【ライヴレポート】acid android、レアで贅沢なライヴハウスの夜

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L'Arc~en~Cielのドラマーyukihiroによるソロプロジェクトacid androidが4月16日および17日の2日間、渋谷CHELSEA HOTELにてワンマンライヴ<acid android live 2016 #1>を開催した。先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いて、詳細レポートをお届けしたい。

◆acid android 画像

acid androidのワンマンは、2013年12月13日に新木場STUDIO COASTで開催した<acid android live 2013>以来、2年4ヶ月ぶり。ワンマンを除けば、2014年8月のacid android主催イベント<alcove vol.7>開催、2015年2月のsukekiyo対バンツアー<二〇一五年公演「The Unified Field」 -双卵の眼->参加以来となる。しかし、その間にはL’Arc~en~Cielでの活動はもちろん、別プロジェクトgeek sleep sheepの活動や、今井寿と藤井麻輝によるSCHAFTのレコーディングおよびツアーに招かれるなど、yukihiro自身は多忙にして精力的だ。

迎えたライヴ初日、開演時間直前にCHELSEA HOTELへ到着すると、フロアの最後尾までオーディエンスがギッシリ。会場の外にはチケットを確保できなかったのであろうファンの姿も見受けられるなど、キャパシティ300名というライヴハウスはacid androidにとっては小さ過ぎるようだ。しかし、このキャパ、このハコだからこそのものがあることも事実。たとえば、場内は真っ赤な天井やベルベットの赤いカーテン、ステンドグラス調に配置されたミラーや煌びやかなシャンデリア、装飾が施された木製バーカウンターなど、クラシカルでアートな洋館をイメージさせる。そのコンセプチュアルな造りがacid androidに似つかわしく、これから始まるステージへの期待感を高めるように妖艶で美しい。


定刻通りに場内が暗転すると、ステージ下手にドラムの山口大吾(People In The Box)、上手にギターのKAZUYA(Lillies and Remains)が登場した。続いてyukihiroが姿を現したところで、バックライトに照らされたステージ上にyukihiroを頂点としたトライアングルが浮かび上がる。オープニングナンバーは「let's dance」だ。曲名通りのダンサブルなナンバーにのっけからフロアが波打ち、躍動的極まりない。

続けて、小気味よく反復するビートの一方でシンセベースが地響きを起こす「imagining noises」、硬質なビートの突進力が凄まじい「daze」、鋭利なギターリフが疾走感を煽る「gamble」といったアグレッシヴチューンが連発されるが、決して勢い任せではない。集中力の高い精巧なサウンドはacid androidならではのものだ。加えて、「daze」では16ビートが強調されていたほか、ソリッドなアレンジが施された「gamble」など、原曲とも、2年4ヶ月前のワンマンとも異なるアンサンブルでacid androidの現在進行形サウンドが次々と繰り出された。



ライヴハウス独特の生々しい臨場感、プリミティヴな猛々しさ、目くるめくスピーディーな展開と何が起こるかわからない緊張感、そしてyukihiroの圧倒的な存在感。比喩でもなんでもなく、手を伸ばせばステージに手が届く至近距離のアクトは、超満員のフロア全体を生きているように鼓動させる。これこそが密閉感の強い小バコの醍醐味であり、密度と濃度の高いサウンドが会場の隅々まで響き渡ってステージとフロアが一体となる。まだ前半ながら、テンションの高い夜が最高潮を迎えてしまったようだ。

しかし、ドラマの波動はここから。シーケンスとシンクロするようにレッドとブルーの照明が点滅するとステージはヘヴィで冷徹な世界へ。振り子のように永久運動を繰り返す重厚なギターリフとyukihiroのダークなヴォーカルが緊迫感を増幅させていく「double dare」を入り口として、地の底から響くようなミディアムビートが壮絶な「pause in end」が場内を震わせた。それら暗然たるサウンド世界に続いて披露された「unsaid」は無機質なリズムを背景にストリングスとyukihiroの紡ぐ旋律が美しく、切なさを静かに浄化させるように響いた。


そして注目は中盤にあった。2曲の「※new song」(セットリストに「※new song」と表記された未発表新曲)が披露されたこのセクションはニューウェイヴ~シューゲイザーなど、現在形のacid androidによる美学を感じさせるもの。8曲目の「※new song」は前述の新木場STUDIO COAST公演でも演奏されていたナンバーで、リヴァーブ成分を含んだ直線的な8ビートと彩り豊かなコードワークに乗るヴォーカルが物憂げですらある。

