【ライブレポート】YOYOKA、渋谷で見せた圧巻のドラム、上杉 昇、阿部真央、Jean-Ken Johnnyらと競演

2025.06.10 15:13

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1歳半でドラムを始め、4歳からライブ活動を開始。現在は家族でLAに在住し高校に通うかたわら、さまざまなアーティストとコラボするなど音楽活動を続けるYOYOKA。そんな彼女が渋谷duo MUSIC EXCHANGEで6月5日に2年ぶりのソロコンサートを開催した。今回は上杉 昇、MAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnny、阿部真央ら総勢15人のゲストを迎え、すべての曲のドラムを彼女が担うものだったが、こんな顔ぶれが集結するイベントなんて普通ならば実現し得ないはず。

これほどの話題性とクオリティのライブを実現出来てしまう弱冠15歳のYOYOKAが多くの人の気持ちをつかむ理由、そしてドラマーとして広く評価されている魅力、それらを一目瞭然で観ることができた夜だった。

ライブ配信されていることもあり、ほぼ定刻にライブはスタート。オープニングバンドはYOYOKA(Dr)+加藤礼愛(Vo)、稲月カノン(G)、Akarin(G)、三宅音寧(B)という5人の女の子たち。前任ベーシストの松本嬉桜香さんが亡くなったため音寧が参加したとのことで、YOYOKAは「嬉桜香ちゃんのロック魂を引き継いで演奏したい」と意志表明。体に合わない大きな楽器を抱えた子供らしい見た目ながらも(失礼!)、曲が始まればしっかりした演奏、そのギャップで驚かせながら、ディープ・パープルの「Burn」と、デミ・ロヴァートの「La La Land(Rock ver)」を楽しそうにプレイした。

続いてはこの日のホストバンドにバトンタッチ。YOYOKA+鳴海賢治(G)、まどーん(B)、coba84(Key)、山口進也(Manipulator)の5人が基本のメンバーとなる。

「昨年アルバム『For Teen』をリリースしまして、そこから1曲やりたいと思います。14歳の時に制作して、曲数も14曲。タイトルも14にかけているんです」と語ってから演奏した先行リリース曲の「Sky Blue」は、本編3曲目で本領発揮してきたなという感じのインストナンバーで、ポリリズムや変拍子に意表を突かれる。ドリーム・シアターやポリフィアなど、いわゆるテクニカル・メタルやプログレッシブ・メタルを愛聴している人なら大好物だろう楽曲で、キーボード→ギター→ベースが主旋律をまわす展開や大胆なテンポチェンジなど、たまらない構成。YOYOKAも左右のスティックを交差させて華やかなフレーズを繰り出すなど、要所要所で見せ場を作る。

さらにWAKASA(Vo)を呼び込み、ポップな歌ものを3曲。YOYOKAのYouTubeにも参加歴ありのWAKASAはポニーテールとデニム姿の歌姫で、ホイットニー・ヒューストンの「すてきなSomebody」ではホイッスルボイスを披露するなど、豊かな歌唱力で会場を盛り上げる。続いては『For Teen』収録、ジャミロクワイのメンバーが書いてくれたという「Time Travel」だが、「私らしくないと思うかもしれませんが、ジャミロクワイは大好き。ファンキーで大好きな曲です」と語るYOYOKA。1970年代ディスコ的アプローチのダンスチューンで、16ビートのグルーヴが軽快だ。まだ打ち込みの機材も世になく、すべて人力(アナログ)で演奏していた頃のような温かみのあるサウンドが心地よい。さらに『For Teen』収録の「Hello Sunshine」は彼女がアコギで作ったリフを元に仕上げたというメロウなナンバー。指弾きのギターから穏やかにスタートし、カツカツというリムショットの抑えた演奏で、表現力の幅広さを印象づけた。

