公演を含め、まずは近況から網羅的に語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■ライヴが映像化されるのは僕自身楽しみ
■これでもか、これでもか!みたいな展開

──まず近況から伺いたいと思います。直近では6月1日、GLAYの30周年を祝した東京ドーム公演にサプライズ出演されました。凄まじい大歓声が起きましたね。

HYDE:出番まで客席からライヴを観させてもらったんですけど、“本当に奇跡的なバンドだな”と思いました。最初は、“この祝いの席に僕が出て大丈夫なの?”とちょっと思っていたんですよ。まぁ、今でもそれは思ってますけどね。

──GLAYにとってL’Arc-en-Cielは時代を共に駆け抜けて来た戦友。最高のお祝いだったはずです。

HYDE:GLAYのメンバーとは、たまに顔は合わせているし、演奏する機会も案外あって。DAIGOの結婚式でも「HONEY」を一緒にやったんですけど、“こんなバンドってGLAYしかいないな”って思うんですよね。今回のように正式にGLAYのライヴに出演したのは初めてですけど、普段一緒にお酒を飲んだりご飯食べに行ったりもするし、やっぱり彼らの人柄ですよね。リハーサルからアットホームな感じで参加することができましたね。

▲<GLAY 30th Anniversary「GLAY EXPO 2024-2025 GRAND FINALE」>2025年6月1日@東京ドーム

──今年1月のL’Arc-en-Cielの東京ドーム公演<L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde 誕生祭->も少し振り返りたいのですが、hydeさんプロデュースという初の試みでした。

HYDE :ステージプロデュースという意味ではこれまでもやってきていたことだけど、完全にあそこまで我がままにやったのは初めてかもしれないですね。僕があえてそれをすることによって、他のメンバーも、次回から好きなことをやりやすいかな?とも思ったので、ちょっと振り切って。もう本当に忖度無しで自分がやりたい曲とか、今のラルクがやってカッコいい曲とか、その辺をコンセプトにしてつくっていきました。それに自分の誕生日という要素をプラスした、という感じです。

──ダークな曲が多く、深く浸れるようなセットリストでした。

HYDE:うん、自分的には“音楽に集中したライヴをしたいな”と思って。ソロのライヴでもそうなんですけど、僕は根がエンターテイナーなので、歌よりも別のことを常に考えがちなので、自分的にも入り込みやすい、“これだったら歌に集中したまま最後まで行けるかな”という曲をわざと選んで、それをメインにして。あとは、誕生日の演出でいかにそこからエンターテインメントとしてパッ!と上げていけるか、という感じで全体を考えていきました。

──生だけでなく死も同時にテーマになっているライヴだったと思うのですが、その点は意識されていたのでしょうか?

HYDE :そうですね。“自分の人生の中で、この曲は外せないな”という曲を選んでいくと、どうしてもそうなりました。僕は死について歌っている曲がけっこう多いので。

▲<L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭->1⽉18日-19⽇@東京ドーム

──忘れ難いライヴになりました。7月2日にリリースされる『LIVE DVD & Blu-ray 「HYDE [INSIDE] LIVE 2024 -EXTRA-」』には、2024年10月27日の幕張メッセ公演を収録。臨場感のあるダイナミックな映像でしたが、撮影や編集はご自身のディレクションでしょうか?

HYDE:いや、特にはないですね。基本的に演出というか決め事が多かったライヴなので、そういうところをちゃんと撮っておくこととか、カッコいいファンの盛り上がりを撮って欲しい、というリクエストはもちろんしましたけど。基本的にはいつも言ってることで、あとは編集の段階で“ここは入れたい”という部分を加えていったぐらいですかね。

──作品化に当たって映像をご覧になったときのライヴそのものの印象はいかがでしたか? 客観的に“こういうライヴだったな”と感じたり、“こういう表現が実現できたな”という手応えがあったりしましたか?

HYDE :ニューアルバムを引っ提げてのツアーは久しぶりだったんですよね。『HYDE [INSIDE]』というアルバム自体、「LAST SONG」以外は結構はっちゃけソングばかりなんですけど。もともとライヴを想定してアルバムをつくったので、そのアルバムの世界観のライヴが映像化されるのは、僕自身も楽しみでした。それを客観的に観て、僕の理想的なライヴにまた一つ近付いたな、という気持ちでしたね。“これでもか、これでもか!”みたいな展開をしてみたかったので。

──モッシュやダイヴも起きたり、会場全体を巻き込んだライヴになっていました。フロアのあの状況も、理想に近付いたという手応えですか?