「swallowtail」を挟み、10曲目に披露された「※new song」はおそらく初公開の新曲だろう。哀愁溢れるシンセのテーマリフ、力強いギターのコードバッキングはクールな肌触りだが、リズムとヴォーカルの抑揚が起伏に富んであまりにも劇的だ。荒涼としていながら狂おしい日本語詞と相まって美しく孤高。吹き荒れるノイズも、地を這うヘヴィリフも、切れ味鋭いビートもacid androidの至福ではあるが、こうした楽曲にこそyukihiroの今が凝縮されているようで、今後の方向性を予感させると同時に、新作がますます待ち遠しくなった。ちなみにyukihiroは、このセクションのみマイクスタンドを使用するなど、歌の表現に終始するシーンが垣間見られた。


ラウドな8ビートに乗せて、開放弦を巧みに織り交ぜたスリリングなギターリフが響き渡ると、曲は「i.w.o.m.f.p.p just an android」へ。倍テンポとなる後半で客席が一気に暴発し、ついに怒濤の後半戦が幕開けを告げた。「the end of sequence code」ではyukihiroのアクションも一層激しく、頭を振り、足を高く蹴り上げる。「violent parade」のインターでは加熱する会場に思わず上着を脱ぎ捨て、「violator」ではステージにヒザをついて全身全霊のヴォーカルを響かせた。まさに息つく間もなく駆け抜けた終盤。そのラストは、それまでの興奮を引き継ぐ激しいナンバーではない。シンセベースの音色を冒頭に、金属ノイズやピアノのサウンドが重なる「※new song」はクールで力強く、フロアが噛み締めるように深く聴き入って<acid android live 2016 #1>が終了した。

「どうもありがとう」

全16曲、いつものようにMCなしで駆け抜けた最後に、yukihiroはこう言ってステージを降りた。終わってみれば照明以外の演出は皆無に等しい。yukihiroによるトラックとヴォーカルを中心に、山口大吾とKAZUYAの3人の呼吸、そして、そこから発せられるグルーヴ。CHELSEA HOTELの夜に描かれたのは、ひたすら楽曲だけで作り上げた壮大なドラマだった。大会場で聴かせる迫力十分の重低音もいい。VJの映像と相まった演出もいい。しかし、ステージから発せられる楽曲を真っ向から味わえる肉弾戦のようなライヴハウスもacid androidにはよく似合う。まさにレアで贅沢な夜となった。


なお、2日目のステージの模様はオフィシャルレポートでお届けした通りだが、初日がある種の緊張感を伴いながら強烈な上昇気流を作り出したライヴだったのに対して、2日目は初っ端から灼熱。目もくらむような熱気で会場内の大きな鏡が開演前から曇ってしまうほど。もうひとつ特筆すべきは、両日に初出演したギタリストKAZUYAだ。2012年の秋以降、acid androidのライヴではPeople In The Boxの山口大吾がドラムを務め、Lillies and RemainsのKENTもしくはTHE NOVEMBERSの小林祐介がギタリストとして参加してきた。ファイヤーバードを操るKAZUYAのギターサウンドは、当然ながらKENTとも小林祐介とも異なるもの。その中域が強調されたサウンドが「i.w.o.m.f.p.p just an android」にてロックンロールテイストを際立たせるなど、acid androidに新たな質感を加えていたように思えた。三者三様のギタリストとのマッチングの妙も、今後の楽しみのひとつだ。

acid androidは6月23日に名古屋 Electric Lady Land、6月24日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで<acid android live 2016 #2>を開催する。また、yukihiroは4月30日にgeek sleep sheepのドラマーとして、渋谷CLUB QUATTROでワンマンライヴ<confusion bedroom vol.5>を行うことも決定している。

取材・文◎梶原靖夫(BARKS)
撮影◎岡田貴之(4/17@CHELSEA HOTEL)

■<acid android live 2016 #1>2016.4.16&17@渋谷チェルシーホテルset list

01.let's dance
02.imagining noises
03.daze
04.gamble
05.double dare
06.pause in end
07.unsaid
08.*new song
09.swallowtail
10.*new song
11.i.w.o.m.f.p.p just an android
12.egotistic ideal
13.the end of sequence code
14.violent parade
15.violator
16.*new song

■<acid android live 2016 #2>

2016年6月23日(木) 名古屋 Electric Lady Land
open 18:00 / start 19:00
all standing \5,500 (tax in)  *drink代 別 ※未就学児童入場不可
一般発売日:2016年5月21日(土)10:00~
(問)JAILHOUSE 052-936-6041

2016年6月24日(金) 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
open 18:00 / start 19:00
all standing \5,500 (tax in)  *drink代 別 ※未就学児童入場不可
一般発売日:2016年5月21日(土)10:00~
(問)クリエイティブマン  03-3499-6669

◆acid android オフィシャルグッズ購入ページ
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◆acid android オフィシャルmobileサイト
◆acid android オフィシャルYouTubeチャンネル
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