【コラム】白と黒の境界を描くNakamura Hak

Nakamura Hakは、“白”や“光”を表現するときにもその裏にある“黒”や“絶望”を、“黒”や“苦しみ”を表現するときにもその裏にある“白”や“希望”を、常に見つめ続けているのかもしれない。
1stシングルCD「ただ美しい呪い」のリリースを記念して6月13日24時より無料配信された、彼女にとって2度目となるオンラインライブ<ONLINE-LIVE「 境 界 」>を視聴しながら、そんなことをぼんやりと思った。
2026年5月に1st EP『白は夢』にて、FACTやNikoんを輩出したレーベル「maximum10」からデビューを果たした、田園調布生まれの会社員でありシンガーソングライター。長い髪や大きなフードで顔は隠され、情報はほぼ明かされていない。同作収録の「善と悪」がTVドラマ『るなしい』オープニングテーマに起用され、TVアニメ『とんがり帽子のアトリエ』に提供した3曲がすべて同アニメのエンディング主題歌に採用されるなど、無名の新人ながらに大きなチャンスを勝ち取っている。
彼女が話題を集める理由のひとつに、すべてにおいて異端であることが挙げられるだろう。その代表例が、音源はすべてアコースティックギター弾き語りの一発録りで、加工、修正、編集などを一切行わないという点だ。2020年代には珍しい、正真正銘のライブレコーディングである。そのためドラマやアニメの短尺バージョンもフル尺音源をエディットしたものではなく、新たに録音した個別の音源を提供している。
これまでの常識から言えば、映像作品の主題歌が完全なる弾き語りというのもほぼ無いに等しい。華やかでカラフルな映像の迫力と、アコースティックの音数の少なさや音圧の低さの整合性が取りにくいからだ。ではなぜNakamura Hakはそれを成立させてしまうのか? その答えは、彼女の作る楽曲、彼女が弾くギター、彼女の歌声それぞれがすべて高い濃度を誇っていることと、それらが作り出す物語の奥行きにある。
彼女の楽曲は、本音や深層心理、自分の目線から捉えた世の中を抒情的かつ躍動的に描いた歌詞と、人の手により奏でられたぬくもりを帯びたアコースティックな音色、息を呑むほどの緊迫感が交錯するアルペジオやストロークなどの多彩な奏法による音像で構成されている。それを生々しく映し出すのが、時に心に受けた傷があらわになるような、時にその傷を優しく包み込むような情感豊かな歌声である。それらが合わさることで、非常に多面的な世界が生まれる。聴き手側が重苦しい気持ちを抱えているときに聴けば歌詞や歌声が感情にフィットして激しい共感の念が生まれ、哀愁に満ちているときに聴けばセンチメンタルで優しいアルペジオが癒しとして染み入り、鋭気が湧いているときに聴けば高速ストロークやスリリングなボーカルはほとばしるエモーションとして聴き手の心を奮い立たせるだろう。さらに聴く環境によっても、受け取り方が変わってしまう。それを実感したのが<ONLINE-LIVE「 境 界 」>だった。
初のオンラインライブ<TOKYO NODE × maximum10 pre. Plugless Live>は、地上46階からの東京の夜景をバックに歌うというシチュエーションが、彼女の抱える孤独感を強調していた。だが<ONLINE-LIVE「 境 界 」>は左右、背面、底面を囲う大型4面LEDスタジオBLACKBOX³という環境をフルに使い、VJとの競演で、彼女が日々感じている社会との摩擦を描いているようだった。ギターの弦を押さえ、つま弾くNakamura Hakの指は煤けていて、「砂のお城」で描かれた“苦しみも不条理も知る分だけ灰を増す自分”を体現するようだ。白い空間はたちまち“やる気のない”黒い雪が降り注いだり、“真っ黒な土”に覆われたりなど、歌詞の描写をリアルに立ちのぼらせた映像効果は、音楽に宿るエネルギーを見事なまでに可視化させた。
彼女の音楽の舞台は夜である。夜は様々な顔を持っている。太陽が出ている時間には抑えられていた感情が暴れ出すこともあれば、昼間の心身の疲労感から心地好い眠りに就くこともあり、孤独に飲み込まれることも、晴れやかな夢の入り口にもなり得る。星の輝きは夜にしかお目にかかれなければ、普段なら埋もれてしまう本音や音に気づくこともできる。光も闇も、白も黒も、終わりも始まりも近くに感じることができる時間だ。
白と黒が交錯する映像効果と、そのなかでただただまっすぐ自身の音楽に向き合う彼女の姿は、彼女の楽曲に宿る“白”と“黒”を表出させた。彼女の吐き出す苦しみは光を求めているからこそ湧き上がるものであろう。そして光にさらされすぎた身体をクールダウンさせるために暗闇でその傷を癒しているようにも感じ取れた。
思い返せば「善と悪」のリリース時に「白とは、削除された黒である。」というキャッチフレーズとともに彼女の足元の写真が公開された。その写真は白と黒という相反したものを組み合わせながらも、黒なのか白なのかの判断が難しい、境界が曖昧なものだった。「善と悪」や「ただ美しい呪い」といった楽曲タイトルにも、その精神性を感じる。
世間的に悪やおぞましいとみなされているものも己の善や美学に従った結果なのかもしれず、それらを過剰に追い求めすぎた結果誰かを傷つけることもある。<ONLINE-LIVE「 境 界 」>にて黒く覆われた空間で歌う彼女の歌声は光のように輝いており、真っ白な空間で彼女を凛と際立たせたのは彼女の影だった。黒と白は表裏一体で、どちらが表か裏か定かではない。湧き上がる衝動と、広い視野から生まれる冷静さ、それらがどちらも存在することが彼女にとってのリアルなのだろう。
つまりNakamura Hakの音楽は、彼女の捉えた様々な“夜”を封じ込めたもので、そこには彼女がその夜に至るまでの生活や、心の動きなども含まれている。ゆえに聴き手それぞれはもちろん、聴き手の状況や精神状態によって捉え方が変わると想像する。だからこそ彼女の過ごした夜を音楽でもって追体験することで、あなたがどんな感情になるのか体感してもらいたい。その湧き上がった気持ちの向こう側には、自分自身に対する新たな気づきが生まれるはずだ。
TVアニメ『とんがり帽子のアトリエ』のエンディング主題歌3曲は打ちひしがれるような絶望感と、それを抱えながらも光を追い求めようとする姿が刻まれる。書き下ろしのタイアップ曲ともあり、作品が彼女の音楽に新しい観点を与えたと言っていいだろう。自身の心の奥へと深く潜り続けた彼女が、その深度を保ったまま広がりを見せていく、その第一歩として相応しい白と黒の境界である。さらなる進化を予感させるNakamura Hak。彼女がありありと描く夜の色に、あなたが心の奥に隠し持っている感情を重ねてほしい。
文◎沖さやこ
◾️1st Single CD「ただ美しい呪い」
2026年6月10日(水)リリース
CTCM-65137 / ¥1,320(税込)
EC:https://maximum10.lnk.to/NakamuraHak_001
全曲試聴映像:https://youtu.be/KFxDFvnJ2ew
〈収録内容〉
1.ただ美しい呪い / TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」エンディングテーマ
2.夜に浮かぶ / TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」第3・5話 エンディングテーマ
3.光り / TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」第8話 エンディングテーマ
4.ただ美しい呪い – Anime ver.
5.夜に浮かぶ – Anime ver.
6.光り – Anime ver.
〈先行デジタル配信〉
Debut Digital SG「ただ美しい呪い」配信中
Streaming/DL:https://maximum10.lnk.to/nakamurahak_str_tadautsukushiinoroi
Music Video(Anime ver.):https://youtu.be/OXeF_qXb3do
2nd Digital SG「夜に浮かぶ」配信中
Streaming/DL:https://maximum10.lnk.to/nakamurahak_str_yoruniukabu
Music Video(Anime ver.):https://youtu.be/ppq5i9HAHfE
「光り」Music Video 公開中(サブスク含めデジタル音楽配信はしておりません)
Music Video(Anime ver.):https://youtu.be/K-a399qldGI
◾️1st E.P. (CDのみ)「白は夢」
CTCM-65136 / ¥1,650(税込)
CD通販:https://maximum10.lnk.to/NakamuraHak_001
※初回生産限定盤/封入特典:CD購入者は無料で入場できる全国ツアーの応募券(先着順)
〈収録内容〉
1.十七
2.白は夢
3.刃物と月
4.砂のお城
5.居無
6.善と悪 / テレ東系ドラマ「るなしい」オープニングテーマ(BONUS TRACK)
7.善と悪 – Drama ver.(BONUS TRACK)
◾️オンラインクラブ「NOT A LOT」

