【インタビュー】ザ・ワイナリー・ドッグス、リッチー・コッツェンが来日直前に語る「このバンドの場合は3人とも主役なんだ」

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リッチー・コッツェン、ビリー・シーン、そしてマイク・ポートノイ。ハード・ロック界屈指のプレイヤー3名による比類なきパワー・トリオ、ザ・ワイナリー・ドッグス。去る2月に発売された第3作、その名も『III』を携えての彼らの日本公演が、いよいよ目前に迫ってきた。

◆THE WINERY DOGS 動画 / 画像

11月17日に開幕するこのツアーを前に、超絶な演奏のみならずエモーショナルな歌唱で観る者を酔わせるリッチーが、11月上旬、緊急インタビューに応えてくれた。すでに彼らのライヴに足を運ぶ予定の読者のみならず、まだそれを決めかねている人たちにも、まずは是非この最新肉声に触れてみて欲しい。そして彼の自信に満ちた言葉に目を通したならば、この機会を逃してはならないことが、きっとご理解いただけるはずだ。


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■とても複雑なものを正確にプレイできる3人組
■だからこそ自分たちなりの良い曲というのが必要


──いよいよ日本公演が近付いてきました。去る2月から始まっている『III』の発売に伴うワールド・ツアーではすでに80公演以上を経てきて、11月5日にはヨーロッパ・ツアーも終わり、次は日本での全5公演が控えています。まず、終わったばかりの欧州ツアーでの反響、手応えはどうでしたか?

リッチー・コッツェン:素晴らしかったよ。今年2回目のツアーだったけど、今回のほうが期間的にも長くて、公演本数も多かった。ソールドアウトになったライヴもたくさんあったし、俺たち自身もカッチリと噛み合ったいいプレイをしていたと思う。欧州は、ツアーをするにはいいところだよ。ツアー・バスに乗って国から国へ、都市から都市へと動き続けて、しばらくの間は何もかも忘れることが出来る。とはいえ今は今で、家に居て気分を出来ているのが心地好いんだけどね(笑)。そして当然ながら、日本に行くことをとても楽しみにしている。もうみんな知っているかもしれないけど、今回のアルバムのサイクルは日本でのこの5公演をもって終了することになる。だからこれはバンドにとってスペシャルな旅になるよ。

──今回のツアーでは基本的にこれまでの3作から万遍なくプレイしているようですが、『III』の楽曲たちを2月以来ずっと演奏し続けてきて、アルバム完成時と比べて感触が変わってきた部分もあるはずですよね?

リッチー・コッツェン:これはザ・ワイナリー・ドッグスに限らず、俺が参加している他のものにも当て嵌まることなんだけど、まずアルバム制作の時は、その作品のサウンドや楽曲に対する明確なヴィジョンというものがあり、そのために時間をつぎ込み、自分たちが思い描いていた通りのものを形にしようとする。そして俺が気付かされたのは、それが作品として世に出てツアーに出てみると、その曲たちに別の生命が宿ってくるってことなんだ。つまり世界各国をツアーしていくうちに、曲が進化していくんだよ。
 1年にわたる今回の比較的短めのツアーでもそれは同じことで、たとえば『III』からは「Gaslight」「Xanadu」「Mad World」「Stars」といった曲がセットリストでも定番になっているけど、そうした曲たちにはスタジオで録音していた当時とは別の感触、別のエナジーがある。どちらが良いとか悪いとかいう話じゃなくて、夜な夜な何度も繰り返し演奏していくうちに新たな生命が宿ってくるんだ。曲によっては自由度が増して良い意味での緩さが出てきたり、賭けに出るような何かを試したくなったりすることもある。オーディエンスの前で曲をパフォームしていると、そこに制作時とは違うアティテュードが生まれてくるんだ。




──なるほど。今年はザ・ワイナリー・ドッグスにとって、まさにツアーの年となりました。パンデミックの頃は思うようにライヴ活動も出来ず、さぞかし鬱憤が溜まったことだろうと思うんですが、ロードの生活をしていて“本来あるべき日常に戻ってきた!”というような感慨めいたものはありましたか?

