【インタビュー】デストラクション、新作はクレイジーでキャッチー
クリエイター、ソドムらと共にドイツを代表するスラッシュ・メタル・バンド、デストラクションが新作『アンダー・アタック』を5月13日にリリースした。今年1月にも来日を果たし、素晴らしいステージを見せてくれたそんな彼らだが、ベース・ヴォーカル担当、そしてバンドの顔とも言えるシュミーアに、話を聞いてみた。
◆デストラクション画像
──あなたが1999年にデストラクションに戻られた時、新作は『インファーナル・オーヴァーキル』に近いものになると言っていました。しかし『オール・ヘル・ブレイクス・ルース』が実際にリリースされると、「これは『エターナル・デヴァステーション』と『リリース・フロム・アゴニー』の中間のような作品だ。」と変わっていました。そもそもあなたにとって、これら初期の3作品は、どう違うのでしょう。
シュミーア:当時はまだバンドが進化をしている途中だったから、3枚ともかなり違うよ。バンドを始めた頃は、俺たちもとても若かったからね。『リリース・フロム・アゴニー』は最もテクニカルな作品だ。『インファーナル・オーヴァーキル』は最も純粋で、『エターナル・デヴァステーション』は俺たちが書いた中でも最高の曲が収録されている。「Curse the Gods」「Eternal Ban」「Life Without Sense」とかね。
──もし今回の『アンダー・アタック』をこれら3作品と比べるとしたら、どれに一番近いと思いますか。それともまったく別の作品でしょうか。
シュミーア:もちろん作曲者や影響を受けているバンドは当時と変わらないから、似ている部分も非常に多いよ。だけど、30年間で俺たちも色々なことを経験してきたからね。当時はどのような方向に進むべきか、自分たちでもまだはっきりとわかっていなかった。今は自分たちが築き上げたブランドというものを、きちんと認識しているよ。
──『アンダー・アタック』は、音楽的にもバラエティに富んでいますよね。「セカンド・トゥ・ナン」のサビなどは、過去に無かった曲調だと思うのですが。
シュミーア:俺たちはいつでもスラッシュというジャンルの枠内で、可能な限り興味深い作品を作ろうと努力しているんだ。基本的には、伝統的なヘヴィ・メタルやパンク・ロックなど、影響を受けているものは常に同じだよ。「セカンド・トゥ・ナン」のサビは、クラシックなロックのフィーリングを持っているけど、使われているスケールは初期のアイアン・メイデンなどのクラシックなヘヴィ・メタルのものさ。
──今回も、V.O.プルヴァーのスタジオでレコーディングをしていますが、彼はデストラクションの最高のパートナーということでしょうか。
シュミーア:俺たちのやりたいことを、間違いなく彼が一番良く理解している。新作で、彼はオールド・スクールでありながら、パワフルというサウンド・プロダクションにしてくれた。これは素晴らしいことだし、達成するのは容易なことではないよ。俺たちも、色々と有名なプロディーサーを試してはみたけれど、結局そのプロデューサーの音になってしまうんだ。俺たちは、俺たち自身の音が欲しいからね。
──『エターナル・デヴァステーション』以前は、あまり皆で歌うようなサビはやっていませんでしたよね。2000年以降のデストラクションの作品では、逆にそういうサビが増えてきているように思うのですが。
シュミーア:良い曲には良いフックラインや素晴らしいリフが必要だからね。これをうまくやれれば、良い曲が書けるということだ。俺たちはキャッチーなパートを持った、クレイジーな曲を書こうと頑張っているし、実際そうしてきた。今は俺たちはミュージシャンとしても成長をしたおかげでさらに良い曲を書けることあるし、逆にそれが裏目に出ることもある。結局は、俺たちは自分たちの書いた曲を気に入るしかないということだよ。俺は、デストラクションを理解しようとしない奴らのために曲を書いているわけではないし。
──あなたの歌詞には、人類の未来を悲観するものが多いですよね。人類の未来をどのように見ていますか。
シュミーア:俺は決して悲観をしているわけではなく、ただ現実的なだけだ。もっと深く見てもらえば、歌詞にもポジティヴな面もあることがわかるはずだ。俺の書く歌詞は、ただ祈ったり説教したりだけではなく、建設的な批判が入っているからね。しかし未来が子供たちにとって、輝かしいものに思えないのは確かだね。まあ俺には子供はいないけど(笑)。
