【インタビュー】カロリーもメロディもギガ盛り、ライブで煮詰めたデラックス×デラックス『超重ギガ』

2025年6月11日に発売されたデラックス×デラックスのニュー・アルバムがいい。全14曲、その重量感が素晴らしい。そして各楽曲のクオリティ…そのカロリーの高さがいい。アレンジには濃厚な出汁が効いており、パンチのある味付けが何より満足感を満たしてくれる。
そしてなによりそのタイトルが秀逸だ。『超重ギガ』である。名前負けしかねないインパクトマシマシなタイトルだが、名が体を表すとはまさにこのことで、脚色も誇張もない、まさにメガ盛りを超える充実の作品の誕生となった。
爆裂な全国ツアーを回り続け、その合間に楽曲を大量に作りながらも、全国各地津々浦々の美味しいものを平らげていくデラックス×デラックスのパワーの源は何か。そして疑う余地のない最高品質のアルバムを作り出したバンドコンディションの良さはどこからやってきたのか。デラデラのメインコンポーザーであるサクラ(Dr)とフロントマンのアサガオ(Vo)に話を聞いた。

──なにはともあれ『超重ギガ』というタイトルが最高ですね。
アサガオ:ありがとうございます。ほんと我々らしいタイトルになったと思って気に入ってますね。名前が決まったのっていつだっけ、空港で話した時だよね。
サクラ:沖縄からの戻りの時だから、2024年の11月かな。
アサガオ:そのタイミングで『超重ギガ』というタイトルが決まって、そこからツアーのタイトルも決めたりしたんですよ。前のアルバム『千紫万紅』にも「いろんな花が咲き乱れる」みたいな意味があってデラデラっぽいなと思いましたし、毎回ベスト盤ぐらいの気持ちで作っているんで、いろんなデラックス×デラックスが味わえる我々らしい名前をつけたくて、「鳥獣戯画」を『超重ギガ』って表記したら面白いって話をメンバーとしていたんです。
サクラ:「鳥獣戯画」の意味もかかっているからね。いろんなキャラクターがいて。
アサガオ:そうそう、日本最古の漫画ですから。そういう意味でも我々の個性を詰め込むって意味ではぴったりですよね。
──アルバム内容に制限を生むようなタイトルでもないし。
アサガオ:そうなんですよ。結局テーマは「この2年間の集大成」みたいなアルバムなんで。
──実際、タイトル負けしない中身の詰まったアルバムになっているわけですが、ツアーしながらの曲作りという生活でしたよね?
アサガオ:去年の<瞬け☆デラックス×プラネットツアー>中に曲を作って、1月のギリギリまで楽曲制作してました。『千紫万紅』は沖縄時代に作り上げた14曲ですけど、『超重ギガ』は上京してから生まれた曲たちで、この2年で色々吸収していろんな意味でスキルアップしてます。
──どういうところに成長を感じますか?
アサガオ:私のボーカルで言うと、この2年間で全国を廻ることによって、フルスイングだけでは太刀打ちできないっていうか、いろんな技を覚えないともっと強くなれないことを学びました。昔はパワフルさや馬力みたいなものを重視して歌っていたんで、がなりとか派手さをイメージしていたんですけど、柔を手に入れて、よりボーカルとしてのレベルアップができたかな。「ダイナミック琉球」なんて上京前はフルスイングで歌っていたんですけど、今はむしろ柔らかさが際立つみたいなぐらいまで表現力を上げられたって思います。

──ほとんどの曲を作曲しているサクラさんはいかがですか?
サクラ:スタジオが変わったこともありますけど、トータルでクオリティは俄然アップしています。自身の作曲も各楽器のレコーディング作業とかも全部含めて、ひとつひとつをしっかり考える時間もあったので、すごい時間を費やせたアルバムかな。ストリングスとかブラス隊のような仲間も増えて、そういう人たちにも助けられながらクオリティの高い1枚に仕上げられたと思いますね。
アサガオ:足し算というより掛け算でね。これまではアレンジャーがいたりもしたんですけど、今回のアルバムは、曲もディレクションもアレンジもほとんどサクラちゃんがプロデュースしているので、そういう意味でもよりデラデラっぽいっていうかサクラちゃんらしいものがたくさん生まれてる気がしますね。
──サクラさんのルーツってどのあたりなんですか?
サクラ:いっぱいあるんです。昭和歌謡みたいなところもそうですけど、ディスコ・ミュージックっぽいのも好きだし、作曲をし始めた頃ってオルタナティブバンドをやっていたので、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとかRADWIMPSあたりに影響を受けながら作曲していたはずなんです。でも「一夜一夜に人見頃」のギターフレーズがメタルって言われたり、ギターソロの雰囲気はビジュアル系だなとかも言われましたよね。音楽というものがだいぶ好きなので、結構広いジャンルになりますね。
──マルチプレイヤーでもありますしね。
サクラ:そうですね。ギターもベースもドラムもやりますし、過去にはベース&ボーカルもギター&ボーカルもやってたし、デラデラに初めて加入した日のライブはキーボードだったよね。ipad並べてキーボード2つ並べて。
アサガオ:小室哲哉さんだったね(笑)。
サクラ:たまに自分が何者かわかんなくなる(笑)。でもデラデラにおいての作曲のルーツはだいぶ歌謡曲寄りな気がします。村下孝蔵さんと山口百恵さんとかあたりの影響を強く受けていると「思いたい」ですね。
アサガオ:そうだと思うよ。特に村下孝蔵さんの哀愁的な要素とかね。私的にはサクラちゃんの作曲の良さって、サクラちゃんが作ったってことがすぐにわかることなんですよ。そういう人に出会ったことが他にはないんで。

