ライヴ・レポート Part5
■ついに登場! Mr.Children
ゲストのライヴが終わり、約30分の小休止。そしてつま恋の空を赤く染める頃、再びライヴ開始のサウンドロゴが鳴り響く。ついにMr.Childrenの登場だ。Bank Bandではなく、今度はMr.Childrenのボーカルとして再び登場した櫻井和寿の顔が会場の大型ヴィジョンに映し出される。田原健一、中川敬輔、そしてJENが続く。今か今かと待ち望んでいた瞬間。
「HERO」からライヴはスタートする。すでにオーディエンスは総立ちだ。続く「NOT FOUND」では、ギターの激しいカッティングと、重厚な中川のベース、そして身体の芯に響いてくるJenのバスドラムがオーディエンスをグイグイと引っ張る。小田和正やASKAといった、年齢も音楽歴も上で、かつ超一流のミュージシャンたちのステージの後ながら、彼らにも匹敵するステージを見せるMr.Children。圧巻としか言いようがない。
次の曲「ほころび」を櫻井は「つま恋の青空と芝生と・・・綺麗な女の人をイメージして作りました」と紹介する。
<広い芝生に横になって/青い空を見ていた/気持ちがよくて ウトウトして/まぶた閉じた> <君の匂いが好きだった/甘い匂いがした/夢から覚めると独りぼっち/君はもういない/寝転がってる君はいない>
なんでもないシンプルなメロディにシンプルな歌詞が乗った曲。だけどそれが逆に素直に心に入ってくる。今日のつま恋は曇り空が多かったけれど、目を閉じれば歌詞のような情景が浮かんでくる。オープニングのトークで「今年の<ap bank fes>を昨年のフェス終了後から心待ちにしてた」と盛んに言っていた櫻井。もしかしたらこの曲の“君”には、昨年の<ap bank fes>を重ねていたのかもしれないな、と感じた。
「次に演る曲は、この会場のお客さんのほとんどが耳にしたことのない曲です。」
今年に入って彼らはレコーディング作業を行なっていたこと。アルバムコンセプトについてのミーティング。大きなテーマを投げかけることについて違和感を覚えたこと。翌日、ふっとメロディと歌詞が櫻井に降りてきて、大きなテーマじゃなくて、小さなテーマやささやかな毎日の積み重ねが大切なんじゃないかって思ったこと。だからレコーディングでは、ギターの音のひとつひとつのすごく細かいところに気を配ったというこだわりなど、新曲ができた経緯を語ってくれた。 そして、未発表の新曲「彩り」が流れ出す。桜井の口から溢れ出るフレーズをこぼさないように、オーディエンスは聴き入っていた。
その後、「掌」「ストレンジカメレオン」と続く。ザ・ピロウズの名曲「ストレンジカメレオン」は原曲よりもロックチューンにアレンジされ、サウンドが心地よい。ギター1本を鳴らしながら始まった「終わりなき旅」、そして「箒星」で再び桜井はステージを左右に走り、オーディエンスを煽りながらエネルギーを振りまく。そして最後の曲「Sign」。
両手を振り動かして作られた波の向こう側で、Mr.Childrenがいつまでも揺れていた。
■エンディング ~「to U」にレゾナンスを見る~
すべてのライヴが終了し、煌々とステージを照らしていたバリライトが落とされる。だが、会場ではアンコールを待つオーディエンスの熱気でいっぱいだ。まだ“あの曲”をやっていない。誰もが待ち望んでいる“あの曲”を。そして───
夕闇に染まったステージに再び灯がともる。待ち望んだアンコールだ。櫻井を先頭に、今日のライヴでパフォーマンスを行なったすべてのアーティストが登場する。
櫻井は満面の笑みを浮かべている。彼はライヴのスタートからずっとそうだ。広いステージを駆け回っている時も、各アーティストのバックでギターを鳴らしている時も、Mr.Childrenで熱唱している時も、ずっと嬉しそうな表情を浮かべていた。そして、事あるごとに「あー幸せだ」とマイク越しに呟いていた。 アンコールの曲はわかっていた。ap bankで最も重要な意味を持っている“あの曲”だ。イントロが流れる。GAKU-MCとBENNIE KのCICOがラップで盛り上げる。
<池の水が鏡みたいに空の蒼の色を真似てる/公園に住む水鳥がそれに命を与える>
ap bankのコンセプトソング「to U」がつま恋にそっと響き渡る。出演者全員が、かわるがわる歌いつないで行く。いや、つないでいったのはステージ上のだけではない。オーディエンスの中にも口ずさむ者、じっとステージを見つめる者、手を振って歌に応える者。ステージから放出されたエネルギーを観客席側が受け取り、それぞれにつないでいく。アンコールの光景はそんなふうに映った。
櫻井和寿は、やっぱり最後まで笑顔だった。小林もそう。ほかの出演者も、そして、オーディエンスもみんな笑顔で幸せそうな顔をしていた。
きっとこれもレゾナンスなんだ。【了】
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