【年始特集】2024年注目の若手V系バンド5選

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V系バンドにおける2023年の大きな話題といえば、アンティック‐珈琲店-、12012、カメレオ、SuG、Sadie、DOG inThePWOなど、2000年代のヴィジュアルシーンを牽引したバンドが活動再開を決めたことだろう(限定復活含む)。そんな中、若手と呼ばれるバンドも多く誕生した。本項では、2024年にさらなる活躍が期待される若手V系バンドを紹介しよう。



まず紹介したいのは、孔雀座。今年6月に始動したばかりの5人組バンドだ。始動するやいなや、「DANCE IN THE DARK」を発表し、ミュージックビデオでは楽曲の持つ世界観を存分に見せつけてくれた。始動したばかりのバンドにありがちな、見栄えは良いけれど方向性がいまいち定まっていないという心配が一切ないのも安心して聴いていられるポイントだ。バンドの生音とデジタルサウンドを融合させたバンドはこれまでにも多く存在していたが、孔雀座はメンバーの個性も相まって惹き付けられる。なお、公式YouTubeチャンネルにはライブ映像もアップされているのだが、自分たちのやりたいことを前面に押し出しているのが伝わってくるので、2024年は台風の目的な存在になること間違いない。



続いての注目バンドは、HOWL。このバンドを知るきっかけとなったのは、ボーカル真宵の活動が大きい。V系ファンにはお馴染みのバンド、R指定のギタリスト、楓のソロプロジェクト・KiDのサポートメンバーとして選ばれたのが、真宵だった。メロディアスな楽曲に乗る透き通る歌声に驚かされた。また、先輩という立場のメンバーに物怖じせず堂々としたパフォーマンスでライブをこなすあたりも好感を持った。そうした経緯もありHOWLに注目したのだが、優しい雰囲気から艶っぽい雰囲気まで、楽曲によって様々な表情を覗かせる。歌声を活かした演奏力を見せる楽器隊も安定しており、ライブを重ねることで大きく化けていくバンドになる可能性は充分にありそうだ。



同じく、2024年に大きく変化を遂げそうなのがAshmaze.だ。歌の実力はもちろんのこと、このバンドはとにかく演奏がうまい。どことなく90年代のドラムプレイを彷彿とさせる「ニルヴァーナ」を始め、イントロ部分のギターが冴える「時代」など、聴き進めるほどに思わず感嘆の溜息が漏れる。ここが良い、これが素敵だ、と多くを語るより彼らの公式YouTubeチャンネルを参照してもらいたいのだが、パフォーマンス面は華やかで見応えがある。ミュージックビデオはV系バンドのとしての誇りを感じさせる場面が多く、日本のファンだけでなく海外からもたくさんの支持を受けるはずだ。1曲発表するごとに違う表情を見せてくれるだけに、これからの活動展開に大いに期待したい。



良い曲が多いバンドといえば、このバンドを忘れてはいけない。nuriéの作る楽曲はゆっくりと花びらが開くような美しさがある。結成以来、リスナーはもちろん、音楽関係者の多くも魅了してやまないだけに、だいぶ音楽性が高いことが受け取れる。個人的に思うのは、彼らは全身全霊で音楽に向き合っているということ。1曲を作るごとにどれだけ身を削っているのだろうかと思ってしまうほど、楽曲を通して伝えたい気持ちがサウンドから感じられる。命を燃やして今を生きている、そうした想いが1音1音から溢れているのだ。昨日と同じ日はないと言わんばかりの、瞬間を切り取ったような瑞々しさ、どこかヒリヒリとした空気感は彼らにしか出せない。バンドが円熟味を増したとき、活動の幅を一層広げるはずだ。



最後は、毛色の違うV系バンドを紹介したい。というのも、彼らはかなり異色な存在だからだ。その名は、色々な十字架。もう、バンド名からしてツッコミどころ充分じゃないか。もともとは、ティンカーベル初野がエイプリルフールのネタ企画として作ったバンドなのだが、あれよあれよという間に人気を呼び、この間は恵比寿LIQUIDROOMでワンマンライブを成功させるまでになった。ビジュアル、楽曲のメロディセンス、どれをとってもかっこよく、昔からV系をこよなく愛しているリスナーの心を鷲掴みにする要素がふんだんに詰まっているのだが、こうした中で、狂ってるんじゃないかと言いたくなるほどのトリッキーな歌詞をぶち込んでくるところが楽しい。また、ライブではスマートフォンで撮影可としているところもこれまでのV系には見られなかった試みであり、シーンに新たな風を吹き込んだといえよう。また、メンバー全員、歌がめちゃくちゃうまいというのも付け加えておきたい点であり、ヴィジュアル系バンドが憧れの舞台としている日本武道館に1番近いのも、色々な十字架なのではないかなと個人的には思っている。

振り返れば、V系シーンで活動しているバンドのほとんどがコロナ禍で思うようにライブ活動を展開できなかった。制限がある中で自分たちの活動方針について苦悩したこともあったと思う。だが、困難を乗り越えた今、どのバンドもこれまで以上に気合いの入った展開を見せてくれるはずだ。誰が一気に抜き出るか期待しつつ、2024年もお互いに切磋琢磨しながら高みを目指していってもらいたい。

文◎水谷エリ
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