Nakamura Hakのジャケットやキービジュアルを手掛ける「YKBX」をクリエイティヴディレクターに迎え、会員限定のイベント開催や完全受注生産アパレル販売を行うオンラインクラブ「NOT A LOT」。
現在、12ヶ月プランで入会した方、先着300名にYKBXデザインTシャツをプレゼントするキャンペーン実施中。
入会はコチラから:https://fanicon.net/fancommunities/7236
◾️<Plugless(Out-store)Live Tour「異端」>

2026年9月13日(日)【東京/下北沢】DY CUBE
2026年10月18日(日)【京都】音まかす
2026年10月25日(日)【愛知/名古屋】RAD mini
2026年11月1日(日)【北海道/札幌】Space Art Studio
2026年11月8日(日)【新潟】WOODY
2026年11月15日(日)【宮城/仙台】BARTAKE
2026年11月29日(日)【大阪】雲州堂
2026年12月13日(日)【岡山】表町シェルター
2026年12月20日(日)【香川/高松】RUFFHOUSE
2027年1月17日(日)【福岡】public space 四次元
2027年1月24日(日)【島根/松江】MUSIC BAR Birthday
2027年1月31日(日)【東京/下北沢】WAVER
全公演 17:30 開場 / 18:00 開演
CD「白は夢」の購入者は無料入場できるアウトストア・ライブ
※ 各会場、定員に達し次第〆切 / 先着申し込み順
※ 申込方法などの詳細は、CDの封入チラシに記載