続いてのゲストは、阿部真央(Vo, G)。YOYOKAとはInstagramでフォローしあう仲だそうで、「はじめましての方もたくさんいらっしゃると思いますが、私の曲も覚えて帰ってください!」と赤いアコギをかき鳴らし、トークの続きのような自然体で歌いだしたポップソング「ロンリー」で、会場の空気を一瞬にして変える。YOYOKAも笑顔を浮かべて楽しそうだ。演奏が終わりYOYOKAが「元気出ますね!」と振ると、観客も「出まーす!」と即答。阿部も「後ろで叩いてもらってこんなに楽しい!って。あるんですよ」と応える。そして「『For Teen』では私が唄ってるんですけど、これも阿部真央さんにぜひ唄って欲しくて」と紹介された「Keychain」をしっとり聴かせた後は、阿部真央のデビュー曲「ふりぃ」。パワーポップ・パンクとも言うべき曲調とリズミカルなアコギのカッティングに誘われて、客席には手拍子が広がる。歌のバックにはフレーズ毎にドラムのオカズが入るのだが、これもバシバシ決めてくれて実に爽快。アウトロでは阿部がYOYOKAの方を向いてしゃがんだままかき回しを披露するなど、パワー全開の演奏を繰り広げた。

今度はJean-Ken Johnny(Vo)がオオカミ姿で登場し、「本日唯一のペット枠で参加します!」と笑わせる。ベースに寺沢功一を迎え、さらにゲスト・ギターのKengoも加えて演奏したのがレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「Guerrilla Radio」。2022年にもレイジの「People of the Sun」をYOYOKAとカバーしているJohnnyだが、アグレッシブなイントロが始まると全身を大きくしならせてリズムを取る。エネルギーみなぎる鋭いハイトーン・ボイスも聴きどころ。そして「自分のバンドにはボーカルが2人いるんですけど、この曲を僕がピンで唄うのは初めてです」と「Take me under」を唱う。導入部はエモく低い音域で静かに、リフが入ると激しくヘドバンするパフォーマンスには、ブレスや息遣いはもちろん、微妙に声を震わせる様子もはっきり感じられる。こんな近くでJohnnyの姿が見られるとは、ファンには大きなプレゼントとなったことだろう。

いよいよ大トリ、YOYOKAが「上杉 昇さん!」と告げると客席には大きな歓声が上がる。「どうも。ニューオリンズから来ました上杉です。さっき日本に着きました」「じゃあ、私のほうが先に着いてたんですね(笑)」(YOYOKA)と、なかなかに呼吸も合っている。「YOYOKAさんには、ちょっと早い内容の歌詞かもしれませんが」と演奏されたWANDSの「Secret Night」では脚を前後に据え、両手でマイクスタンドをつかんで唄い始めたかと思うと、アクセル・ローズばりに体を左右に揺らしたり、額の前で指をヒラヒラと動かしたりという挑発的なアクションも。この曲は1995年リリースで、YOYOKAが生まれるはるか前の楽曲。続くal.ni.coの「晴れた終わり」は、日本のメジャー・レーベルからリリースされたグランジサウンドの先駆けとも言えるナンバーで、チェロ的な深い低音に導かれ、破壊と癒やしが同居したメロディが奏でられる。ディストーションやビブラートにストレートと、多彩なボーカル表現も胸に刺さる。ラストではYOYOKAに何本ものスポットが当たるが、その前で微動だにせず立ち尽くす上杉。圧倒的な存在感だ。「両親が上杉さんの大ファンで。父も母も私も、al.ni.coも大好き!」と、つまりお母さんのお腹の中でも上杉の楽曲を聴いていた彼女なのだ。

「次の曲は、タイアップもついてないしあまり有名じゃないんですけど、頑張って有名にしていきたいと思います」と紹介されたのは、彼が2013年から大事に唄ってきた「Frozen World」。凍り付いた世界、なのに温かみを感じさせる曲調。包容力と優しさをにじませつつ、10代の少年のような伸びやかさを併せ持った歌声……不思議な両面性をもつ楽曲だ。密室感ある打ち込みビートの音、歌の背後で適度に抑えたストローク、そしてパワーを解き放つ間奏部分と、リズムのコントラストも鮮やか。

「叩いてても楽しい、というか気持ちいいです」とYOYOKAが語ると、「デビューして35年くらいいろんなドラマーの方とやりましたけど、本当にすごい。才能がある人とは聞いてましたけど、ここまでとは……」と上杉も絶賛。続くはWANDSの「Flower」で、スタンドを外してマイクを握りしめ、仁王立ちする姿はレジェンドの迫力。細かいビブラートやダイナミックなビブラートも多用し、28年前から着実に進化した表現を聴かせる。上手下手へ歩き回りながら、歌詞の内容に合わせて片手で頭を抱えたり、拳で胸を叩いたり。アウトロでは、天を指差してからの超ハイトーン・シャウトを見事にキメてみせた。

