【ライヴレポート】Waive、再結成第一弾<GIGS「Burn」>で「燃え尽きるではなく、燃やし尽くす」

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Waiveが7月21日、渋谷Spotify O-WESTにて再結成 第一弾ライヴ<GIGS「Burn」>の東京公演を開催した。エネルギーに満ちた歌唱と演奏、メンバー間の掛け合いが楽しい和気藹々としたMC、会場を埋め尽くすファンとの一体感、晴れて声出し解禁となったフロアの熱狂…一言で言えば、良いライヴだった。しかしその良さは、ロックバンドの一夜のライヴレポートとして、ただ単に目の前で起きたことを書き写しただけでは伝わらないようにも思えて、頭を悩ませることになった。

◆Waive 画像

ライヴ開催までの経緯をざっと振り返ると、Waiveは2023年4月11日に再結成を宣言、その活動第一弾としての復活ライヴが<GIGS「Burn」>である。7月16日および17日の大阪・OSAKA MUSE(※2日目は追加公演)も、今回レポートする渋谷Spotify O-WEST公演もソールドアウト。追加公演の8月4日、東京・渋谷WWW Xのチケットも既に完売している。

2005年に解散して以来、2010年の再演を機に幾度かのライヴをスポット的に行なったり、ツアーを開催したりしつつも、Waiveはあくまでも“解散中”というステイタスを保持してきた。結成20周年のタイミングではコロナ禍が直撃。有観客ライヴを躊躇うアーティストが多い中、2021年1月にLINECUBE SHIBUYAでライヴを決行。参加を断念したファンが多かったこともあり、翌2022年には同日同会場で<&Again>と銘打ったリベンジ公演も行なっている。バンド固有の事情だけでなく、時世による影響も加わって、書き尽くせないほど様々なことをWaiveというバンドは経験してきた。


かつてインタビューでは、バンドの解散を“死”と表現した杉本善徳(G)の言葉を踏まえれば、リビングデッドというべきか、ゴーストと言うべきか、モラトリアムというべきか、いずれにせよ「“生きている”とは言っていないから、死にもしない」という論法で、彼らは時の流れの制約を受けない形で曖昧に(時として、だからこそ力強くもあれたのだろうが)存在することを選んでいた。

しかし、今回は根本的に意識が違う。再結成を明確に宣言し、同時に結成25周年を迎える2025年いっぱいでの解散を発表。2025年末頃に行なう予定の日本武道館単独公演を解散ライヴとするという。約2年半という期限を設けた活動を、砂時計にたとえるべきか、あるいはもっとラディカルに時限爆弾にたとえるべきか。いずれにせよ、バンドの命を自ら薪をくべて燃やし尽くそうとするWaiveの強い意志と並々ならぬ覚悟を感じる。頑ななまでに避けてきた再始動という言葉をなぜ今回は遣う決断をしたのか? その心境の変化や解散への想いは、後日BARKSインタビューによって深く掘り下げる予定である。


ライヴ当日。定刻を少し過ぎて、SEに乗せてブルーのサーチライトが光る中、ファンの熱い手拍子に迎えられてまずは高井淳(B)、貮方孝司(G)、杉本、最後に田澤孝介(Vo)が登場。音楽が止まり、マイクを持った手を挙げてフロアに背を向けていた田澤が歌い出したのは「バニラ」だ。メンバーは積極的に前へ出てファンを煽り、それに応えてファンは声を上げジャンプし、ステージへ捧げるように手を伸ばした。続く「FAKE」では、明滅するライトの下、鋭い眼光を光らせて歌う田澤。序盤からエンジン全開、テンションの高いパフォーマンスを繰り広げていく。

「ありがとうございます。なんとWaive、再始動いたしました!」との挨拶から、再演を重ねて来た経緯に触れ、今回の再始動にあたっては「少し心持ちが違うと言いますか、何と言いますか……」と田澤。その詳細はこの日、MCの随所でファンに伝えられていくことになる。


キャッチーなメロディーに乗せて“いつかここで もう一度めぐり会いたい”と歌う「あの花が咲く頃に」の、どこか懐かしいビート感。Waiveの解散後、どのタイミングから応援するようになった観客が多いのか、正確なデータは手元に無い。しかし、揃った手の振りや迷いのないタイミングのジャンプを観ていると、長きにわたりWaiveを想ってきた人たちの強い“念”を体感せざるを得ない。

