陰陽座 ユーロツアー総括インタビュー
──フェスではなく、ワンマンで呼ばれてドイツ、フランス、ベルギーの3ヶ国でライヴをやったわけですが、それが決まった時の率直な気持ちはどうでした?
瞬火:いわゆる海外デビューとか、海外に出て行くんだっていう、そういう目標とかは今もないですし、当初もなかったんです。海外で認められているから凄いとか、そういうことにステイタスも感じないし、たまたま僕達は日本で生まれた日本のバンドだから、日本でライヴをやっていただけ。それが、ヨーロッパというところから、陰陽座を観たい人がいるから来てくれと言われて、観たい人がいるのなら行こうという自然な流れでした。“これで俺達も海外だぜ”みたいな、そういうのは一切ないんです。とはいえ、国が違えば、オペレーションの面でもセオリーが違うわけですよね。機材、会場、人の面でも常識が違うわけなので、気軽にひょいと行って出来るものではない、気を引き締めないとちゃんとしたライヴが出来ないなっていうのはありました。
──向こうで盛り上がるのかな?という不安とか、逆に期待感とかはありましたか?
瞬火:例えば言葉が通じないとか、あと日本みたいに、CDショップに行けば陰陽座のCDが置いてあるっていう状況もないし。認知度とかお客さんが本当に来るのかとか、来たはいいけど盛り上がるのかとか、そういう確信を無責任に持つことは出来ないです。でも、いざステージに出れば、客席にいるお客さんが何人だろうと、どこの国の人だろうと、盛り上がるようなライヴをやるんだっていう確信だけは、国内でやろうと海外でやろうと常に持っているので。だから、盛り上がるかな?っていう不安はないですよね。とにかくいいライヴをしにいくだけっていう感じでしたね。電圧が違うからドライヤーが使えないとか、そういうのは、実際に解消しないといけませんけどね(笑)。
──とはいえ、言葉の壁があるし、陰陽座の描く世界観を本当に理解して聴いてくれているのだろうかっていう不安感は? サウンドの方は、問題ないと思うんですが。
瞬火:洋楽が偉くて、それに近づくことが条件というか目標というか、そういう価値観が僕達には一切ないんです。あと、山田風太郎に代表されるようなインスピレーションの元とか、日本の古い伝承、例えば鬼だとか妖怪だとかっていうところも、“なんとなくは分かる”っていう感じだと思うんですね。でも僕が感じたのは、ヨーロッパ3ヶ国に来てくれたお客さんの何割かは、確実に日本の文化自体に興味があり、下手をすると日本人よりも日本語や文化というものに興味があり詳しいような人もいるということ。逆に日本語の分からない人たちでも、音だけ聴いてエキサイトしてくれてるっていうのもわかりました。だから世界観を理解されないことへの恐怖っていうのはなくて、逆にヨーロッパに行って、歌詞の内容を深く理解されていて“分かるよ”って外国人人に言われても怖いですよね(笑)。入り口は何にせよ、音の肌触りだと思って、そこはまず合格点をもらったんじゃないかって思います。