【インタビュー】エリック・グロンウォール、ハード・ロックの今を代表する魂のボーカリスト来日決定

マイケル・シェンカーがUFO在籍時代の名曲の数々を、豪華さと意外性のあるゲスト陣とともに再構築したアルバム『MY YEARS WITH UFO』に伴うツアーのために来日したのは去る1月下旬のこと。そこで若々しいエネルギーを撒き散らしながら、音楽的にも世代的にもまったくギャップのないパフォーマンスを披露していたのがエリック・グロンウォールだった。
H.E.A.T.の二代目フロントマンとしての活動歴を経たのち、白血病と診断されて骨髄移植手術を受け、復調後まもない2022年にSKID ROWのボーカリストに抜擢されながらも翌年のツアー中に体調を崩し、同バンドの一員としての日本上陸も叶わずに終わるという紆余曲折があっただけに、シェンカーの横でUFOの名曲群を歌う彼の溌溂とした躍動感には、それだけで感動的なものがあった。
そしてこの11月には、ついにそのエリックにとって初となるソロ名義での来日公演が実現する。これはもちろん先頃リリースされたソロ・アルバム『BAD BONES』を携えてのツアーの一環としてのものだが、それに向けての意気込みを本人の口から訊くべく、7月下旬にリモート取材を実施した。彼は5月25日にストックホルムのCIRKUSという会場でこのアルバムの発売記念ツアーをスタートさせ、母国スウェーデンの各都市を巡演してきたばかりだった。まずはそのツアーでの手応えから訊いてみることにしよう。
――今はちょうどツアーの狭間にあたる時期のようですね。ここに至るまでの手応えはどんな感じですか?
エリック・グロンウォール:すごくいい感じだよ。ソロ・アルバムを出すと決めた時、まずエージェントやマネージメントと相談したのは「ツアーをどこから始めようか?」ということだった。そこで名前が挙がったのがCIRKUSだったんだ。すごくいい会場で、そこでやれること自体はとても嬉しかったんだけど、実は不安も抱えていた。というのも、その話を決めた時点ではまだアルバムも完成していなかったし、バンドも無くて、何も準備できていなかったからね。ところがいざチケットが発売されるとその日のうちに完売になり、追加公演を決めたらそっちも売り切れた。それによって僕には、そのライブまでに絶対にアルバムを完成させるっていう目標ができたんだ(笑)。ただ、まさに「金曜日にアルバムが出て、週明けの月曜日からツアーが始まる」という日程だったから、どれだけの人がちゃんと新曲を聴いて来てくれるかは想像もつかなかったんだけど、いざ蓋を開けてみればみんな何度も聴き込んできたのがわかるほど歌ってくれていたし、シングル以外の曲もちゃんと知ってくれていて、正直、期待以上の反応に驚かされたよ。お陰様でツアーはそれ以来ずっといい感じで続いてきた。本当に楽しめているんだ。

――このソロ・アルバムを世に出すこと自体があなたにとって長年の願望のひとつだったはずです。あなたがどれほどその機会を待ち望んでいたかを、改めて訊かせてください。
エリック・グロンウォール:2010年に『SWEDISH IDOL』(母国のオーディション番組)で優勝した後、最初のソロ・アルバムをメジャー・レーベルからリリースさせてもらえた。ただ、当時の僕にはすべて周りから言われるままにやるしかなくて、戸惑いの連続だった。ソロ・キャリアのスタートとしては決していいものではなかったと思う。その後、H.E.A.T.に加入して10年間を過ごし、さらにはSKID ROW、マイケル・シェンカーとも活動してきた。そうした長い流れを経たうえで、改めて自分がソロ・アーティストとしてどんな音楽をやりたいのかを探ってきたんだ。そして実際それを今回の作品でやれていることについて、大きな充実感を味わえているよ。僕自身、今ほどステージの上で自信が持てていたことはなかったし、本当に「100%ステージを支配できている」って実感できている。そんな気持ちでステージに立てるのは喜びでしかない。もちろんどんな人間にだって調子の悪い日もある。だけど、たとえ喉の調子が良くない場合でも、ステージは楽しめているんだ。そう感じられていること自体が、すべてが上手くいっていることの証しだと思う。だから今は、その素晴らしい瞬間をファンと一緒に楽しみたい。本当にすごくいい状態にあるのが自分でもわかるんだ。