HYDE:そうですね。やっぱりたくさんフェスに出るようになって、ファンの子たちも含め、お互いにいろいろと経験したからこそ成り立ったライヴだったんじゃないかな、と思います。フェスだともっと激しいバンドがいっぱいいるから、ファンの子たちもそういうのを観て“あ、こうやって盛り上がったらいいんだ”とか、勉強した部分はあると思います。

──「LAST SONG」では血だらけになる演出が壮絶で、紙吹雪が降ってきて赤一色の世界に。圧倒的な表現に息を呑みましたが、実現に至るにはどんなプロセスがあったのでしょうか?

HYDE:もともとは紙吹雪だけのイメージだったんです。そもそも“あそこでこうなってほしい”というのを思い浮かべながら「LAST SONG」を作曲していたので。それがなかなか上手くまとまらなくて、曲づくりにはすごく時間が掛かったんですけど。それが、楽曲が完成してみると、なんか足したくなっちゃって。

──血を流す演出は、後から決まったんですね?

HYDE:はい、血が後なんですよ。プラスαでやった、という感じですかね。もともと血の演出はコロナ禍の時に配信ライヴでやっていたんですけど、それと紙吹雪をミックスして、さらにもっと強烈にして。ファンの子は「やめて!」と言っていましたけどね(笑)。血まみれに見えるから、やっぱり引く人は引くじゃないですか。「いや、あれは血じゃないよ。ケチャップだよ」と言っているんですけど(笑)。

──迫真の表現だからこそ、観ていてリアルな痛みを感じるんでしょうね。HYDEさんのことが心配になるというか。

HYDE:それくらいやったほうが僕としても感情が入りやすいんです。なんだかんだ言って、やっぱり僕も慣れてくるから。演奏も何でもそうだけど、新曲って最初の頃は楽しいけど、何十回もやっているうちに、どうしても“こなしている”みたいな感覚になってくる。でも、そういう演出があるとまた楽しみになるし、新鮮なほうがやっぱり感情が入りやすいこともあるんですよ。今のところはね。

──なるほど。では、演じているというよりは、新鮮さを保つことで自然に湧いてくる感情を大事にするという感じなのですね?

HYDE:そうそう。だから、バンドメンバーも「今日の「LAST SONG」すごくグッと来た」と言ってくれたりとか、ツアーではそういうことがよくありました。それはもう、やろうと思ってできることじゃないですよね。自然な流れでできる。すごく虐げられた自分になれる、というかね。その前の「MIDNIGHT CELEBRATION II」でどこまで自分が傷付くか。それによって「LAST SONG」でやっと出せる、という感情なんです。

──ではセットリストを組む段階で、「LAST SONG」で感情を出すために逆算して、1曲前に「MIDNIGHT CELEBRATION II」を入れる、という?

HYDE:置きどころが“もうそこしかないな”となって、結果的にそうなりましたね。

──「LAST SONG」のラスト、緞帳が降りてくる演出も後から決まったんですか?

HYDE:いや、それは曲をつくっている時からそうしたいと思っていました。“緞帳が下りないと終われないよな~”って。

──一度あそこで世界を閉じる必要があったと。

HYDE:でもね、そこで全てが終わるかどうかは、ちょっと自分でも分かってなかったんですよ。ただ、“さすがにこれで終わったら、みんながかわいそうかな?”と思って(笑)。それで、一番最後ではなく本編の最後にしたんです。それで、何事もなかったかのように、インターバルを挟んで「PANDORA」が始まるというね。

──アンコールで救いを感じました。「無事で良かった」って(笑)。「PANDORA」での再登場の仕方もエンターテインメント性抜群でしたね。

HYDE:その後のキャラクターは、HYDEと言ってもHYDEじゃないかもしれない、という考え方もありますよね。

──なるほど、興味深いです。生まれ変わりですかね? 次の世界に行った、みたいな…?

HYDE:分からないですけど、まあそんな感じかな? もう一人のHYDEっていう。

──緞帳が床に降りる瞬間をアップで撮ったカットが入っていて、映像作品としてのドラマティックさが増しているとも感じました。

HYDE:僕が細かく指示したわけではなく、監督がうまく編集してくれたんですけど、ちょっとシネマティックではありますよね。

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