アルバム『ユグドラシル』ロング・インタヴュー1
バンプ・オブ・チキンの最新アルバム『ユグドラシル』は、 バンドの生命線の太さを感じさせる、永遠の傑作と呼ぶにふさわしい内容だ。 歌詞もサウンドも今まで以上にシリアスで重いが、不思議と息苦しさはない。 むしろ、聴き終えた後に訪れるのはすさまじい覚醒である。 価値の重いものを片方に乗せ、沈む天秤のように、 『ユグドラシル』は聴く者になにが大切かを語りかけてくれる。 思うに、このアルバムにおいて、バンプにとっての音楽の意味は大きく変わった。 おさななじみだった4人が一緒に楽しむための手段ではなく、 人生を賭ける目的そのものへと音楽が「完全に」深化を遂げたのだ。 前作『jupiter』から2年半のあいだに、4人に何が起きたのか。 |
「歌が、曲が、こうしてくれああしてくれっていう声がたくさん聞こえたから それを再現するために練習するしかなかったですね」 |
直井(B): うん。練習って言っても、曲の練習じゃないんです。運指とか、グルーヴを深めるための、なんでもない練習をしてましたね。もう、指の筋肉を鍛えるための練習ですよ。野球だったら素振りだとか、走りこみだとか、きついほうの練習に近いです(笑)。『jupiter』の頃は、藤くんの曲を聴いて、なにも考えないでプレイできたんです。簡単に出てきたベース・ラインを変えることもなく、レコーディングでもぱっとやってしまうことが多かったんですけど、今回は考えました。歌が、曲が、こうしてくれああしてくれっていう声がたくさん聞こえたから。それを再現するために練習するしかなかったですね。だから、ベース・ラインをつけるのが怖くなりましたね。 ――練習すればするだけ怖いっていうのは、独特の感覚ですね。 直井: うん。“ああ、こんなにやろうとしてることはすごいことなんだな”っていう。はじめて音楽に触れられた気がするんですよね。そういう怖さを知った分、やりがいもあるし、幸せですね。 増川(G): ぼくの場合、根源的な部分で“人としてどうするんだ?”みたいな選択というか、メンバーで話し合いをしたこともあったんですけど……そういう話し合いをする時期にバンドも曲も来ていて、自分がそこに追いついてない部分、気づいてない部分もすごいあって。そういうことを理解する時期ではありましたね。 ――曲によっていろんな音が鳴ってるし、アレンジもリズムパターンも豊富ですが、総楽器数はどれくらいですか? 直井: 藤くんがシーケンスで作った曲なんかは、“藤くん、この楽器なに?”とか思ってて(笑)。「同じドアをくぐれたら」って曲とか、これをどうやってギターで再現するのかなっていう。 藤原(Vo&G): ギターはギターで総称するとして、アコースティックギターと、ガットギターと……。 増川: マンドリン。 藤原: あと、ブズーキ。弦楽器はそれくらいですね。奏法もいろいろです。曲が求めている音をどうやったら出せるのかって考えたら、その楽器しかないっていう感じで。 ――楽器ごとにコードが違うわけで、いろんな楽器を弾くことで再びギターに戻ると、今までとは違ったアプローチが見つかったりしましたか? 藤原: ああ、ありましたありました。要するにギターから見れば変則チューニングなんですよ、マンドリンとかブズーキとか。だから、チューニングの違う楽器に触れて、今度はギターも変則チューニングで弾いたりしましたね。今まではそういうことをしてなかったんだけど、そういう曲がいくつもあります。サウンド・バリエーションは増えたと思います。
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