――あなたのボーカリストとしての対応力の素晴らしさを知ってはいても、あなた自身が主導した形でアルバムを作ったらどういうものになるのかを想像できずにいたファンは少なくないはずです。実際、この『BAD BONES』は、あなた自身を体現するものになっていると思いますか? このアルバムのどんな点に自分らしさが色濃く出ていると思っていますか?
エリック・グロンウォール:タイトル曲の「Bad Bones」がまさにすべてを言い表していると思う。5年前に病気をして以来、自分の中で整理して、みんなに話さなければならないことを当然のようにたくさん溜め込んできた。それを伝える手段が音楽だったんだ。同時にこの「Bad Bones」は僕自身をよく表した曲でもある。僕は権威に従うのが得意じゃなくて(苦笑)、何事にも疑問を持ってしまうタイプなんだ。もちろん相手への敬意を忘れることはないけど、自分として疑問を感じることがあった場合には、それを口にする。それって重要なことだと思うんだ。学生時代、「この勉強をしなさい」と言われても、自分は将来的に音楽をやっていきたいと思っていたから「何故これを学ばなきゃいけないんだ?」と訊かずにはいられなかった。「Bad Bones」はまさにそんな自分という人間を表す曲になっている。とはいえ僕はそこに立ち止まってはいないし、実はすでに次のアルバムの制作も始めているんだ。今の僕としては、とにかく曲を書き、発表し、ツアーを続けていきたい。ある意味、ここがひとつのスタート地点、しかもすごくいい出発点だと思えているんだ。それは、どこか違うところに向かっていくうえでの分岐点でもある。着地点がどこになるのかは、自分でもまだわからない。大切なのは、自分が心からいいと思える音楽をリリースし続けること。もしも納得できていない曲なら歌うことはないし、発表することもない。
――今年の1月、マイケル・シェンカーとの来日公演は本当に素晴らしいものでした。日本における長年のマイケル・ファンにとっても、UFO時代の楽曲を武道館で聴くことは夢のひとつだったといえるはずです。あなた自身、あのツアー及び武道館公演を通じていちばん印象に残っているのはどんなことですか?
エリック・グロンウォール:何と言っても武道館で演奏できたこと。あのツアーのハイライトはそれに尽きるよ。しかもマイケル・シェンカーと一緒にね。彼が日本でいかにレジェンドとしての地位を確立しているかを目の当たりにできたことも含め、本当にすべてが素晴らしいツアーだった。僕自身、ああいうクラシックなロックンロールが大好きなんだ。正直、マイケルと一緒にやることになるまで、UFOの昔の曲はろくに知らなかった。もちろん「Doctor Doctor」だけは例外だけどね。あの曲を知らないやつなんていないはずだろ(笑)? ただ、今では車を運転している時も、いつもUFOを聴いてたりするくらいなんだ。マイケルが僕を選んで仕事を託してくれたのは本当に光栄なことだったし、本当に素晴しい経験をさせてもらえたと思っている。あのツアーはすべて録音もしたんだ。とにかく最高だったよ。

