▲産婦人科医のDr.Tことサリー=サリヴァン・トラヴィス(リチャード・ギア)は、ルックスよし、性格よしのモテモテ男。病院は連日、彼に診察、と言うより彼に会いに来る患者が次々と押しかける大盛況ぶり。サリーには妻ケイト(ファラ・フォーセット)と、ディディ(ケイト・ハドソン)とコニー(タラ・リード)のふたりの娘がいるのだが、ある日ケイトが突然精神を病み、療養施設に入れざるをえなくなる。そんな時サリーは、ゴルフのアシスタント・プロのブリー(ヘレン・ハント)と出逢い、惹かれ、恋に落ちる。すると今度は、結婚間近のディディにレズビアン疑惑が。さらに、ケイトが離婚を申し出てきてサリーは大混乱。そんな状況のまま、ディディの結婚式当日を迎えるのだが…。
2001年12月15日より、日比谷スカラ座2にてロードショー! ●監督/ロバート・アルトマン ●脚本/アン・ラップ ●出演/リチャード・ギア、ヘレン・ハント、ファラ・フォーセット、ケイト・ハドソン、リヴ・タイラーほか ●上映時間/122分 |
サウンドトラック「Dr.Tと女たち」 CURB-DENON RECORDS COCB-53008 2001年12月8日発売 2,625(tax in)
1Dr.Tのテーマ 2オープニング・クレジット 3モール・ウィメン 4ファウンテイン 5ブリー・シャッフル 6ゴフル・カート・ラヴ 7ブライダル・シャワー 8ソー・グッド・アップ・トゥ・ナウ 9メイド・アップ・ハー・マインド 10レディ・オブ・ザ・レイク 11Dr.Tのテーマ(リプリーズ) 12スクリーン・ドア 13ウェディング 14ゴー・アウェイ・ウィズ・ミー 15クラッシュ 16エイント・イット・サムシン
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| 気まぐれ。勘が鋭い。計算高い。したたか。難しい。貪欲。とにかく強~い!――「女は○○○」の○に入る文句を考えてみたら、パッと浮かんだだけでもこれだけあった。試しに「男は○○○」を考えてみると、思いついたのはたったひとつ、消耗品。ダメだこりゃ。
こんな自分は、これまで生きてきた30余年というもの、ロクな女性体験をしたことがない哀れ者ということか……。トホホな話だ。そういえば以前、美輪明宏がどこかで、「男が女にかなうものなど、もともと何もない。だから、神は男に腕力を与えたのよ」と語っていて、ぼくは膝を叩いて納得してしまったっけ。やっぱりトホホな話だ。
▲幸せで満たされすぎたがゆえに精神が病んでしまった妻ケイト(ファラ・フォーセット)と、Dr.T(リチャード・ギア) | しかし、そんな天下無敵な女性軍がひれ伏してでも欲しがる男というのも、世の中にはたくさんいらっしゃるわけで、ハイ。この映画の主人公のDr.Tことサリーがそう。クールでハンサムで、女性にめっぽう優しく、おまけに金持ちときたらしょうがない。患者、看護婦を含めてサリー目当ての女、女、女であふれ返る病院の光景は、かなり異様。産婦人科ということもあって、まるでご婦人がた御用達の風俗店(!?)の様相だ。だがしか~し、しょせん男は男。そして、女はどこまでも女。この映画は、笑いの中でそれを痛感させる。
▲レズであることを隠し、結婚する長女ディディ(ケイト・ハドソン)とヴァージンロードを歩くDr.T。 | 仕事でさまざまな欲望を抱えた女たちに翻弄され、私生活でも、妻が精神的に病んでしまった上に離婚を求めてきたり、結婚を控えた娘のレズビアン疑惑(娘はケイト・ハドソン、レズ相手はリヴ・タイラーの豪華キャスト。でも絡みが少なすぎるぞ!)が発覚したり、唯一の心の拠りどころだった恋人(愛人)とも思うようにことが進まなかったり……と、今作ではあらゆる苦難、いや女難に見舞われるサリーの人生がコミカルに描かれていくわけだが、そこからは何と言うか、女性という生き物の怖さみたいなものが、ジワリジワリと伝わってくる。要は、非の打ちどころのないモテモテ男にかかっても、結局は女のほうが1枚も2枚も上手だということ。それでも、いや、だからこそ、男は女を追いかけたくなるのだということ。そんな男女の滑稽な在りようを、改めて実感させられてしまう。サリーの娘の性癖がバレるのを発端に、結婚式がハチャメチャになってしまう、ドリフ『全員集合』のオチのようなシーンが何とも象徴的。もう降参、笑うしかないのだ。
▲Dr.Tの心の拠りどころのはずなんだけど、実は…のブリー(ヘレン・ハント)と、Dr.T。 | ラストでも、とある土地でやっぱり女たちに囲まれ、やっぱり出産の世話をしてしまっているサリー。だが、そこで彼の手によって産まれてくるのは、立派なモノをぶら下げた男の子。サリーはなぜか大笑いをする。ここでサリーはやっと、女から開放されたという図式なのだろう。でも、産んだのは女。そう、男は女から産み落とされるのだ。どうあがいたって、かないっこないか……。そんな、偉大なる女性への多大なる尊敬と諦め(笑)の念を、いっそう強くした映画だった。
ちなみに劇中の音楽は、ライル・ラヴェットによるカントリー/ブルースもの。特にラヴ・シーンでフィーチャーされている楽曲などは、かなり渋いのでチェックを。 |
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