【インタビュー】文藝天国、オルタナ的藝術徒党が刺激する五感「紅茶に入浴するという新曲コンセプト」

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■香りが新しい入り口にもなってほしい
■香りからインスピレーションを受けた音楽

──そこから、“さまざまな感覚を刺激する”というコンセプトが生まれていったんですか?

すみあいか:最初はただ雑貨を作りたいという気持ちだけだったんですけど、ちょうど香水が完成したタイミングで1stワンマンライブ(<文藝天国 1st live 「瞬間的メタ無重力空間」>2021年8月27日@吉祥寺 STAR PINE'S CAFE)を開催したんですよね。オンラインで普段活動している中で、ライブに来てくださるお客さんにはいちばん最初にその香りを体験してもらえるわけじゃないですか。だから、みなさんにこの香りを覚えていただきたいなと思って、ひとりひとりのお名前を入れた招待状風のチケットを発送する時に香水を吹きつけて、封を開けたら香るようにして。


▲<文藝天国 1st live 「瞬間的メタ無重力空間」>

──手間がかかってますね。

すみあいか:さらにライブ当日は入口でその香りのアロマを焚いたり、お土産にも同じ香りのアロマキャンドルをお渡ししたんです。そうしたら、お客さんが香りに対してめちゃくちゃ反応してくれて。もちろん、ライブ自体に対しても「すごく良かった」っておっしゃってくれたんですけど、「この香りを嗅ぐとライブで観た世界を思い出す」とか「いつでもあの時間に戻れる」みたいな感想を書いてくださってる方がいて。自分たちとしては、単純にいい香りで歓迎したいという気持ちでやったことが、お客さんにとってはそれすらも文藝天国の世界の一つの要素になるんだと思ったんですよね。そこから、もっと香りと密接に繋げて作ってみようとなっていったんです。

ko shinonome:文藝天国のグッズとして香水を販売するのではなくて、僕らが音楽や映像を作るのと同じように、3つ目の表現として香りを作りたいなと思ったんです。そういう意味も込めて、香水のブランドを立ち上げて『PARFUM de bungei』と名付けました。

すみあいか:今後は、「いい香りだと思って調べてみたら、実は音楽もやってるらしい」とか、「この香りはこの曲をイメージして作られたんだ」みたいな感じで、香りが文藝天国の新しい入り口にもなってほしいと思っています。実際、2022年5月に山口県で香水の出張販売したんですけど、その時に本当に何も私たちを知らない、たまたま通りかかった方が「この香りいいですね」って買ってくださったりして、誰が作っているかとか関係なく純粋に香りを気に入っていただけたことが嬉しかったです。

──音楽担当のkoさんとしては、香りがあることで音楽に影響を受けることもあります?

ko shinonome:それこそ、配信シングル「ゴールデン・ドロップ」は、まず最初に香りを作って、そこから音楽を制作していったんですよ。この次にリリースする予定の作品も、テーマの香りが決まっていて、そこからインスピレーションを受けた音楽になってます。

──そうなんですね。順番が逆転してもいいと。

ko shinonome:はい。文藝天国の中では、たとえば 、「シュノーケル」のように 映像を先に作って、それに合うように音楽を作った作品もあるので。音楽が一番最初にある必要はないし、いろんな方法を模索していきたいと思ってます。新曲「ゴールデン・ドロップ」は、香水ではなくて、入浴剤というかバスパウダー(『Tea Bag Bath Powder & Bath Milk “ゴールデン・ドロップ”』)なんですよ。僕ら、紅茶がすごく好きなので、紅茶に入浴するというコンセプトで、ティーバッグのかたちをしたバスパウダーになってます。



すみあいか:紅茶のお風呂に入る体験と、その贅沢な気持ちに合う香りにしました。セットのバスミルクを入れると、ミルクティーにもなるんです。

──素敵ですね! もともとこういう商品があったわけではなく?