──サクラ印ってどういうものなんでしょう。言葉で説明できます?
アサガオ:私的にはメロディだと思ってます。いろんなパターンがあるので「ここ」みたいなところではないから、サクラちゃんぽさって説明できないですけど、サクラちゃんが過去に演っていたバンドの曲も、なぜか全部分かってしまうんです。
──それは凄い。
アサガオ:私、J-POPの名曲でも誰が作ったかわかるんです。そのアーティストが人に提供した曲でも、「これ米津玄師っぽい曲だな」みたいな。この人にしか作れないメロディー・音楽みたいな部分を、身近で感じた初めての人がさくらちゃん。地元の沖縄でバンドやっている時も1番のメロディメーカーだと思っていたから。
──アサガオさんの聴き取り能力もサクラさんの制作能力も、どっちも凄いな。
アサガオ:今回のアルバムではそういう部分が1番出たかなって感じますね。でもそのサクラちゃんっぽい音楽の濃さってもっとあって、デラデラで消化できていないものがまだまだいっぱいあるんで、音楽に対してはやることが尽きないんだろうなって思ってます。
──楽曲制作は、苦労してひねり出すというより自然に生まれて来る感じなんですか?
サクラ:後者のタイプですね。でも、出ない時は一生出ないので。
アサガオ:色々頭で考えて完成させるというよりも、結局、衝動で生まれたものの方がすぐ形になるかもね。
サクラ:強いワードをいただくとそこからすぐできたり。「セクシー★ダイナマイト」がそうですけど、ベースのスズランがこの言葉を思いついて、「高低差を付けたセクシーダイナマイトの言い方とか面白いよね」って話をしてね、その3時間後ぐらいにはもう曲ができたみたいな。それをアサガオに共有してね。
アサガオ:「めっちゃいいじゃん」って、次の朝には歌詞もできていたっていう。
──理想的な流れですね。
アサガオ:できる時は凄まじい速さでバンって生まれる。でも「なんかもうちょっと練りたいね」みたいなものももちろん多いんですよ。
サクラ:「ブラックキャット・スウィング」のイメージとか「この旅が終わる頃には」なんて難産だったね。
アサガオ:思いつきは早くてメロディも歌詞もすぐできたんですけど、その後の仕上げがね。
サクラ:3回くらい曲自体が大きく変わってるからね(笑)。展開もたくさん変わったし、キーも変わった。元々はもっとフォークソングっぽい感じだったから。消滅したCメロとかもある(笑)。
アサガオ:結局、壮大なバラードになりました。こういうところが1番時間かかる要素ね。
──ライブでは、フォークソング・アレンジでやっても、きっとステキですね。
サクラ:アコースティック映えする曲だから、それはできるんじゃないかな。

──それにしても、全国ツアーを回りながら、よくそれだけ練り込む時間がありましたね。
サクラ:ライブの中で練ってたイメージですよ。
──やっぱりそういうことか。
サクラ:私たちって、曲ができたある程度形になったらライブで披露するんです。「この部分はもっとこう変えた方がいいな」みたいなアレンジは、ライブで仕掛けていくんです。
アサガオ:お笑い芸人みたいなやり方なんですよ(笑)。現場でネタを磨くみたいな。曲ができたらとりあえずライブでやる。
サクラ:他の曲もライブで披露してて、グルーブも含めてライブで練ってからレコーディングに持ち込んでいるってイメージなので、そういうスタイルだったからこそ、練る時間ができたんですよ。
アサガオ:「春色」なんか何年も前からある曲なんですけど、ライブでやるたびに「ちょっと違う」「もうちょっとこうした方がいい」っていうのを繰り返して、4年間ぐらいでやっと形になって今回収録となったもの。
──「春色」の作曲はギターのスズランですが、付点8分のバッキングが印象的ですよね。
アサガオ:スズランっぽくていいよねえ。
サクラ:スズランの得意なディレイ・フレーズですね。スズランはバックボーンにオルタナティブロックが入っているんですよ。
アサガオ:残響系っていうか。
サクラ:だね。凛として時雨なんで。
アサガオ:凛として時雨が好きすぎるもんね。

