【インタビュー】ディープ・パープル、来日直前のバンド状態をイアン・ギランが激白
ロックの殿堂入りを果たしたハード・ロックの至宝ディープ・パープル。5月の来日公演を目前にして、ボーカリストであるイアン・ギランに話を聞けた。ジョン・ロードの思い出、日本武道館に対する決意、それに向かうバンドの状態を赤裸々に語ってくれている。
◆ディープ・パープル~画像~
──前回の来日公演、映像作品(DVD&Blu-ray)にもなった武道館が超満員でしたね。オーディエンスもたいそうな盛り上がりようでしたが、それについては?
イアン・ギラン:武道館でのライヴは毎回エキサイティングだ。初めて武道館でやったときのこともよく覚えているよ。何年も前、大昔のことだが。最高にスリリングだし、オーディエンスも素晴らしかった。そんな武道館でライヴを収録し、リリースできたことは非常に光栄なことだ。いい思い出だよ。ありがとう。
──DPと武道館といえば世界中のファンが頭に思い浮かべるのがライヴ盤『LIVE IN JAPAN(海外ではMADE IN JAPAN)』です。このアルバムがロック史に刻んだ意味について。
イアン・ギラン:ファンからは「『MADE IN JAPAN』こそが “ロックのライヴ・アルバム”を決定付けた一枚だ」とよく言われるし、僕もそう思う。あの時期はディープ・パープルにとっても非常にエキサイティングな時期だった。ツアーで世界中を回り、日本を訪れたのもあの時が初めてだった。素晴らしい思い出さ。今も多くの人があのアルバムに大いなる敬意を払い、引き合いに出してくれるんだ。
──日本のファンについて。初来日からずっと追いかけている方や、当時を知らない若いファンと様々ですが、彼らについては?
イアン・ギラン:確かに。日本には、僕やディープ・パープルを一番最初の頃から追いかけてくれている熱心なファンがいる。メンバーのうちの誰かが特に好き、という者もいれば、広い意味でバンドを応援してくれている者もいる。彼らは友人だよ。日本を発つ僕らを見送りに、空港まで着物姿で来てくれたファンもいたね。嬉しかった。日本に行くといつも謙虚な気持ちにさせられる。ファンが僕らのためにしてくれること、示してくれるリスペクトにね。でも一つだけリクエストしていいかな。どうか空港の見送りにたくさんのプレゼントを持ってくるのはやめて。というのも、もう荷物を預けてしてしまったあとだから、せっかくもらった巨大なテディベアとか人形とか甘いものとかたくさんもらっても、機内に持ち込めなくなっちゃうんだよ。
──ROLLING STONESやTHE WHO同様、あなた方のようなレジェンドが毎年のようにツアーで世界中を回っているのは驚異的といえます。そのような生活について、ご自身ではどのように考えていますか?
イアン・ギラン:ツアーに明け暮れる毎日は、僕にはごく自然なことだ。僕らのツアー・スケジュールを見た人達からは「ハードワークそうだね」と言われる。2015年は54カ国を回ったことになる。いや、もしかするとその前の年だったかな? そのさらに前の年だったかな? なんであれ、重要なのは、僕らは素晴らしい仲間とツアーできているということだ。まるで終始、有給休暇をもらっているような感じさ。いつも何か新しい発見があるし、エキサイティングな出来事がある。違う文化に触れるのは新鮮だし、謙虚な気持ちにさせられる。学ぶことも多いし、人として得るものも多いよ。2~3年に一度は世界中の色々な国に行き、ファンにまた会えるんだから・・・考えてみたらものすごいことだよね。本当にすごい。
──ロックの殿堂入りおめでとうございます。あなたたちの功績が認められたご気分はいかがでしょうか?