──資本主義について非常に批判的ですよね。
シュミーア:資本主義などというものは、他のシステム同様既に大失敗しているのさ。人間の欲望をかきたてるだけのシステムだからね。もっと多く、もっと上へってさ。でもそれもいつか壁にぶち当たって崩壊する。分け合ってお互い助け合う以外に、幸福や平和を達成する方法なんて無いということを皆理解するべきだ。
──「セカンド・トゥ・ナン」の歌詞は非常に面白いですよね。これは一般的な「ネット弁慶」についてなのでしょうか。それともデストラクションも、実際にネットでのトラブルに巻き込まれたりすることがあるのでしょうか。
シュミーア:あの曲は、ストーカーやネットに悪口を書いたり、荒らしたりする奴らについてさ。自分たちは賢いと思い込んでいるが、コソコソ匿名でいきがっているだけ、リアルの生活では負け犬という、バカの新形態だね。屈折した嫉妬にまみれた、インターネット・キーボード・ウォリアーさ。悲しいね。バンドが有名になると、どうしてもこういう問題に直面せざるをえない。YouTubeやInstagram、Facebookとかにたくさんいるだろ、何とか注目を集めよう、自分のフラストレーションを撒き散らしてやろうという屈折した負け犬が。ストーカーもたまったものじゃない。俺のガールフレンドには、嫉妬した奴らから大量の嫌がらせメールが送られてくる。本当に狂った悲しい奴らだよ。
──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
シュミーア:ニッポンは俺たちにとっていつも特別だ。日本でプレイできるというのは非常に光栄なことだよ。俺たちにとってはエキゾチックな国だ。様々な文化、素晴らしい食べ物、フレンドリーな人達。そして俺の大好きな1970年代、1980年年代のライヴ・アルバムが日本で録音されているしね。是非ニュー・アルバムがリリースされたら、また日本に行きたい。俺は日本のお客さんがどんどん進化していくのを、1990年代から見ている。最近のファンはクレイジーで素晴らしいね。日本とのスペシャルな関係、ドウモアリガトウ。
30年以上に渡り、ジャーマン・スラッシュ・メタル・シーンをリードし続けてきたデストラクションだが、最新作『アンダー・アタック』は“クレイジーでキャッチー”という彼らの信条をそのまま具現化した作品だ。正統派ヘヴィ・メタルやハードコア・パンク、果てはクラシック・ロックからの影響も受けつつ、スラッシュ・メタル・バンドであるというコアな部分は譲らない。それがデストラクション流のピュア・スラッシュ・メタルなのだ。
デストラクションの場合、歌詞も見逃せない重要な要素だ。『アンダー・アタック』では一貫して現代社会のネガティヴな側面にスポットをあてているのだが、その範囲が実に広い。資本主義という競争社会に生きるストレスに始まり、ライヴで同期演奏を使用するメタル・バンドを「ロックンロールの詐欺師」と糾弾し、ネットで粋がっている人間を「リアルな生活は空っぽの負け犬」とコキおろす。
『アンダー・アタック』は、Ward Recordsより5月13日の発売だ。日本盤は「ブラック・メタル」(もちろんVenomのカバー)のKrisiunのAlex参加バージョンと、シュミーア単独バージョンの2種類が収録されている。もちろん歌詞対訳付きなので、是非歌詞も含め、じっくりとデストラクションの世界を楽しんで頂きたい。
取材・文:川嶋未来/SIGH
Photo by Kai Swillus
【メンバー】
シュミーア(ベース/ヴォーカル)
マイク(ギター)
ヴァーヴェル(ドラムス)
デストラクション『アンダー・アタック』
【通販限定CD+Tシャツ】¥5,000+税
【CD】 ¥2,500+税
1.アンダー・アタック
2.ジェネレーション・ネヴァーモア
3.ディスローンド
4.ゲッティング・ユースド・トゥ・ジ・イーヴル
5.パソジェニック
6.エレガント・ピッグス
7.セカンド・トゥ・ナン
8.スタンド・アップ・フォー・ホワット・ユー・デリヴァー
9.コンダクター・オブ・ザ・ヴォイド
10.スティグメタイズド
11.ブラック・メタル feat.アレックス(from クリジウン)※ボーナス・トラック
12.スラッシュ・アタック※ボーナス・トラック
13.ブラック・メタル(クラシック・ヴァージョン)※日本盤限定ボーナス・トラック
◆デストラクション『アンダー・アタック』オフィシャルページ