田澤が窓辺のジュリエットを見上げるように跪く「わがままロミオ」は、ラブソングのはずなのに、歌詞に出てくる“運命”や“時間”という言葉がバンドという共同体のそれを指しているかのように感じられた。「will」の“自分らしく生きよう”も同様である。「全部説明するともう、今日の終演時間になってしまうぐらい、いろいろあったバンドなんで(笑)」とMCで田澤が語った通り、一筋縄では行かない歴史を持つバンド。「今、ステージに立っている、ということ」が物語る答えのようなものを、音を浴びながら体感していくことになる。


「燃え尽きるではなく、燃やし尽くす。“もし解散してなかったら?”ではなくて、全部含めて、今のWaiveだからできることを、今の切り口でやれたらいいなと思っています」──田澤が発した言葉の意味に想いを馳せながら、続いて披露された「One」と「Be kind」を噛み締めるように聴いた。Waiveで鳴らす音に身をうずめ、絶唱する田澤。歌声に呼応するように、情感を重ねていくメンバーの音色。観客はじっと佇んでステージに見入っていた。

「TRUE×××」では再び怒涛の疾走感で突き抜けていく。「PEACE?」はその曲調の明るさとは裏腹に、戦禍の2023年にあって新たな響きを帯びて聴こえてくる。ドラマティックに曲が表情を変えていく「HONEY」には、どこか気怠い浮遊感も漂う。しかしノリとしてはテンション高く、メンバーもファンもジャンプを繰り返し、今という瞬間を全身で味わい尽くそうとしているように感じられた。



「再演の時は、“これまでのWaive”を知っている人に在りし日の姿をお届けすることを、成すべきこと、使命だと思っていた。でも、リハを重ねたりメンバーと話したりしていると、今回はテンションが違う。覚悟というのは推進力になる。解散って言うと悲しいけど、今までにないテンション。23年やってきて、解散したり再演したり……止まってるのか?と思いきや、旅の途中。やっと最終地点へ向かっている。書いた当初はそんな余地もなかったわけですが、今の状況、再出発にぴったりな曲」──田澤孝介

そんな言葉に続いて披露したスローバラード「Departure」は、現在のキャリア、年齢だからこそのブルージーさを醸し出していて、“明るい”とも“暗い”とも一言では言い表せないような繊細な感情が伝わってくる。今だからこそ歌える歌であり、鳴らせる音。そんな味わい深さは、続く「spanner」にも感じられた。MCで杉本は、デモテープの段階では「spanner」のタイトルをアルファベットではなくカタカナ表記にしようと思っていたなどと誕生秘話をトーク。田澤も「世に出す前に何回も姿を変えている曲」とコメントしつつ、もっとテンポの速いヴァージョンも検討されていたことが明らかに。やり取りの細部は割愛するが、杉本との会話が進むにつれ、とある見解の相違が明らかになり、田澤は「これからつくる新しい曲はそういうズレ、埋めて行こう」と笑った。今回の再始動では、4枚目となるオリジナルアルバムの制作も視野に入れていることが発表されており、そのリアリティを肌で感じられる一幕だった。

「Lost in MUSIC.」では各メンバーのソロ回しに加え、田澤が杉本の肩を抱いた状態でコール&レスポンスする場面に会場が沸き立った。ここで新曲「火花」が投下されたのだが、ダークでメロディアスでスピード感に満ち、鋭利なリフには懐かしき様式美のようなものを個人的には感じる、アッパーなナンバー。“すべてを燃やし尽くせ!”という力強いフレーズが耳に残る。新生Waiveの熱量と勢い、エネルギーをバンドのアンサンブルに漲らせながら、「ネガポジ」「Sad.」「ガーリッシュマインド」と畳み掛けていき、本編のラストは「いつか」。拳で胸を強く叩きつけ、“いつか、死ぬ僕たちは。”と晴れやかな笑顔で歌う田澤。ステージから溢れ出ていたのは、覚悟を決めたバンドならではの眩い輝きだった。



アンコールで再登場したメンバーは、揃ってツアーTシャツ姿。「楽しんでもらえたでしょうか? 同じ気持ちだったらいいな。幸せです」──そんな挨拶をした田澤に、メンバーは同意するように拍手を重ねた。感動ムードも束の間、グッズ紹介のコーナーが始まると、商品の解説が上手い田澤を杉本が“ジャパネット田澤”と名付けて大きな笑いを巻き起こした。

