【ライブレポート】WANDS、最大規模の全国ホールツアー<TIME STEW>完遂「昔も今もお客さんが溶け合わせてくれている」

2025.06.24 19:00

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WANDSが4月18日の仙台サンプラザホール公演を皮切りに5月30日の東京ガーデンシアターまで、自身最大規模の全国ホールツアー<WANDS Live Tour 2025 〜TIME STEW〜>を開催した。全9公演のファイナルとなった東京ガーデンシアターのレポートをお届けする。なお、同ツアー初御披露目の最新ギターにスポットを当てた柴崎浩インタビューもあわせてご覧いただきたい。

通算8枚目のアルバム『TIME STEW』には新曲4曲に加えて、1990年代に制作された「天使になんてなれなかった」と「FLOWER」の新録となる第5期バージョンが収録されている。こう記すと、過去の財産を活かしていると思われるかもしれないが、そうではない。ボーカリストに上原大史を迎え、2019年11月から第5期として活動再開したWANDSは、その音楽性やライブアクト共にクオリティが高く、継続的に充実した活動を行っている。6年目を迎えた第5期は、WANDSとしての活動期間が歴代最長を更新しているうえ、ボーカリストとしての活動期間も上原大史が歴代最長。1991年のデビューから約34年の歴史を積み上げてきたWANDSは変遷を経ながらも、現在進行形のバンドとして色褪せることのない名曲の数々を鳴らし続けている。

『TIME STEW』収録新曲もWANDSならではの洗練感をまとった上質なもの。1990年代楽曲のセルフカバーがアルバム最大のトピックではなく、それらWANDS第5期ver.が、新曲と交じってもまるで違和感なく溶け込んでいることこそ注目に値する。おそらく、柴崎と上原は第5期WANDSに確かな手応えを感じており、結果、かつての楽曲ともフラットな感覚で向き合えるのだろう。『TIME STEW』は“STEW=煮込む”という言葉の持つ意味通り、過去と現在が絶妙に溶け合って、魅力に富んだ今を生み出した。

そんなアルバム『TIME STEW』を携えた全国ツアーは、1990年代からWANDSを応援している層はもちろん、若い世代のリスナーも数多く会場に見受けられるなど、全国各地で大盛況となった。新たなファンを獲得し続けながらツアーは進み、5月30日に東京ガーデンシアターで開催されたファイナル公演は当然のごとくソールドアウト。当日の場内は平日にもかかわらず、華々しさに溢れる光景が広がっていた。

オープニングSEに続いてWANDSがステージに姿を現すと、柴崎が奏でる雄叫びのようなギターサウンドが場内に響き渡る。客席から熱い歓声と盛大な拍手が湧き起こり、ライブは『TIME STEW』収録のミディアムチューン「天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]」からスタートした。黒いスーツに身を包んだスタイリッシュなシルエット、力強さと色気を併せ持った歌声を聴かせる上原。穏やかな表情を浮かべながらステージ上を行き来して、テクニカルかつテイスティーなギターソロを決める柴崎。強い存在感を放つ二人の姿と躍動感を放つサウンドにオーディエンスも熱いリアクションを見せ、ライブが始まると同時に場内がひとつになったことが如実に感じ取れた。

その後は、心地よく疾走する「RAISE INSIGHT」と洗練された音像を持つ「恋せよ乙女」を続けてプレイ。柔らかな熱気を湛えたWANDSの楽曲はライブ映え抜群で、聴いていると自然と気持ちが引き上げられる。それを示すようにライブが進むに連れて場内のボルテージはどんどん高まっていった。そして、3曲聴かせたところでMCへ。

「あらためまして、WANDSです! 本日、<WANDS Live Tour 2025 ~TIME STEW~>ファイナルは、ここ東京ガーデンシアターでございます。皆さん、駆けつけていただいて、誠にありがとうございます。本当にね、昔から来てくれている方々とか、今日初めて来てくれた方々とか、いろいろいらっしゃると思うんですけれども、いつからのファンとか、そういうことは関係ないですから。一番前の席から一番上の後ろの席まで、皆さん同じようにぶち上げていきますので、最後までよろしくお願いします!」──上原大史