――確かにあなたは、マイケル在籍期のUFOをリアルタイムで知るには若過ぎますよね。ただ、いわゆるクラシック・ロックに精通していることはライブで往年のさまざまな楽曲をカバーしていることからもわかります。そういった音楽に興味を持つようになったきっかけは何だったんでしょうか?
エリック・グロンウォール:親父からの影響さ。父は1970年代にミュージシャンとしてスウェーデンで活動していた。両親は離婚していたけど、8歳の頃は親父の家によく泊まりに行っていたんだ。彼がフェンダーの青いギターでパッツィ・クラインやエルヴィス・プレスリー、リトル・リチャード、CCRといった人たちの曲をよく弾いていて、そうした音楽を聴きながら俺は育ったんだ。いわゆる1950年代、1960年代のロックンロールだよね。その後、高校生になるとハード・ロック好きな友人たちと出会い、1970年代、1980年代、1990年代のロックを聴くようになっていった。ただ、何故かUFOについては聴きそびれていたんだけどね(笑)。
――あなたは、過去にはライブでBLACK SABBATHの「Headless Cross」なども歌ってきましたよね?
エリック・グロンウォール:うん。僕は、歌うのが難しい曲にチャレンジするのが好きなんだ(笑)。だからSKID ROWの曲を歌うのも大好きだ。シンプルなのに、ものすごいエネルギーがあるしね。これまでの人生を通じて気付かされたのは、どうやら僕が何事についても全力で取り組まないと気が済まないタイプの人間だってことだね。元々エネルギー過多なのは自覚しているんだけど、じっとしていると、なんだか怠けてるような気がしてしまうんだ。だから常に動いていたいんだ(笑)。
――THE ANIMALSなどのヴァージョンでお馴染みの「The House Of Rising Sun(朝日のあたる家)」もよく歌っているようですね。あの曲については?
エリック・グロンウォール:あれも親父がよく弾いてた曲なんだけど、「お馴染みの曲を原曲よりもダークなバージョンでカバーする」というYouTubeのシリーズ企画でやってみた曲のひとつでもあるんだ。YouTubeは僕にとっての遊び場みたいなもので、そういったいろんなことを試して楽しんでいるよ。キーボード担当のヨナにアレンジしてもらったんだ。自分でもいい感じに仕上がったとは思っていたけど、まさかあそこまでバズることになるとは思ってもみなかった。今ではすっかりライブのレパートリーになっているよ。
――他にもお気に入りのカバー曲がいくつかありそうですね。
エリック・グロンウォール:「Black Velvet」(アラナ・マイルズの1989年のヒット曲)はかなり気に入ってるよ。あとは「I Will Always Love You」(ホイットニー・ヒューストンが1992年にカバーして大ヒットさせたドリー・パートンの楽曲)かな。さっきも言ったように、歌うのが難しい曲に挑戦するのが大好きだからね。「I Will Always Love You」についてはライブでも何度か歌ったことがある。この先やるかどうかはわからないけどね(苦笑)。自分なりの歌にすることができて、それがバズったなら、単なるカバーではなく「自分の曲にできた」と思えるし、それをライブで歌うこともやぶさかじゃない。だけど単にコピーして歌うっていうのは、YouTube程度なら構わないけど、ライブでやるべきことじゃない気がするな。あ、そういえば最近はDEEP PURPLEの「Highway Star」をライブで歌っていたりもするんだ。とにかく盛り上がる曲だし、ギター・ソロの間、僕はクラウドサーフを楽しんだりもするんだ(笑)。
――カバーのレパートリーは今後も広がっていきそうですね。ところで肝心の話です。11月にはついに日本でのソロ公演が行なわれます。これまたあなたの長年の願望のひとつだったはずです。どんな想いでこの実現を待ち焦がれてきましたか?
エリック・グロンウォール:まさに胸がいっぱいというか、まさか日本でソロ公演ができる日が来るなんて思ってもみなかった。いまだに「これって現実なのか?!」という気分だよ。僕の音楽は、何もないところから自分で作り上げたものだから、愛着もひときわ強いんだ。今はとにかく大きな情熱をもって日々を過ごしている。11月に日本に行けること、初めてのソロ公演をやれることを本当に楽しみにしているし、これがさらに素晴らしいことの始まりになればいいなと願っている。
――日本公演はどんな内容になりそうですか? 当然『BAD BONES』からの楽曲はたっぷり披露してくれるはずですよね?
エリック・グロンウォール:もちろんさ。加えて、これまでのキャリアからも選曲する予定だよ。マイケルと日本に行けたことを考えれば、UFOの曲をやってもいいんじゃないかとも思えるし、SKID ROW時代の曲も、H.E.A.T. 時代の曲も少しずつやる予定だ。とはいえ中心になるのは新しいソロ・アルバムからの音楽だ。「Highway Star」をやるのもいいかもね。
――サプライズを期待していますよ。日本にはもちろん現在のツアーに同行しているメンバーたちと一緒に来るんですよね? 今は、ライブを重ねるごとにバンドがタイトになっているのを感じているのでは?
エリック・グロンウォール:ああ、いい感じだよ。この前、僕がずっとスマホをいじっていたもんだから「誰と話してるの?」って妻から言われて「バンドの連中だよ」と答えたんだけど、「あなたがこんなにも頻繁に連絡を取り合ってる人たちなんて、初めてじゃない?」って言われてしまったよ(笑)。実際、僕らは何でも話すし、いつもメールし合っている。「みんなが家に帰ってしまったんで寂しいよ」なんてね(笑)。バンドもクルーも本当に仲がいいんだ。実際、このバンド/プロダクションを立ち上げた時、僕が目標としていたのがこの状況だった。コンサートやフェスに出演して、その会場を去る時、プロモーターやファンのみんなから「なんて一緒にやっていて楽しい連中なんだ。また一緒にやりたい」って思ってもらえるチームでありたい、というのがね。ポジティヴなエネルギーを届けて、みんなで楽しむ。それが僕という人間なんだ。実際、それを実践できていると思うし、音楽的にも成長できていると思う。
――日本とはこれまでにも縁のあるあなたですが、過去の日本滞在時の体験を通じていちばん印象的だったことというと何でしょうか?
エリック・グロンウォール:BUDOKAN!!(笑)、あと、東京で一度、合気道をやったことがあって、あれもすごく楽しい体験だった。それから、スウェーデン人に訊けばきっとみんなこう答えると思うけど、日本に来たら絶対欠かせないのはKARAOKEだね(笑)。

