【インタビュー】常に“今”が一番カッコいい、マイケル・モンロー

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<SUMMER SONIC 2019>に出演を果たしたマイケル・モンローが、最新アルバム『One Man Gang』を引っさげ年内2度目の来日公演を果たした。

老若男女で満員の場内が後方まで見事に腕が上がっている光景の中、ステージ狭しと止まる事のないマイケルのロックンロール・ショウは、その派手なマイク・アクションも健在、赤いサックスにブルースハープも幾度も披露し、相変わらず高い場所にも登るハイテンションが続くものだった。

ニューアルバムを軸に、ハノイ・ロックスからデモリション23にいたるまで、彼のミュージシャン人生を網羅した選曲に、オーディエンスも休憩する暇もない。赤い扇子やサイリウム、ハットにハチマキなど小道具での演出も存分に楽しませ、アンコールではラモーンズのカバー「Blitzkrieg Bop」でドラムプレイを披露、VHSで何度も観たマーキーライブを思い出した人も多かったことだろう。全身全霊のステージは、常に"今"が一番カッコいいマイケル・モンローを体現するものであった。


──昨夜のステージ、素晴らしかったです。

マイケル:素晴らしかったね。ちょっと時差ボケもあって緊張もしたけど、会場のみんなの顔を見たらいきなり元気になっちゃったよ。アドレナリンが出てイケたよね、まさに「Last Train to Tokyo」の歌詞のまんまだよ。東京に来るとどうしても時差の関係で疲れてるってあの曲でも歌っているけど、全部忘れさせてくれるポジティブなバイブをみんな持っているよ。

──ニューアルバムからあれだけプレイされたのも驚きました。

マイケル:ヘルシンキでは11曲やったよ、「Heaven is a Free State」はトランペットが入っているから無理だったけど、それ以外は全曲だよ。今回の3週間のツアーはオスロから始まったんだけど、選曲も整理しつつ今のものに固まったんだ。良い感じでしょ?その日次第で変更する曲もあるけど、新曲をプレイするのは結構勇気がいるんだよ。

──新曲もフロア後方まで盛り上がっていましたよ。

マイケル:アルバムの半分をやったし、日本の反応は例外的に素晴らしい。ステージでも大好きな国だって言ったでしょ?日本は思慮深いし優しいし、音楽への情熱も熱い。いつもとても気持ち良く過ごせるんだ。フィンランドはみんなお酒を凄く飲むから、やがて誰かが暴れ出したりして“ヨッパライ(日本語で)”だよ(笑)。あまり日本を褒めると他の国はどうなの?と言われるんだけど、それだけ例外的な国なんだよ。



──アンコールではラズル(ハノイ・ロックス Dr / 1984年12月他界)を思い出しました。

マイケル:12月2日が誕生日だったし毎年この時期は…ね。彼は2つ年上だったから生きていたら59歳だ。僕がドラムを叩いて「Blitzkrieg Bop」をやるというあのアンコールは、実はまだメンバーも裏にいる時の思いつきだったんだ。もしかしたらラズルが声をかけてくれたのかもしれないね。でもドラムを叩くのは久しぶりだったから結構大変だった。平気な顔をしていたけどね(笑)。本来のアンコール1曲目は「Low Life in High Places」だったし、サミ(ヤッファ / B)が「この後これでいいの?ヘイホーの後にこれでいいの?本当に大丈夫?」って何度も言ってきたけど、アルバムの最後の曲でもあるし、絶対に東京ではやりたかった。「僕が責任を取るから」とやってみたら盛り上がって「ほら、見ろよ」ってね。「Built for Speed」は日本のボーナストラックだから日本でのみやっているスペシャルだよ。

──ライブをみて確信しましたが、ニューアルバム『One Man Gang』は今のバンドの順調さを物語っていますね。

マイケル:うん、今の状況にとても満足しているんだ。1980年代の昔の曲だけで生きているバンドはたくさんいるでしょ?新曲は1曲しかやらないとか、昔のヒット曲しかやらないのは悲しいよ。新しく作るものにちゃんと力があって、ソロで作っているものがどんどん良くなるねと言われるのを目指してやっているよ。

──いつも「今が一番カッコイイ」のがマイケル・モンローですね。



マイケル:本当?凄く嬉しいよ。次のアルバム・タイトルにしようかな(笑)。前の方が良かったなと言われたら残念だし、だからとても嬉しいよ。でも「次のアルバムはもっと良くなるよね?」と言ってくれる人もいて、そこまではちょっと勘弁してとも思う(笑)。新作は本当にたくさん曲があって選び抜いた内容でね、バンドにクリエイティブなエネルギーが満ちていたから、皆んなにどんどん書いてもらって彼らの才能を活かしたかったんだ。今が最高のラインナップだよ。ソングライターがいっぱいいるから自分では4曲くらいしか書いていないんだ。リッチはアートワークやマーチャンダイジングもデザインしているよ。

──ラモーンズ・イメージのTシャツもありましたね。

マイケル:みんなやってるから、モンロー版もあってもいいかな?と思ってさ。ヨーロッパツアー中にベルリンで一日だけオフがあったんだ。その時にラモーンズ・ミュージアムに行って、アコースティックで演奏もしたんだよ。オフなんかいらないよ、プレイしようぜって。

──楽曲もバラエティに富んでいますね。

マイケル:まず「One Man Gang」が書けた時に「これをアルバムタイトルにしよう」と思った。5人でやっているけれど、"One Man Gang"とね。曲をどんどん書いている中で、リッチもどんどん書いてきて増えてしまって、曲が良いだけではなくてスタイル的にもダムドぽいものやクラッシュぽいものや色々とあって方向的にも良いと思った。僕のはこれ、リッチはこれ、と選んでスタジオに入って18曲録った。ボーナストラック扱いには勿体ないと思うものは別に取ってあるんだ。

──作業は順調でしたか?