オーディエンスとのやり取りも交えながら、軽快に明るく言葉を伝える上原のMCに、客席からは幾度となく拍手や歓声が起こっていた。

続くブロックでは、アッパーなサビを配した「GET CHANCE GET GROW」や上原の伸びやかなボーカルと柴崎のメタリックなギターを活かした「官能SADISTICに濡れて」、尖った暗さと高揚感を融合させた独自の味わいが印象的な「FLOWER [WANDS第5期ver.]」などをプレイ。それぞれの楽曲に合わせてフレキシブルなアプローチを展開する柴崎のギターワーク、幅広い声域と豊かな声量、正確なピッチなどが光る上原のボーカルは共に上質だ。年齢差やキャリアの長短などを超えて柴崎と上原が対等に並び立っていると言ってもいい現在のWANDSだが、シンガーとして持てる実力の全てを発揮してWANDSファンの心を掴んできた上原の成長と等身大を実感できるステージでもあった。

ライブ中盤で披露された「honey」間奏では、上原のフェイクをなぞる柴崎のギターのかけ合いといった息の合った応酬が客席を大いに沸かせた。また、ウォームなAメロ〜Bメロと力強さを湛えたサビを配した「WONDER STORY」、メリハリを効かせたアレンジや知的な味わいのギターソロをフィーチュアした「Shooting star」、翳りを帯びたスローチューンの「リフレイン」などが届けられた。1曲ごとに表情を変えて深度を増していく流れは、物語を紡いでいくような感覚があり、観飽きることがない。様々なインスピレーションが湧いてくるWANDSのライブの魅力を今回もたっぷりと味わせてくれた。

UKロックが香る「アイリメンバーU」から後半に入ったライブのハイライトのひとつはメドレーにもあった。「もっと強く抱きしめたなら [WANDS第5期ver.] ~ 時の扉 [WANDS第5期ver.] ~愛を語るより口づけをかわそう [WANDS第5期ver.]」という怒涛の構成は圧巻。続けて、「世界が終るまでは… [WANDS 第5期ver.]」がフルで演奏されるなど、場内が大きな歌声に満ちた。

もちろん、結局ライブで一番盛り上がるのは昔の曲だったというわけではない。あくまでも第5期の楽曲を中心としたセットリストでライブを構成し、往年のヒット曲がさらなる華を添えるという流れが見事。メリハリを効かせた絶妙なライブ構成に導かれて場内の熱気がより高まっていくという構成は、まさしく“TIME STEW”を体現したものだろう。本編ラストを「大胆」で締めくくったあたりに彼らの意図を感じさせた。

場内のボルテージを極限まで引き上げてメンバーがステージから去ると同時に、客席からはアンコールを求める大声援と手拍子が湧き起った。その熱い要望に応えて再びステージに立ったWANDSは「真っ赤なLip」をプレイ。ゴージャスなサウンドや楽器陣によるホットなソロ回しなどで魅了した後、この日、2回目のMCへ。

「ありがとうございます。今日もたくさんの人に来てもらえて、最高です。アルバムもツアーも、今回は“TIME STEW”という名前をつけてまわっているんですけれども、インタビュー記事とかCDショップの宣伝文句とかに、TIME STEW=“時間をかけて、じっくり煮込んだ”なんて書いてあるんですよね。日本語にすると、あまりカッコ良くないなという気がするんですけど(笑)、大体そういう意味だしな…ということで。今回のツアーをまわってきてね、まさにお客さんが昔のWANDSも、今のWANDSも溶け合わせてくれているのかなということを感じました。いろんなお客さんがいて、“TIME STEW”という名前にふさわしいツアーだったかなと思っています」──柴崎浩

「今回のツアーは本当に、いろいろ試練があったというか。…大変でしたけど、皆さんに助けていただきながら乗り越えることができました。ありがとうございます。そうしたら、まさかの今日、一番調子がいいというね。“調子はあんまりやけど、気合いでファイナルは盛り上げる!”みたいな感じやったんですけど、まさかの初日よりも調子いいという。すっごい声出ています(笑)」──上原大史

「本当に、ここまで活動させてもらって、1本1本お客さんに、ありがとうという気持ちでいっぱいです。ありがとうございます」──柴崎浩

感動的なMCに続いては、晴れ渡った夏の青空を思わせる爽やかさを湛えた「世界中の誰よりきっと [WANDS第5期ver.]」を聴かせた。そして「世界平和というのは本当に難しいことだと思いますけど、せめて今、ここにいる皆さんには温かい愛のある世界で生きていってほしい。そんな気持ちを込めて歌います」という上原の言葉と共に「WE ALL NEED LOVE」が届けられた。光を感じさせるサウンドや上原の情熱的なボーカル、柴崎が奏でるエモーショナルなギターソロなどが折り重なって生まれる煌びやかな世界は心を揺り動かす力に溢れていて、客席から大合唱が湧き起こる。「WE ALL NEED LOVE」でライブが締め括られた後、ガーデンシアターの場内は感動的な余韻に包まれていた。サポートメンバーを送り出し、何度も「ありがとう!」という言葉を重ねた二人は、両手を挙げながらこう語ってステージを後にした。

