【ライブレポート】ABBA、想像を遥かに超えた驚異のアバター・パフォーマンス

2022.06.06 03:33

Share

スウェーデンの国民的ポップグループ、ABBAが2021年に40年ぶりに復活し、ニューアルバム『ABBA Voyage』をリリースした事は世代を超えて世界中に大きな話題となった。

メンバーはすでに全員70歳代半ばとなっているが、デジタル技術を駆使した仮想”ABBAters”(アバター)としての革命的なコンサートを行う事も発表。2022年5月27日より翌年5月までロングランで開催されるコンサートが一体どんな内容なのか早速ロンドンへ飛んでみた。

通常のコンサートとは違うアバターという事は理解しているものの、何と言っても40年ぶりという快挙。クィーンエリザベス・オリンピックスタジアムに新設されたABBAアリーナには老若男女が集っている。

会場ロビーのバーエリアには、シャンパンやワインがずらりと並び、グラス類もプラスチックではなくガラス製を使用している。ドレスアップした紳士淑女たちがこぞって乾杯している光景はイギリスらしくも感じてしまう。もちろんカジュアルな若い世代もお祭り状態である。

フロア内はダンスフロアとシートエリアとなっており、ソールドアウト公演でもダンスフロアは気兼ねなく踊れる配慮からか、スペースには余裕があった。場内アナウンスが開演の合図、そこにメンバーは居ないのだけれどやっぱり歓声は湧き起こる。

ステージ上には、向かって左サイドに10人からなる生バンド。そしてアバターのメンバー4人もステージ上に現れる。照明と映像による演出効果とはまた別であり、スクリーンもメンバーを覆うような前方カーテン状のものもあり。どのような仕組みなのか、投影されているものなのか、これは目の錯覚なのか、とにかくアバターの4人はステージに居るのだ。

それは美化されたものではなく、あくまでもリアル。メンバーの身体の肉付き感や、スクリーンにアップが映ると肌の質感も凄い。そばかすや毛穴、うぶ毛までも見て取れるほど。動きの滑らかさは想像を遥かに超えているし、アグネタとフリーダの挙げる腕の高さ、足の角度、身体のくねらせ具合などの二人の微妙なズレまでも再現されている。

表情も客席を見る視線の動きもあり、そこに居るのは本当は生身の人間ではないのですか?と何度も思ってしまう。

曲によっての着替えや、なんと曲間でのMCまでもするアバター。「これは本当に私ですよ、本物なんですよ。歳を取らなくていいよね。」現在の彼らの歌声と動きから作られたものというから、ちょっと未来が怖くなるほどのデジタル技術。

「30秒で着替えた事はあるかい?この衣装は好きではなかったよ。」と今だから言えるような事も。曲の説明もしながら、「私たちが最後にロンドンでプレイしたのは1979年の事でした」。どうやら1979年のコンサートを再現しているようだった。

そして今回のコンサートのタイトルにもなっているニューアルバム『ABBA Voyage』から新曲も披露された。1979年の再現だけではなく正しく最新コンサートとなっているのだ。

曲によってはアニメーションで見せるもの、また生バンドの演奏もフューチャーされる箇所もあり、普遍的な名曲たちは360°の空間を利用したABBAアリーナの世界で再び蘇り、夢のような歓びをくれる。

感動的に『The Winner Takes it All』で締め括ると、暗転したステージ上にはアバターではない本物のビョルン、アグネタ、フリーダ、ベニーの4人が登場したこの上ないサプライズ、泣けました。

最後にホテルに帰宅した頃を見計らってのようにABBA Voyageのオフィシャルから「Thank You for the Music」というメールが参加者へ届いていたのも何とも素敵な演出でしたよ。

文・写真◎ Sweeet Rock / Aki

<ABBA Voyage 2022 >

2022.5.29 ABBA Arena(Queen Elisabeth Olympic Stadium)London, England
1.The Visitors
2.Hole in Your Soul
3.SOS
4.Knowing Me , Knowing You
5.Chiquitita
6.Fernando
7.Mamma Mia
8.Does Your Mother Know
9.Eagle
10.Lay All Your Love on Me
11.Summer Night City
12.Gimme! Gimme! Gimme!
13.Voulez-Vous
14.Don’t Shut Me Down
15.When All is Said and Done
16.I Still Have Faith in You
17.Waterloo
18.Thank You for the Music
19.Dancing Queen
20.The Winner Takes it All