「M-SPOT」Vol.068「優れたコンポーザーは、優れたシンガーを輩出するエンジンとなるか」

2026.10.28 20:00

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音楽制作からパフォーマンスまですべてを担うスタイルもあれば、作詞・作曲・編曲・歌唱・演奏・パフォーマンス…が各々分業されているスタイルもある。どれが正解とか、どれが上位とか、何が理想という話ではないが、ゲスト参加/コラボレーション/フィーチャリングといった音楽の交流は、大いなる刺激を促したり、思わぬケミカルを起こす起爆剤になったりもする。

今回は作品によって最適なボーカリストを起用するアーティストの作品に注目してみよう。コメンテーターはTuneCore Japanの野邊拓実、そして進行役はいつもの烏丸哲也(BARKS)である。

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──今回ご紹介したいのは、ちゃもろめという東京在住のアーティストです。前回は音声合成ソフトを用いて楽曲を発表しているけいじぃというボカロPを紹介しましたが、ちゃもろめさんは、逆にボーカルには歌い手を起用している方です。いろんなVSingerやVTuberが参加しているんですが、どの曲もかっこいいんですよ。

──この曲もいいですよね。歌っているのはたゆらです。ちゃもろめとたゆらによって完成となった楽曲を聴くと、syudouが「うっせぇわ」を書きAdoが世を席巻した現象を思い起こします。今の時代、優れたコンポーザーというのは、優れたシンガーを発掘するエンジンにもなっているのでは、と思いました。

野邊拓実(TuneCore Japan):現代って本当にいろんな活動形態があると日々思っています。以前はボーカリストとトランペットという形態(「M-SPOT」Vol.066「今後も増える?今までなかったメンバー構成のバンド」)みたいな例を紹介させていただいたりしましたけれど、既存の楽器編成だったりメンバー構成にとらわれないやり方がどんどん出てきていますよね。1番フレキシブルな形ってパーマメントなメンバーは自分だけで他はサポートというスタイルですけど、制約がないので選択肢がすごく広いと思います。飽きさせない工夫というか、飽きさせない構造になっていたりしていて、凄くいいですよね。

──高い楽曲制作能力に長けたコンポーザーが、魅力的なシンガーとコラボするという流れは、メジャーシーンのみならず、インディペンデントアーティストの中でも着実に根付いてきているんですね。

ちゃもろめ

野邊拓実(TuneCore Japan):バンドの場合、ボーカルというのはアイデンティティの代表格ですから、その人の声であればすなわちそのバンドということになりますよね。そういう意味では、ボーカリストが固定されていないというのは逆転の発想でもあるので、本来はめちゃくちゃ難しいことだと思うんですけど、活動としてはやりやすいんですよ。音楽だけの話で言えば、どんな曲を作ってもいい。

──バンドというのは、良くも悪くもその制約が個性を育むわけですが。

野邊拓実(TuneCore Japan):僕、最近新しいバンドを組んだんです。ギター、ベース、ドラム、ピアノ、ボーカルっていう5人のバンドなんですけど、曲によっては「この曲、ギターいらないかも」みたいなことを思うっちゃうことがあるんですけど、でもそれをやってはいけないわけですよね、うちにはギタリストがいるんだから。

──まあ、そうですよね。

野邊拓実(TuneCore Japan):そういう思いってソロの時には全くなかったから、「この曲はギターなんか出てきません」とか「この曲はトラックとボーカルだけです」みたいなこともできるわけです。制約がなくて自由度がめちゃくちゃ高いからこそ、同じような曲を作らないような多様性に目が向きやすかったんですよ。

──ソロはしがらみとも無縁ですし。

野邊拓実(TuneCore Japan):ただ、作品ごとに違いを出していくと、今度は何か共通のアイデンティティがないと、自分印のブランドが付きにくくなるという事態に陥る。そうなると今度は「自分のアイデンティティってなんだろう」みたいなことをすごく考えたりするんです。逆にアイデンティティはあるけどマンネリしないようにあの手この手を考えたりと、内省がすごく進むんですね。なので、音楽をずっとやってきているちゃもろめさんも、そういうことを考えていたりするんじゃないかと思ったり。

──もう今は、バスが起こるきっかけもわからない時代ですから、素敵なシンガー達と数多くコラボするのも良策のひとつと思います。

野邊拓実(TuneCore Japan):随分前の話ですけど、「こういうの、やっていいんだ」って思ったのが、ダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」で、ファレル・ウィリアムスみたいなアーティストとやったのが結構衝撃だったんですよね。

──わかります。おまけにナイル・ロジャースがギターを弾いちゃったりして、誰が主役なのかわかんない感じ。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうそう、その感覚ですね。ボカロPに限らず、コンポーザーとしてアイデンティティを見い出して、コラボレーションだったりゲストを呼んだりすることがスタンダードなスタイルになってきています。

──「ゲット・ラッキー」はその理解を促したというか、いいものに制約は不要ということを知らしめた気がします。時代によって価値観も変わり常識も非常識も変わっていきますから、自由な発想は大事ですね。1970年代のロックバンドなんて、全て自分たちだけで完結することに最大の価値だったわけですし。

野邊拓実(TuneCore Japan):「他者が入ってくること」=「ノイズ」、みたいな感覚ですか?

──というかプライド…かな。「ゲストが入る」=「自分たちの実力不足」みたいな。そういう価値観でした。

野邊拓実(TuneCore Japan):そうか、そうですよね。コライト文化も日本ではまだまだ根付いていないですよね。「ゲット・ラッキー」は楽曲制作者とシンガーとのコラボなので、コライトとは言えないかもですけど、それぞれのアイデンティティを持っている同士が共同で何かひとつのものを作るっていうものが増えてきている例だとも思います。すごくいいなって思いますね。それこそsyudou×Ado=「うっせぇわ」みたいな、アーティスト同士が一緒に作っていくことが増えていけばいいですね。

ちゃもろめ

はじめまして。ちゃもろめです。 音楽を作っていきます。
https://www.tunecore.co.jp/artists/chamolome

協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.

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