「今日も最高でした。また会おうね」──柴崎浩

今回のツアーもハイクオリティーという言葉が似つかわしい、素晴らしいライブを披露してみせた。MCをほとんど入れることなく、純粋に音楽の力だけでオーディエンスを魅了したのはさすがといえるし、WANDSの楽曲は時代を超えて輝く力を持っていて、それは第5期の楽曲にも引き継がれていることが感じられた。優れた音楽性や良質なライブ、メンバー二人の魅力的な個性によって、さらなるスケールアップを果たすことを予感させるステージとなった。

取材・文◎村上孝之
撮影◎山口渚/小沼高 提供◎GIZA, INC.

 

■<WANDS Live Tour 2025 〜TIME STEW〜>5月30日(金)@東京ガーデンシアター SETLIST
01 天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]
02 RAISE INSIGHT
03 恋せよ乙女
04 GET CHANCE GET GROW
05 官能SADISTICに濡れて
06 FLOWER [WANDS第5期ver.]
07 We Will Never Give Up
08 honey
09 YURA YURA
10 WONDER STORY
11 Shooting star
12 リフレイン
13 アイリメンバーU
14 メドレー (もっと強く抱きしめたなら~時の扉~愛を語るより口づけをかわそう [WANDS 第5期ver.])
15 世界が終るまでは… [WANDS 第5期ver.]
16 大胆
encore
en1 真っ赤なLip
en2 世界中の誰よりきっと [WANDS第5期ver.]
en3 WE ALL NEED LOVE

 

■WANDS × WOWOW 3ヶ月連続特集

▶<WANDS Live Tour 2025 ~TIME STEW~>
7月20日(日) 午後10:00
WOWOWライブで放送/WOWOWオンデマンドで配信
※放送・配信終了後~1ヶ月間アーカイブ配信あり
 始動6年目を迎えたWANDS第5期が、8thアルバムを携えて開催した全国ツアーより、ファイナルとなった東京ガーデンシアター公演を独占放送&配信。活動期間歴代最長となった3代目ボーカルの上原大史、初期メンバーの柴崎浩(G)、木村真也(Key ※療養中)という体制で“第5期”の活動を行なっている彼らの最新ライブ映像となる。
収録日:2025年5月30日/収録場所:東京東京ガーデンシアター

▶WANDS全期 Live & Music Video History
8月放送・配信予定
※放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
 1991年にデビューしたWANDSの全期を網羅したライブ映像とMVをセレクトして放送&配信。デビューシングル「寂しさは秋の色」から、ミリオンヒットナンバーを連発した黄金時代、そしてZARD坂井泉水が歌詞を担当するなどアニメ主題歌でも人気を博した2代目ボーカル和久二郎の第3期、さらに鉄壁の現体制がシンクロする。30年超のキャリアの中でライブ活動を主軸に活動していたのは、第2期(1992~1996年)と第5期。初代ボーカル上杉昇と、上杉へのリスペクトを公言している現フロントマン上原大史の魅力を味わうことのできる特集が届けられる。

▶WANDS第5期 Live & Music Video Collection
9月放送・配信予定
※放送・配信終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
 上原大史(Vo)、柴崎浩(G)、木村真也(Key)による第5期WANDS始動後のライブ映像とミュージックビデオをセレクトして放送&配信。2019年11月に上原大史(Vo)、柴崎浩(G)、木村真也(Key)の3人で活動が始まったWANDS第5期。2020年1月にはシングル「真っ赤なLip」を発売して第5期の開幕を高らかに宣言するも、程なくしてコロナ禍の影響により世の中は厳戒態勢に突入する。それでも彼らは楽曲制作の手を緩めることなく、第5期WANDSサウンドを追求。そうした焦燥と葛藤と挑戦の日々が詰め込まれたのが、これまでに公開されてきた楽曲であり、ライブ映像とミュージックビデオだ。現在のWANDSの情熱とポテンシャルを感じることのできる作品群とともに、その魅力が届けられる。

関連リンク

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