サクラ:「春色」のアレンジに困っている時、「もう、好きを全部ぶつけたらいいんじゃないか」「スズランの好きなルーツとかを全部詰め込んだロマンあふれる曲にしたら自分でも納得いくんじゃないか」って話になったんだよね。その時はやりすぎちゃってボツになったけど、今回はJ-POPの柔らかな表現とあのときの自分の好きなものがいい塩梅に組み合わったアレンジになって、やっと完成に至ったんだよね。
──時間はかかるけど、通るべき道があるんですね。
アサガオ:こうやって、曲をどうまとめるかみたいな能力がついていくんでしょうね。
サクラ:塩梅を掴んだ気がします。多分これからも悩んでいくんでしょうけど。
アサガオ:ずっと悩むと思う。しかも歳を重ねることにその塩梅も変化していくからね。多分10年後のデラックス×デラックスはもっとアダルティーっていうか渋い感じになっているかもしれないし、むしろこのままどんどん元気になって、めちゃくちゃアップテンポな超ロックサウンドになっているかもしれない。
──わかんないですね。
アサガオ:日々変化するからこそ面白い。スズランも「春色」をやっと完成させたので、多分またいっぱい曲を作るんじゃないかなと思いますね。

──いずれの曲も、コール&レスポンスや踊りなど、キメや構成がライブ演出とがっちりシンクロしているのは、そういう作り方だったからなんですね。激烈なツアースケジュールをこなしながらのアルバムリリースだったので、疲労で痩せちゃうんじゃないかと心配していました(笑)。
アサガオ:皆様、忙しい=痩せるみたいな心配されるみたいで(笑)。
──不思議ですか?
アサガオ:だって、全国で美味しいものを食べまくっているんで(笑)。もちろん1番は心が健やかということがありますけど、心労というかストレスがないんです。肉体的な疲れはあるんですけど、やりたいことをずっとやらせてもらっているんで、心も身体も満たされて疲れ痩せみたいなものはありえないですね。
──痩せるはずがないのか。一般人の感覚で痩せちゃうかなと心配しました。
サクラ:普通はそうですよね。忙しいと痩せちゃいますよね。でも食欲はいつだって旺盛。
アサガオ:我々の身体が一般人じゃないもの。普通の感覚とか生活スタイルと多分かけ離れているんでしょうね(笑)。
──アルバムから滲み出てくるカロリー過多な多幸感の秘密は、そこですね。デラックス×デラックスは体重も変わることなく、このまま突き進むと。
アサガオ:「非日常」をテーマにデラックス×デラックスをやっているんで。こういう身体の大きい人って日常にはあまりいないじゃないですか。
──ええ。

アサガオ:そういうビジュアルの部分でも、非日常な普段見られないものを作っていると思っているので、まだまだ初めて出会う人が多いあいだは、この見た目は武器ですし非日常ですけど、みんなが我々のことを知ってくれたら、それが当たり前になっちゃって目新しさがなくなりますよね。そしたら痩せるんじゃないですかね。この見た目である必要はないから。
サクラ:そうなった時は、アサガオが175kgから100kg落として75kgになるという、この振り幅を楽しんでもらうコンテンツになるかな。1年前まではこんなだったんですよ、って(笑)。
アサガオ:かもしれないし、ゆくゆくは世界でやりたいので、そうなった時に「やっぱ大きい方がいいよね」ってなったら痩せない。
サクラ:そうね。別に体調が悪いとかないからね。
アサガオ:それも才能だから。とりあえず痩せる予定もないし、考えてない。
──アナーキーですね。
アサガオ:よく「音楽に命かけてます」っていうアーティストっていっぱいいますけど、私達は物理的に命をかけてますからね(笑)。
サクラ:それで言うと、反骨心だね。
アサガオ:やっぱ私の中のどこかに眠るパンク魂が残っているんでしょうね。







