BUMP OF CHICKEN 「涙のふるさと」特集INTERVIEW

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――制服を着ることに抵抗は?

藤原:抵抗はやっぱりありましたね。4人で鏡の前に立って“大丈夫か、これは!?”と最後まで言ってました。とはいえ、撮影後半では着ていることも忘れてましたけど。僕らの中では、結構笑いぐさになっていましたね。

直井:楽器さえ持たせていただければ、服はまあ、いいかと。その曲を演奏している雰囲気も、監督は求めているので、撮影中も、実際に軽く音を出しているんですよ。楽器さえ持たせてくれれば、白い毛糸のベストを着ていようが大丈夫です。

藤原:いわゆる衣装を着るのも、あまり好きではないですしね。それと、今回のPVが、企画の段階から始まっていたら、名のある俳優さんに出演してもらうとか、映画監督にお願いするという発想は出なかったでしょうね。自然の成り行きでした。PVもCMとちょっと関わった話がいいんじゃないかという考えが、スタッフと山崎監督の間にあったみたいで。そのときには、山崎監督への信頼もありましたし、僕たち自身が監督を選んだわけですから、安心して身を委ねればいいんだと思いました。

直井:今回のやり方に、すごくビックリするファンの方もいるかと思うんですけど、『ワンピース』(アニメ)や『TALES OF THE ABYSS』(RPGゲーム)のときと同じで、僕らとつながれるものがあると思ったから、監督にお願いしたのであって。だから、以前と何も手段は変えていないんですよね。監督が有名だからとか、話題性だとか、そういうことで選んだわけでは断じてないです。

藤原:作品にまつわる衝動に、正直に嘘をつかずに向き合ってきたという結果が、このようになったということですね。

直井:本当にいいものというのは、売れている、売れていない、有名、有名じゃないということは関係なく、すべてにおいて、いいものとして捉えていいんだなと思います。それって意外と、勇気がいることなんですけどね。

――CDジャケットのオブジェは、曲と関連しているのですか?

藤原:これは微妙なところなんですけど、少なからずあるとは思います。「涙のふるさと」の歌詞の中に、僕とか、君とか、俺とか、この造形物の対象となりそうなものが、出てくるじゃないですか。でも、どれを当てはめていいのかよくわからないし、そもそも作っているときも撮影しているときも、そんなことは、考えていませんでしたからね。

直井:今回のジャケットは、4人で何かを作って、それを海に立てるという藤くんの案から、実現されたものなんです。それで、4人でホームセンターに材料を買いに行きました。そのときに、大体の形を考えたんですけど、人間っぽい感じになるというのは、みんなの中になんとなくありましたね。それで、学校の教室を借りて、4人で1日かけて作って、海に持って行って撮影をしたんです。そのときは、まだ名前も付けてなかったし、今でも付けられないですね。定義付けたくないというか。でも、コイツを海に立てた瞬間に、みんなの中で「涙のふるさと」が流れたのは事実ですね。

――ホームセンターでは、どんな道具を買ったんですか?

増川弘明(以下、増川):僕は、手の先についている、ぐるぐるを選びましたね。みんなから、いらないと言われたんですけど。胴体あたりから、みんなが選ぶものがバラバラになってきてね。あーだこーだ言いながら、バケツを買ったり筒を買ったりしましたね。

升:いろんな道具を買いましたけど、どの道具も、誰一人として本当の用途はわかっていないんですよ。あ、目は自転車のライトです。光るんですよ。4人で何かをやるというのは、新鮮でしたね。レコーディングもそうですが、音を出している人が見えるっていう、視覚的な情報というのは、すごく大きいんだなと今回思いました。

――それは重要なことですよね。音を出す人は誰でもいいってわけではないですから。

藤原:目から鱗(うろこ)ですよ(笑)。4人の息を感じながら、いいリズムを刻むために、全員でブースに入ったということですよね。音を楽しむと書いて音楽と読むように、肩の力を抜きつつ、4人でレコーディングすることの楽しさを、今回改めて感じました。

取材・文●佐伯 明

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