マイケル:2018年の3月にはほぼベーシックトラックは録れていた。夏にフェスに出ていたからレコーディングは少し休んだけど、秋にまたスタジオに戻ってリッチと一緒に作業を終わらせて、ミックスやマスタリングが終わったのが2018年の12月だった。でもリリースするにあたっては、チームワークが整うのを待ったんだ。マネージャーが付いて、レコード契約を取ってくれて良い仕事をしてくれたね。"UTA"というユナイテッド・タレント・エージェンシーというブッキングエージェントも付いて、ツアーも順調だし良いチームに恵まれたよ。このアルバムは良い形でリリースしないともったいないと思ったから、少しタイミングを待ったんだ。

──ゲストミュージシャンはどう決められました?




マイケル:キャプテン・センシブル(ダムド/ G、Vo)は、「One Man Gang」自体がダムドぽいかな?と思ってね。彼とは友人だし、電話して「曲弾いてくれる?」とお願いしたら、すぐに「やるよ」となって、翌日からメールで曲が送られてきた。みんなにキャプテン・センシブルが弾いてくれている事は自慢しているくらい良いソロだし嬉しいよ。彼とはロンドンで"International Artist Of The Year"の表彰の時にも一緒になったんだ。フィンランドでは相手にされないけど、イギリスでは僕もこういう表彰もされるんだよ(笑)。彼は素晴らしいギタープレイヤーだし、ダムドも過小評価されているよね。ロックンロール界でとても重要なバンドのひとつだと思う。ステージを観るとまさにパンクだけど、独自のスタイルを持っていてパンクというものだけではなく長年かけて進化したバンドなんだよ。アポカリプティカのチェリスト、エイッカ(トッピネン)はいつもツアー中でなかなか連絡もつかなかったけど、時間がある中でパパっとやってくれたものがパーフェクトだった。それからナスティ(スーサイド/ ex ハノイ・ロックス G)ね。彼は薬剤師だから普通に仕事をしているけれど、ロックやアルコールの世界から離れたい気持ちも理解できたから彼の気持ちを尊重したし、それで良かったと思う。たまに僕らのギグには顔を出してくれたり一緒にプレイする事もあったから、彼の中にロックはずっとあるんだろうね。アンディ(マッコイ / ハノイ・ロックス G)の影になっていたけれど、ギタープレイヤーとしてはナスティの方が優れていると思う。全体のサウンドとしてはAC/DCに於けるマルコム・ヤングのような存在だね。あまり前に出るタイプではないからさ。「せっかくだからスタジオに来てソロを弾いてみたら?」と声をかけたら来てくれて、好きなようにやってもらったら、いつも通りワンテイクだった。「Wasted Years」はハノイみたいでこれは偶然だったけど、ナスティが弾いたのも結果的に良かったよね。

──「Heaven is a Free State」のトランペットはフィンランドのジャズプレイヤーなんですね?

マイケル:ジャズ界では有名な人でね、オーケストラの「UUDEN MUSIIKIN ORKESTERI(フィンランド語表記)」に所属しているプレイヤーなんだ。ホーンがたくさん入っているバンドでも僕はやった事があって、「Highway to Hell」とかやるんだよ。そこで彼と出会って、曲を作ったときは僕がサックスで入れていたけれど、スタジオでトランペットに決めて変わった曲になったよね。5年前だったらああいう曲はやっていなかったと思う。スティーブは半分笑っていたけど、サミは最初からいいねこれ!とノリノリだった。アルバムのなかでも気に入っている曲だよ。

──そして今年は『Not Fakin' It』30周年ですね。

マイケル:まだアルバムのデモもいっぱい残っているよ。原盤はユニバーサルなのかな?リマスターやベスト盤では音が良くなってはいるね。もし自分で原盤を持っていたらアニバーサリーエディションとかやりたいところだけどね。いくつかバージョン違いも出ているはずだけど、僕のところにはサンプルも送られて来ないし、周りから聞いたこともあるし、自分でも買ったよ(笑)。でも1989年でしょ?信じられないね、それだけ時間が早く感じるのも楽しくやれているって事だね。


──これからも期待しています。また日本に来て下さい。

マイケル:アイシテマス(日本語で)。日本は世界で最高のオーディエンスだし最高の人々だよ。今年は2度戻ってこれて本当に嬉しかったし、これからもまだまだ来るよ、これからだよ。みんなに本当に感謝しているよ、僕の愛と敬意を。

取材・文:Sweeet Rock / Aki
写真:Yuki Kuroyanagi

<Michael Monroe ~ Japan Tour 2019 ~>

2019年12月3日@Tsutaya O-East
1.One Man Gang
2.Last Train to Tokyo
3.Junk Planet
4.Pitfalls of Being an Outsider
5.In the Tall Grass
6.Ballad of the Lower East Side
7.Old King's Road
8.'78
9.Black Ties, Red Tape
10.Motorvatin'(Hanoi Rocks)
11.Hollywood Paranoia
12.Trick of the Wrist
13.This Ain't no Love Song
14.Don't You Ever Leave Me(Hanoi Rocks)
15.Malibu Beach(Hanoi Rocks)
16.Up Around the Bend(CCR Cover)
17.Dead, Jail or Rock'n'Roll
Encore
18.Blitzkrieg Bop(Ramones Cover)
19.Low Life in High Places
20.Bilut for Speed
21.Nothin's Alright(Demolition23)
22.Hammersmith Palais(Demolition23)
23.1970(The Stooges Cover)
24.I Wanna be Loved(The Heartbreakers Cover)
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