すみあいか:香水を一緒に作ってくださってるところと共同開発しました。結構、紅茶の色を出すのが難しくて、何回も試作しましたね。お風呂のお湯全体を紅茶の色に見えるようにしたいし、紅茶みたいにジワっと広がってほしいので、いろいろ調整して。

ko shinonome:ティーバッグとミルクの香りがそれぞれ違って、混ざった時に最終的な香りになるようになっています。

すみあいか:もちろん単体でもいいんですけど、混ざったらさらに楽しめるという。パッケージもすごくこだわってデザインして、アイデアを考えてから完成するまで1年ぐらいかかりましたね。

──すごいですね。で、バスパウダーとバスミルクありきで音楽を作っていったと。だから曲の途中に水の音が入っているわけですね。

ko shinonome:はい。楽曲タイトルにもなっている“ゴールデン・ドロップ”は、紅茶を淹れる時の一番最後の一滴を指す言葉なんです。それが紅茶の本当に美味しい部分と言われていて、そこから名付けました。バスパウダーのほうはワインとかビターチョコレートのような大人っぽい香りで作っていて、ミルクのほうはヴァニラとかの香りで子供の頃を思い出すような雰囲気になっているので、そこを音楽でも表現したくて。メロディはAメロとサビしかない構成なんですけど、Aメロはちょっとダークな大人な雰囲気で、サビは幼い時に見えていた景色を意識したキラキラとした音作りにして、対比になるようにしています。


▲バスパウダー『ゴールデン・ドロップ』


▲バスミルク『ミルク・イン・アフター』

──そのふたつが混ざり合った最後に、がっつりギターソロが入ってくると。

ko shinonome:そうですね(笑)。紅茶をテーマにした楽曲って、クラシックを取り入れたり、ピアノの音を入れたりした落ち着いたムードが多いと思うので。紅茶をテーマにして激しいギターソロを入れられるのは文藝天国だけだと思って、入れました。

──バスパウダーだったり、すみさんの映像や写真の世界観だったり、全体的にはファンタジックで透明感があるんですけど、その中に歪んだギターが入ってくるギャップが面白いですよね。

すみあいか:最近友人に、「レースとロックが共存してるよね」って言われました(笑)。「荒々しいロックも繊細なレース生地も好きだから、その両方を兼ね備えた文藝天国が刺さった」って言ってもらえて、たしかにほかにないかもって。

ko shinonome:それがふたりで作っている理由なのかなと思いますね。お互いの好みや持っているものは、似ている部分も多いけどまったく同じではないので、ひとつの作品に持ち込んだ時に化学反応が起きるような気がします。


▲<文藝天国 1st live 「瞬間的メタ無重力空間」>

──ちなみに音源はkoさんがひとりで作ってるんですか?

ko shinonome:基本的に宅録で作っています。ギターもベースも全部自分が弾いて。1stミニアルバムはドラムも自分で打ち込んで、歌だけ歌ってもらうかたちだったんですけど、以降の作品は、ドラムは僕が打ち込んだり、ドラマーさんに生音で叩いてもらったりと曲によって変えています。

──「ゴールデン・ドロップ」もそうですが、「七階から目薬」(2023年1月配信リリース)も「破壊的価値創造」(2022年11月配信リリース)も、ロックのバンド編成で音が構築されてますよね。ボーカル、ツインギター、ベース、ドラムという5ピースで、同期やシンセの類いも入っていない。

ko shinonome:そうですね。リードギターとバッキングギター、ベースとドラムっていう基本構成は崩したくなくて。いわゆるバンドの音像が頭にあって、作っている感じです。

──先ほどの音楽ルーツの話では洋楽ロックほか、ボカロも挙げられていたので、もっとデジタルに寄せることもできると思うんですが、koさん的には生のバンド感だったりギターサウンドは譲れないポイントだったりするんですか?

すみあいか:「ロックサウンドは絶対に守り抜く」みたいなこと言ってたよね。

ko shinonome:(笑)。根底にギターバカの心があるというか、魂でギターを弾きたい気持ちがあって。演奏の上手さももちろん大事だと思うんですけど、やっぱりロックは魂だと思うんですよ。なので、そういう荒々しさをそのままちゃんと音源にするという部分はこだわってますね。

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