陰陽座、『魔王戴天』インタビュー
陰陽座 魔王がごとく天に昇りて世を統べる
ヘヴィメタルの頂点を極める快心の一作『魔王戴天』をリリース
■インタヴュー
瞬火:このアルバムの構想は、もっと遥か前に固まっていたんです。だから2006年は制作に入ってもよかった。でも、とにかく1年間ライヴをやり倒してみよう。そうすれば、何か大きなものが得られるだろうということで、ライヴを優先したんですね。ツアーに出ると、途中で新曲のことについて考えたりとかしないんです。頭は完全にライヴモードにシフトしているので、1本1本のライヴに集中してます。それらが完全に終わってから、頭をアルバム制作に切り替えるわけです。もちろん、ツアーで得たものがアルバムに反映されるので、両者は地続きなんですけどね。
黒猫:知らされたのはツアーが終わってからです。瞬火がちゃんと企画書を作って、メンバーに説明してくれたんですね。ただ、2007年には新アルバムを作るのはわかっていたので、漠然とした期待感みたいなのはツアー中もずっとありました。
瞬火:ライヴでも全曲分作りますね。なんとなく伝えて、なんとなくまとまるっていうのもロックっぽくて恰好いいんですが、自分のしたいことや考えをライヴのスタッフやメンバーに一滴も漏らさずに伝えるために、そういう企画書や資料が自ずと生まれてしまうんです。
瞬火:基本的には『魔王戴天』というアルバムに向けてメンバー全員で曲作りに取り掛かったのですが、かなり早い段階で、僕がアルバム用の楽曲を揃えてしまったので、ひとまずシングル曲としてはその中から一番相応しい「黒衣の天女」を選ぶことにしたのですが、その後に他のメンバーから出そろってきた楽曲が、それぞれの持ち味が発揮された個性的なものばかりだったので、それを無理矢理アルバムにねじ込むよりも、アルバムより先にシングルを手に取ってくれる方に対する付加価値的な意味も込めて、シングルに4人の作曲陣の楽曲を1曲ずつ入れて楽しんでもらうという方向にしました。もちろんカップリングの楽曲がアルバムに収録されないのも、シングルを買ってくれる方への感謝の形です。
瞬火:原作というわけではないんですが、その小説に描かれた、どうしようもない懊悩を基にした歌詞です。主人公の女性が、わが子を育てるために、どんな苦悩を味わい様々な行為に及んで行ったのか。ドス黒いんですが、同時に神々しくもある。激情を表わすメロディとアップテンポでヘヴィなバックがあるので、激しさが先に立っちゃうと思うんですが、歌詞を読んでもらい、ましてや原作も読んでもらえば、彼女は恐ろしいだけじゃなく、実は優しく美しい面もあるということに気づいてもらえると思います。そういう醜さと美しさ、怖さと優しさの狭間のカンジをPVで見てみてください。
瞬火:「泥田坊」はもう、“泥田坊界”の金字塔ですよ(笑)。「顎門」は仕上がったものを聴くと不思議な浮遊感がありますよね。一つ一つのパートでは特別なことはしていないんですが、普通にまとめるところを絶妙に外してあるんです。音楽的には合っているのに歌とリズムが若干ズラしてあるとか、ちょっと挑戦的な曲ですね。歌が一番難しかったんじゃないかな。
黒猫:普通に歌うとちょっとズレるんですね。その感覚をつかむのに苦労しました。テンポチェンジや変拍子は得意なつもりだったので、“あれっ?”っていうカンジですね。でも、出来上がったのを聴くと、そういうのが良い浮遊感になってて、空を飛んでいるというか、水の中を泳いでいるような効果が出せましたね。
黒猫:(笑)。この曲はシングルのカップリングに入れたいと思って作ったんです。子守唄やわらべ歌の感覚で、コンパクトできれいなメロディのものにしようと思って。温かい音像を加えてもらって、私が思い描いたものより血肉が通ったものになりました。
瞬火:これは、打ち込みの部分もありますが、処により根性弾きです。キレイに打ち込みすぎるとペラペラなものになりますからね。鍵盤奏者じゃないからイメージするものを得るためには、根性で弾く必要もあるわけなんです。けっこう無駄な頑張りをしちゃいましたね。でも良い結果になってよかった。
黒猫:斗羅さんも、瞬火さんと相談しながら楽器じゃないものをいろいろ叩いて音を探してくれて。リズムが柔らかい仕上がりになりましたね。
瞬火:オーガニックな音を求めて旅をしてました(笑)。クールでカッコいいピシッとした音というより、有機的な温かさが必要な楽曲だと思ったので。