TOTOの4年ぶりジャパン・ツアー、日本武道館で千秋楽

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TOTOの4年ぶりのジャパン・ツアーが7月21日、東京・日本武道館で千秋楽を迎えた。そのオフィシャル・レポートをお届けする。

◆7月21日(金)東京公演 画像

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開演5分前に会場に到着。自分の席から全体を見渡すと、見事なまでに埋め尽くされた武道館の聴衆に圧倒される。武道館は4月のドゥービー・ブラザーズ以来となるが、その公演に勝るとも劣らない客入りで、あと数分に迫った公演への熱い期待がまさに目に見えるほど伝わってきた。TOTOの人気は本当に凄い。

デビュー45周年のアニバーサリー・ツアーともなる今回の公演。日本では2019年以来4年ぶりのライブとなるが、ドラムス、ベースそしてキーボードに新メンバーを迎えたブランド・ニュー・TOTOのお披露目となる。

今回の来日公演に際し、TOKYO FMの番組、そして、六本木Bauhausで行われたライブ・イベントにトーク・ゲストでお呼び頂き、「今回の公演の見どころ、ポイントは?」という質問を受けたのだが、それに対する自分なりの答えがこれだった。

「やはり、新しいメンバーがどのように他のメンバー、あるいは、TOTOの楽曲と化学反応を起こすか。お馴染みの曲が新しいラインナップで披露され、そのニュアンスの違いを楽しみたい。そして、元のバージョンへの拘り、愛情が強すぎると楽しめない可能性もある。例えば、(二代目ドラマー)サイモン・フィリップスの叩く“Africa”がしっくりこなかった人にはひょっとしたら楽しめない可能性も……」

そんな言葉を正直に発した。


いろいろな想いが頭を駆け巡る中、19時ちょうどに武道館の客電が落ち、ショーがスタート。真っ白になったルーク(スティーヴ・ルカサー/G)の髪は遠くから見てもよく目立ち、決して悪いものではない。そして、そのオープニング・チューンだが──これ以前の海外でのセットリストは予習して行ったので、それに準じてそのまま「Afraid Of Love」が来るかと思ったが、その前に1曲、意外な曲が披露された。2015年のアルバム『TOTO XIV ~聖剣の絆~』の5曲目に収められていた「Orphan」だ。極端に高いキーの曲ではないが、ジョセフ・ウィリアムスの声が伸びやかなのが伝わってきて、12日間で8公演という過密スケジュールの疲れを全く感じさせない。そして2曲目が「Afraid Of Love」。『TOTO IV』のB面1曲目にしてライブでより一層映えるポップ・ロック・チューンだ。続いて3曲目がデビュー曲の「Hold The Line」。早くもここで1回目のクライマックスを迎える、なんとも贅沢なセットリストだ。

ここで改めてステージを見渡すと、一番左が2019年の来日公演にも参加したキーボードのドミニク・”ゼイヴィアー”・タプリンで、その右がギターとボーカルのルーク。真ん中奥にキーボード&ボーカルの新メンバー、スティーヴ・マジョーラ、そしてその手前にボーカルのジョセフ、その右が新メンバーのベーシスト、ジョン・ピアース、そして一番右が新メンバーのドラムス、ロバート・”スパット”・シーライト、という並びになっている。通常だとドラムスが真ん中に来て、キーボードは両端ということが多いが、この並びは確かこのメンバーによる最初のギグ=2020年11月21日の一夜限りのストリーミング・ライブでも同じだったと思うので、何か拘りがあるようだ。

さて、ここまで書いて、あれっ?と思った方も少なくないだろう。そう、当初来日メンバーに予定されていたマルチプレイヤー&ボーカルのウォーレン・ハムが体調不良で不参加となったのだ。それによって歌の振り分け他いろいろなところで急遽アレンジメントが強いられたと思うが、4曲目の「Falling In Between」ではマジョーラがパワフルなリード・ボーカルを担当。この曲をこのメンバーで聴くのは初めてなので最初から彼が歌うことになっていたのか、本当はハムが歌う予定だったのか詳細は解らないが、マジョーラはかなり荒々しい高音の使い手なのでひょっとしたらハムよりもこの曲には合うかもしれない。2006年の同名作からの1曲だが、プログレ色が強いと言われたそのアルバムの中でもソリッドなサウンドと変拍子、速いリックのユニゾンが売りの曲で、それをいとも簡単に再現する新メンバーの実力は並々ならぬもの。さすがルークが選び抜いた人たちだ。しかも、80年代のTOTO的な様式美とは違ったアンサンブルで、その尖鋭な感じはスパット&ゼイヴィアーならでは、といった印象を受けた。彼らも演奏していてより楽しそうな表情に見えた。