笑いを交えながらではあるが杉本が熱く語っていたのは、「ファンクラブに入ってください!」という呼び掛け。それは、解散までの軌跡を共に歩むべく、再始動のタイミングで発足した“WAVE”という名のファンクラブサービスを指す。<GIGS「Burn」>は全公演ソールドアウトしているため、希望者がもれなく参加できているわけではない状況を気にかけながらも、「ここにいる人たち、このライヴに申し込んでくれた人たち全員が、今回の2025年の解散に向かうまでの、最初から立ち会っている仲間」と位置付けた。


「今ここにいる550人か600人が、もしこの人数で武道館に行ったらスッカラカン。だけど、あと9000人入ったら、“あの時に応援したWaiveがこうなったんだ”って。ファンクラブ先行でチケットを買ってくださった方たちは、前のほうの席になるだろうから、後ろを振り返った時に、“自分たちも含めてこの景色をつくった”ということを一緒に味わえる位置にいる人たちになる。他では絶対に得られないものを、そこでは観ることができると思う。ガラガラの時も一緒に笑えると思うのよ。一緒に何かやった奴らには馬鹿にされても笑われてもいい。無理強いするつもりはないけど……“入れ!”に近いかな(笑)? 応援よろしくお願いします!」──杉本善徳

「どのタイミングで僕らを知って、初めて好きになってくれたかは、人それぞれ。今、もう始まったわけやから。ここからは、振り返る想い出を増やしていける時間なんちゃうかな?と思います。あったものを懐かしむ集まりじゃなくて、最後にどんな景色を僕らが見るのか? まだまだ分からんけど…でも、どうですWaive? 良いバンドだと思いません?」──そう問いかけた田澤に客席からひときわ大きな熱い拍手が送られた。

「僕が言うのもなんですけど、いろいろ経たから思うことでもあるから、一個の確固たる真実かなと思います。これをたくさんの新しい人にも知ってほしいから。武道館に立つっていうのが完全な目標ではなく、たくさんの人に知ってもらわないと、立てないので。善徳くんが言っていたように、今日この始まりに立ち会ってくれたこと、本当に感謝しています。俺たちの新しい時間は始まりましたので、最後までしっかりと濃密な時間を駆け抜けてほしいと思います。ありがとうございました、これからもよろしくお願いします!」──田澤孝介

最後に届けたのは「Days.」。2016年、解散から10年を機に期間限定で活動していた時期に生まれた楽曲である。解散を死とするなら寂しさや喪失感から逃れられないが、その日に向けて全力疾走でスタートを切ったWaiveのライヴは清々しく、悲壮感は感じられなかった。過去のすべてを受け止めて、Waiveは“今”という瞬間を積み重ね、バンドが紡ぐ物語の新たな、たくさんの“読者たち”と出会いながら、2025年の解散まで突き進んでいく。

取材・文◎大前多恵
撮影◎田辺佳子

■再結成 第一弾ライブ<GIGS「Burn」>2023年7月21日(金)@東京・Shibuya Spotify O-WEST セットリスト

01. バニラ
02. FAKE
03. あの花が咲く頃に
04. わがままロミオ
05. will
06. One
07. Be Kind
08. TRUE×××
09. PEACE?
10. HONEY
11. Departure
12. spanner
13. Lost in MUSIC.
14. 火花
15. ネガポジ
16. Sad.
17. ガーリッシュマインド
18. いつか
encore
en1. Days.


■4都市ライブサーキット<GIGS「爆ぜる初期衝動」>

10月22日(日) 神奈川・横浜BAY HALL
open16:15 / start17:00
11月05日(日) 愛知・名古屋 Electric Lady Land
open16:15 / start17:00
11月23日(木祝) 大阪・梅田 CLUB QUATTRO
open16:15 / start17:00
12月10日(日) 東京・神田 SQUARE HALL
open17:15 / start18:00

■オフィシャルFC“WAVE”限定GIG<GIG「CASE OF ウェイ部」>

10月15日(日) 大阪・OSAKA MUSE
open16:30 / start17:00
11月29日(水) 東京・渋谷STREAM HALL
open18:00 / start18:30

■Waive解散ライブ

2025年末頃予定
日本武道館単独公演


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