リッチー・コッツェン:すべてが本来あるべき日常に戻ってきたという実感もあるけど、ツアーってものには難しい一面も間違いなくある。それこそ、年齢を重ねれば重ねるほどツアーは困難さを増してくるものだよ。最初はとにかくエキサイティングだった。世界を旅しながら初めての経験を重ねていくことが楽しくてたまらないわけだよ、若くて独身の時分というのは(笑)。だけどそれを何度も繰り返し、年を取っていくうちに、状況は変わってくる。それこそ若い頃ほどの回復力はないから、ライフスタイルを変えないとならなくなってくるんだ。充分に睡眠をとって、若い頃以上に体調管理を心掛けないといけない。
 とはいえ今年は素晴らしいツアーの年だったよ。楽しかったうえに、身体に負担がかかったとも感じていない。だから今現在は日本に行くことをめちゃくちゃ楽しみにしているけど、同時に、ジャパン・ツアーを終えて家に帰って来て“やり遂げたぞ!”と実感できる瞬間のことも楽しみにしているんだ。自分たちにとって最大限にベストな形でアルバムを届けることが出来たうえに、やれるだけの本数のライヴをやってきたという自負があるからだよ。だから、その先には長~い休養を取りたいと思っている(笑)。家族と過ごして、気晴らしをして、家庭生活を楽しみたい。このツアーが終わった先に楽しみにしているのは、そういうことなんだ。

──ちなみにビリー・シーンとマイク・ポートノイはあなたにとって、ツアーで長い時間を共に過ごす仲間としては付き合いやすいタイプですか?

リッチー・コッツェン:俺たちはすごく仲がいいんだ。3人とも性格はかなり違うけどね。バンドというのは脆い関係でもある。ある意味、結婚とすごく似ているね。どういうことかと言うと“常に一緒に決断を下している”という共通項があるわけだよ。クリエイティヴな決断、感情をかき立てられることについての決断を、共に下しているんだ。たとえばある楽曲についてのあるメンバーの考えに対して、他のメンバーが反対する場合もある。大概の場合は全員の意見が一致するけど、それ自体がとてもエモーショナルな体験だといえる。
 このバンドの場合、主役というかオーナーが3人いるようなものなんだ。たとえば5人組とかのバンドを1人か2人の特定のメンバーだけが仕切っているというような話はよく聞くけど、ザ・ワイナリー・ドッグスの場合は3人とも主役なんだ。全員が対等の立場で発言出来る関係にあるからこそ、力関係が変わってくることもある。だけど俺たちは長年一緒にやってきたし、お互いの性格をよく知っている。だから全般的にみんなで楽しくやってこられたし、ある意味、家族のような存在になれているんだ。


──アメリカとヨーロッパの観客の気質の違いなどを感じることはありますか? 日本のオーディエンスについては「演奏中はとても静かに聴いているのに、曲が終わった途端に大きな歓声を上げるからびっくりする」みたいなことを言う人が多いですが。

リッチー・コッツェン:日本の観衆についての感じ方については、まさにその言葉と同感だね。他の国々ついてもそんなに顕著な違いがあるわけじゃない。ただ、南米に行った時に気付かされた最大の違いは、ブラジルやアルゼンチン、チリの観衆がとにかくシンガロングする傾向が強いということ。アルゼンチン公演の時、最後にプレイした曲が「Elevate」だったんだけど、あの曲が始まると、オーディエンスは歌詞を口ずさむばかりじゃなく、俺のギター・リフまで一緒に歌っていたよ!(笑)あれは衝撃的だったな。

──一緒に歌いたくなるメロディがあるというのは重要なことですよね。ザ・ワイナリー・ドッグスは、どうしても“3人の凄腕ミュージシャンが超絶な演奏を繰り広げるバンド”と見られがちですが、何よりも重視しているのは楽曲であるはずだし、あなたの歌唱とメロディこそがこのバンドのアイデンティティの大きな部分を占めているように思います。

リッチー・コッツェン:俺が思うのは“曲がなければ、オーディエンスはいない”ということだよ。このバンドがやっているようなことをやるには、自分たちなりの楽曲、音楽が必要不可欠なんだ。実際、俺自身、かなり若いうちから”曲がなければキャリアなし(no song, no career)”ということが頭に叩き込まれていたよ。だから、まずは曲ありきなんだ。ザ・ワイナリー・ドッグスの場合、たまたまメンバー全員、楽器演奏が上手かったけど(笑)、それ以前に 「Regret」とか「Elevate」、 「I’m No Angel」といった曲が存在していなかったら、誰もこのバンドのことなんか話題にしなかっただろう。俺たちは確かに、とても複雑なものをとても正確にプレイできる3人組ではある。でも、だからこそ自分たちなりの良い曲というのが必要なんだ。それが何よりも重要だと俺は考えているよ。

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