そして5曲目でルークが人気バラード「I’ll Be Over You」を披露。武道館に幾千もの蛍(携帯ライト)が現れ、それに続いて、ゼイヴィアーが幻想的かつファンキーなキーボード・ソロを披露。相変わらず、ジャンルレスの素晴らしい音楽性を届けてくれるが、その終わりから「White Sister」に行く流れはTOTOの定番といったところか。その曲はジョセフが全編を歌っているがオリジナルのボビー・キンボールと比べても遜色ない歌いっぷりだった。

7曲目はお馴染み「Georgy Porgy」だがゼイヴィアーがアレンジした、かなり違ったムードの曲になっている。そして80年代ジョセフの大定番「Pamela」だが、イントロからスパットのバス・ドラが強かったせいか、ややテンポが速い気にさせられた。そして、MCでルークがジェフ、マイク&ジョー・ポーカロに捧げると紹介し、ジェフが参加した最後のオリジナル・アルバム『Kingdom Of Desire』の表題曲をヘヴィーにプレイ。ルークの弾きまくりソロは公演中一番の感情が込められ、”情念”という二文字も頭に湧いてきた。楽曲自体は決して個人的な好みのものではないのだが、ライブで、しかも、このメンバーで聴くと今のTOTOに凄く合っているというか、思った以上に楽しめる。そしてその後、スパットのソロ・タイムが設けられるが、本当に手数が多いというか、歴代のTOTOのドラマーとは全く違うタイプで、彼が新生TOTOの今後を最も左右する男、そんな気がしてならなかった。

ソロ明けの10曲目は『TOTO IV』で一番ソウルフルなナンバー、「Waiting for Your Love」。イントロから思わず笑みが浮かんでしまう。ここではマジョーラがリード・ボーカルを担当。本家が持っていた都会的なお洒落さは薄れ、かなりロックなムードで攻めている。そして、1stからのヒット・チューン、「I’ll Supply The Love」をジョセフのボーカルで披露。キーは全音下げのD・Bmではないかと思うが、ジョセフの声は非常に良い感じで、確かに、80年代後半のTOTO在籍時よりも良いほどだ。もう直ぐ63歳になるというのに、プロに徹する姿はなんとも美しい。エンディングではルークとピアースのユニゾンから例のキメフレーズがスタート。そこに絡むシンセ・ワールドこそまさにTOTOの真髄だ。


そしてメンバー紹介を挟んでライブ後半の必須曲、「Home Of The Brave」が登場。Aセクションは通常、ハムが歌うところだが、不在のため、そこをマジョーラが担当。そして、その後をジョセフが歌い継ぎ、大いなる盛り上がりに。そしてそのまま「Rosanna」「Africa」という二大ヒット・チューンで本編が終わる、なんとも贅沢なセットリスト。「Africa」はジョセフが歌ったが、考えてみたら、リンゴ・スターのオールスターズで「Africa」をやる時はルークが前半を歌っているのだから、TOTOでもそうすれば良いのに……など、余計な想いも芽生えてきた。ところで、その2曲におけるスパットのドラミングだが、印象的なジェフのプレイを完全にコピーしよう、ではなく、必要最低限をキープし、そこに自分の色を追加。気のせいか、CDにもなった2020年11月のライブよりもよりジェフの匂いが薄れている感じがした。そしてそれこそが彼を選んだルークの狙いであろう。何十年も同じ曲をやっていてそこに新しい刺激を加えたいのは極めて自然な想いであり、ひょっとすると、ジェフも今のTOTOのサウンドを「こうでなきゃ!」と絶賛しているかもしれない。彼も常に新しいステージを目指していた人だから。

アンコールはビートルズのカバー、「With A Little Help From My Friends」。一夜限りの配信ライブでもその曲を最後にやり、アルバムのタイトルにもなっているが、できればアンコールではもっと他の盛り上げ方を期待したい。楽しいライブだったね~、良いライブだったね~、ではなく、凄かった! 最高だった! という興奮冷めやらぬ状態のまま、家路につく、あるいは、呑み処に足を運びたいから。いつかルークにインタビューする機会があったら、絶対にそれは伝えたい。もちろん、あっさり却下されるだろうが……。なにはなくとも、また日本にやって来てくれてどうもありがとう! We all love you!! ルークには心から感謝している。


取材・文◎中田利樹
撮影◎土居政則/MASANORI DOI

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■<TOTO ジャパン・ツアー>2023年7月21日(金)@東京・日本武道館 セットリスト 
1. Orphan
2. Afraid Of Love
3. Hold The Line
4. Falling In Between
5. I’ll Be Over You 〜Xavier Solo
6. White Sister
7. Georgy Porgy
8. Pamela
9. Kingdom Of Desire 〜Sput Solo
10. Waiting for Your Love
11. I’ll Supply The Love
12. Home Of The Brave
13. Rosanna
14. Africa
En. With A Little Help from My Friends

プレイリスト:https://www.sonymusic.co.jp/artist/Toto/page/JapanTour2023

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