「超ロック。超ガツンとやってくれました! ほんとにみなさんカッコよくて。なんでこんな豪華なメンバー、そしてなんてバラバラなメンバーなんだろう」とYOYOKAが興奮気味に感謝を伝え、本編ラストは『For Teen』から「Sparkling」。レコーディングでは元ドリーム・シアターのデレク・シュリニアンが参加したというのも納得なプログレッシブ・メタル系インストだ。音数や手数も多いのに、彼女は叩き方がチマチマしていなくてカッコいい。振りかぶる腕の弧を描く動きが大きく、ワイルドかつエネルギッシュなのだが、こういう部分は生で観てこそ感じられる。変拍子も笑顔で楽しそうに叩き、“彼女のロック魂は、百聞は一見にしかず”なのだなあと感心しているうちに本編の幕は閉じた。

 アンコールは一人で登場してのドラムソロ。「何も決めてないので、いつも通り即興ということで」と叩きはじめ、徐々に熱量とスピードを上げていく。ツインペダルを生かしたビート、パラディドル、千手観音的な派手なフレーズや、ハイハットとフロアタムを高速両手クロスしながら叩く技など、見せ場も多数。メタリカやクイーン、ラウドネスの樋口宗孝を想起させるフレーズも散りばめている?と思っていたら、今度はスティックを置いて素手で叩きはじめ(これは明らかにレッド・ツエッペリン/ジョン・ボーナムだろう)、観客を大いに沸かせた。

オーラスは全員を呼び込んでの「世界が終るまでは…」、バンドがサワリのフレーズを弾いただけで歓声があがる。この曲がリリースされたのは1994年だが、30年以上経っても名曲は名曲なのだ。サビで上杉が片手を耳にあてるゼスチャーとともに客にマイクを向けると、観客はシンガロングで応える。みんなこの曲が心に刻み込まれているのだ。間奏でゲスト・ギタリストの宮澤佑門が上杉に寄り添ってギターソロを弾いてみせると、上杉はエアギターでリアクション。阿部真央とWAKASAを含む女子4人のコーラスも華やかだが、マイクを持たずステージに上がったJohnnyがバスケの3点シュートの動きで華を添えているのも楽しい。最後は上杉が片膝をついて両手でマイクを握り、ステージにうずくまるような姿勢でロブ・ハルフォードばりの強力なシャウトだ。

この日のライブ中、YOYOKAは何度も「時間の経つのが早い」と口にしており、本編終盤でも「今日はほんと早くて。開始から10分しか経ってないくらいに感じてます」と語っていた。それくらいこの日のライブは楽しく、そして裏腹に緊張の連続だったということなのだろう。自分の音色や存在感を示せるドラムを叩きつつ、全部のゲストにも楽しく演奏させるのは、やはりもの凄いことなのだろう。この日は4人のボーカリストのバックを固めたが、すべての歌を魅力的に届けていたし、選曲もオールド・ハードロック、プログレメタル、R&B、ソウル/ディスコ、オルタナ、ヘヴィロック、グランジ、ポップス、J-ROCKなど多岐にわたっていたが、全体のパートと融け合って曲の良さをしっかり引き出していた。幼い頃から天才の呼び声が高かった彼女だが、それが才能に甘んじているだけのものではないことは誰にでもわかるはず。そうして世代も性別も、ジャンルも楽器も超越し、ミュージシャン同士のリスペクトがあればこそ実現したイベントだったのだと思う。終演後の楽屋では、「ぜひまたご一緒したいです。本当に!」という言葉があちこちで飛び交っていた。ここからまた新しい何かが生まれる……そんなことを感じた夜だった。

取材・文◎舟見佳子
撮影◎YOSHIMI.

<YOYOKA Solo Concert 2025 in Tokyo>

2025年6月5日(木)
渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
出演: YOYOKA、上杉昇(Ex-WANDS、Ex-al.ni.co)、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、寺沢功一、WAKASA、阿部真央、Kengo、宮澤佑門
サポートメンバー:
Guitar – 鳴海 賢治
Bass – まどーん
Keys – Coba84
Manipulator – 山口進也
オープニングバンド:
Vocal – 加藤礼愛 (15 y/o)
Guitar – 稲月カノン (18 y/o)
Guitar – Akarin (9 y/o)
Bass – 三宅音寧 (10 y/o)
Drums -YOYOKA (15 y/o)