――あなたとカラオケに行くのは楽しそうですね(笑)。そういえば武士道に関心があるそうですが、それは合気道を経験したこととも関係があるんでしょうか?
エリック・グロンウォール:というか、病気になった時に、自分なりの武士道みたいなものを持ちたいと考えたんだ。武士道とはすなわち、その人が生きていくうえでの指針であり行動基準。つまり、それに従って生きていきたい、というものだよね? 自分にとって大切なものを理解し、その価値観に従って生きるというのは、とても健全な生き方だと思う。人との接し方や自分自身との向き合い方、敬意や誠実さ、勇気を知ること…そうしたすべてが重要だけど、僕にとっていちばん大事なのは健康であり、その次が家族や友人だ。自分自身が健康状態を享受できていれば、家族や友人を支えることもできるし、いくばくかでも世の中に良い影響をもたらすことができるはずだと思う。ただ、その大切さの順番を間違えちゃいけない。そして僕にとって健康を維持するうえでマーシャルアーツはとても大きな存在だ。気持ちを落ち着け、集中させるという部分において、それが大きな効力になっているのは間違いない。武士道という文化、考え方そのものが本当に好きで、それが僕自身が日本が大好きな理由のひとつにもなっているんだ。
――何かスポーツ経験はあるんですか? つい先日まで世界の話題の中心はサッカーのワールドカップでしたけど、スウェーデンの試合を観た日本のファンの中には、Xに「エリックみたいな選手がたくさんいる」なんて書き込んでいる人もいたようですよ(笑)。
エリック・グロンウォール:マジで? きっとブロンドの選手が多かったんじゃない?(笑)実際、僕自身も子供の頃はサッカーとアイスホッケーをやっていたんだ。でも11歳で柔道を始めてからは、ずっとマーシャルアーツひと筋だよ。柔道、合気道…それからボクシング、カンフーとかもね。

――こうして話を聞いていてもあなたは元気いっぱいですが、ファンはあなたの健康問題についても気にかけています。マイケル・シェンカーとの来日時のパフォーマンスの素晴らしさからも、現在のあなたが不安のない状態にあることは伝わってきましたが、実際のところ、ライブ活動を継続していくうえではもう心配のない状態にあるんでしょうか?
エリック・グロンウォール:うん、それはもう大丈夫。そう思えるようになったのも、実はマイケルのおかげなんだ。彼からヨーロッパ・ツアーに誘われた時、僕は自分の病気のこと、SKID ROW時代に体調を原因にライブをキャンセルせざるを得なくなったことを正直に伝えた。すると彼は「心配しなくていい。万が一、何かあった時のために、すぐに代わりを務められるシンガーを用意しておくから」と言ってくれた。そのおかげで、安心してツアーに臨むことができたんだ。何よりいちばん辛いのは、ライブをキャンセルしなければならない時だ。楽しみにしてくれていたファンはもちろん、バンド、クルー、プロモーター、すべての人をがっかりさせてしまうことになる。仕方のないこととはいえ決して気分のいいことじゃないよね。だけどマイケルはその一言で僕に「大丈夫だ」と思わせてくれたし、だからこそあのツアーに賭けてみることにしたんだ。そして結果、最高に上手くいった。僕は自信を取り戻すことができたし、2021年以降はずっと健康を維持してきた。免疫力も回復しているんだ。トレーニングもしているし、マーシャルアーツも続けている。ありきたりな言い方に聞こえるかもしれないけど、本当にこれまでで最高に強い自分になれていると思えているんだ。だからもう心配は要らないし、大丈夫だよ。

――その言葉を聞けて嬉しく思います。最後に、ジャパン・ツアーを楽しみに待っている日本のファンへのメッセージを。
エリック・グロンウォール:日本に戻れるのを本当に楽しみにしている。H.E.A.T.の頃から応援してくれてるみんな、そして残念ながらSKID ROWでは日本に行くことが叶わなかったけど、マイケル・シェンカーとのツアーに至るまで僕のことをずっと応援し続けてきてくれたみんなには、本当に感謝しているんだ。どうもありがとう。エリック・グロンウォールがどんなアーティストであるのかをみんなに見てもらえるのが本当に楽しみだ。だからこそチケットをソールドアウトにして、最高の夜にしたいと思ってる。どっちにしたって最高の夜になることは確実だけどね。もうすぐそっちに行くから是非この機会に会おう。
取材・文◎増田勇一
写真◎Christian Schneider
<ERIK GRÖNWALL BAD BONES JAPAN TOUR 2026>