──海外展開の話も出ましたが、今後はどのような未来を描いていきますか?
アサガオ:小目標でいうと、とりあえず武道館に立ちたい。
──それは時間の問題でしょう。
アサガオ:そしてやっぱ東京ドーム、ドーム公演をやってみたい。
サクラ:それか横浜アリーナ。
──いかにステージが小さく見えるかってところですね。
アサガオ:ステージに、でっかい私の顔のセットを作って、口がガバって開いて、そこから私が出てきて歌うっていうのをやりたいんで、それをやるには、広さ的にドームとかなのかなっていう。
──最高ですね。
アサガオ:それを海外でできたら最高じゃないですか。普段からMCで「どんなステージに立っても、私が大きく見えるように、大きくなっているんだよ」って言っているので、何万人の会場だろうが、私の表情がはっきり分かるように私は大きくならなくちゃ。
サクラ:実現していきたいよね。どんどんステージが大きくなって、フロアも広くて距離があるはずなのに、アサガオはずっと近くに感じる。そういう馬鹿げたことを言ってゲラゲラ笑っているんだけど、それを本当に実現するのが1番面白いんで。
──そうやってここまでやって来たんですもんね。
アサガオ:そうだと思いますよ。「上京する」とか「全国ツアーやる」とか「ZEPPに立つ」とか、結成した時にゲラゲラ笑いながら言っていたことですからね。
サクラ:そもそも沖縄にいた時代は、「全国色んなところに行くけど、目的はおいしいものを食べること」って言ってたもんね。ついでにライブ回るみたいなことをゲラゲラ笑いながら言ってた。
アサガオ:ツアーの話とかインタビューされても、「どこどこのご飯がすごい美味しくて…」って全然音楽の話をしないみたいなことをやろうって言ってたもんね。
サクラ:今、ほんとにそうなっちゃってる(笑)。ラジオに出させていただいても、ライブの話より先にご飯の話で盛り上がっちゃう。
アサガオ:「7人全員、車1台で全国を回る」みたいな、こんなに大きいのに回れるわけないって言いながら、実際に回ってますから(笑)。そういう笑い話が本当になっちゃうから、バンドってやめれないんだろうなと思ってます。

──そのマインドがステージからも溢れ出て、観に来た子供たちに伝染していくんでしょうね。
アサガオ:我々ってどう憧れていいかわかんないですけどね。身体を大きくするとか、化粧するとか、ド派手な服着るとか、いろんなことがありすぎて。
サクラ:でも沖縄の後輩のバンドとかは、私たちのエンタメをちゃんと引き継いでやっているバンドがいたりして、ちゃんと後輩にそういうエンタメ精神は引き継がれてたりするよね。
アサガオ:私も、中学生の頃に憧れていたアーティストと対バンしたりご一緒する機会が増えてきているんで、「デラックス×デラックスを見て音楽を始めたんです」みたいな子が現れるっていうのが私の夢…なんですけど、今んとこイメージが全然沸かない(笑)。
──いやいや、もう水面下にたくさんいますよ。あとはその子たちが出てくるだけ。
サクラ:そっか。その時に私たちがまだ活動できていないといけないわけね。
アサガオ:それはそう。
サクラ:ベッド・インもキノコホテルもチャラン・ポ・ランタンも、アサガオが衝撃を受けてからもずっとやり続けていて、対バンが叶っているわけだから、我々も続けることだよねっていう。
アサガオ:10~15周年ぐらいの時に、デラデラに憧れた子たちと一緒にやりたいんですけどね。
──大きな背中を見せ続けていく、と。
アサガオ:そうですね。私のちょっとちっちゃくなったバージョンみたいな子がいたらめっちゃ爆笑するんだろうな。「影響受けすぎ」みたいな。
サクラ:もしかしたらアサガオより一回りでかいかもしれないよ。
アサガオ:そうなったら闘うしかない。
サクラ:総体重650キロとか言われたらどうする?
アサガオ:逆に痩せたくなるかもしれない。もう嫌だこんな体重で闘いたくないって(笑)。
サクラ:スラックス×スラックスになるの? それはやだな。
アサガオ:いや、我々はいつまでもデラックス×デラックスですよ。
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
デラックス×デラックス『超重ギガ』
2025年06月11日発売
ZLCP-0443 ¥3,000 税込
1.セクシー★ダイナマイト
2.ダイナミック琉球
3.春色
4.シーヤ!!!
5.YOUNG MAN(Y.M.C.A)
6.エバビバ
7.LOVEマシーン
8.MEMEME~女女しい女じゃいられない~
9.オニサンコチラ改
10.どうにもとまらない
11.アイ・エキゾチック
12.DESIRE-情熱-
13.ブラックキャット・スウィング
14.この旅が終わる頃には
<爆裂!!ギガントスイングツアー番外編>
9月14日(日)Zepp 大阪Bayside
9月20日(土)Zepp 羽田
一般先行チケット:https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=468779