イアン・ギラン:ロックの殿堂入りは、当然ながら光栄なことだよ。何よりも、家族、ファン、友人、仕事関係の仲間・・・と、僕らをこれまで長い間サポートし続けてきてくれた人たちにとって特別で重要な意味がある。素晴らしいご褒美を彼らも一緒に分かち合える機会なんでね。ある意味、彼らへの「ありがとう」という感謝の気持ちでもあるんだ。
──新しいアルバムを制作していると聞いていますが、今の時点でお話できることを教えてください。
イアン・ギラン:残念ながら、今の時点で話せることはまだない。ただ、4月最終週から5月の第1週にかけてトロントに行き、そこでヴォーカル入れをする。そしてそのあとは日本へ直行だ。なので5月5日までには、作業が無事終わってることを心から祈っているよ。リリース日とかはまだわからない。わかるのはそこまでだ。
──多くのベテラン・バンドはアルバムを作ることなく、ヒット曲を演奏するツアーだけという活動をしています。あなたたちがそうせずに新作を作ることについて、どのように考えてらっしゃいますか?
イアン・ギラン:忘れちゃいけない重要なことがある。僕らがそもそも曲を書くようになったのはライヴで演奏する曲が欲しかったからだ。それが結果的にレコードとなり、また新しいレコードを作れば、自ずとセットリストも変わる。で、気づけば膨大な数になっていた。僕自身、これまでに500曲以上の曲を書いたよ。それだけあると、新曲を演奏する余裕もあまりない。ファンは昔の曲を今も聴きたい、と思っているからね。それでもなんとか新曲も組み込む形でやっている。かつてのロード・ウォリアーズの弟分や妹分みたいなもんさ。新しいアイディアや新曲を絶やさず、常に新鮮さを保つのは重要なことだ。
──ライヴではどうしても往年のヒット曲を求められると思います。新しい曲へのオーディエンスの反応はいかがですか?
イアン・ギラン:前作を作っていた時、プロデューサーのボブ・エズリンに指摘されたことがあった。それは僕らがバンドを始めた頃のレコーディングの仕方をしていない、ということだった。そこでもう一度、音楽に立ち戻って考えた。忘れちゃいけないのは、ディープ・パープルは第一にインストゥルメンタル・バンドだということだ。大事なのは、持てるもの全てを出し切り、表現すること。曲は3~4分じゃなきゃいけないなんていう制約を自ら課すのではなく、時にはもっと長い曲の中で、メンバー個々のダイナミクスやテクスチャーを、かつてのように存分に発揮できるチャンスを与えることだった。それを続けていくことが重要だったんだ。大概、ライヴで新曲を演奏しようとしても、難しいことが多い。理由はさっき言った通り。でも『Now What』からは6曲をセットリストに入れたところ、驚くほどしっくり馴染んだんだ。今も「Apres Vous」「Vincent Price」「Hell To Pay」「Uncommon Man」ともう1曲ーーツアーは数ヶ月オフなんで忘れてしまったが、合計5曲を演奏していて、どれもライヴでもすごくいいし、オーディエンスも昔の曲と同じくらいに盛り上がってくれる。嬉しい限りだよ。
──亡くなったジョン・ロードについて。彼との思い出などお話しいただけますか?
イアン・ギラン:ジョン・ロードにまつわる話なら何百とある。その中でも、ほぼ毎日、彼の事を思い出す、というお気に入りの話があってね・・・。何年も一緒にやってきた仲間であり、音楽パートナーであり、大切な友人だとしても、そういうことって珍しいんだ。人って死んでしまうと思い出になり、たまに蘇る程度だからね。ジョンのことは、クロスワード・パズルを解いている時、いつも思い出すんだよ。というのも、デイリー・テレグラフ紙のCryptic Crosswordを解くのが僕の毎日の日課だからだ。実はジョンも同じでね。よくツアーバスの中で二人一緒にやっていた。ところが僕が書くDの字がジョンにはどうも気に入らないらしく、いつも言われたんだ。「それはDじゃない、Oに見える」と。でも僕は「これはDだ。自分でそうだとわかってるからこれでいいんだ」と互いに譲らず、些細な喧嘩をしてたのさ、友達ならではの。だから今もDの字を書くたびに、ジョンが頭によぎるんだよ。とても微笑ましく、愛すべき思い出さ。僕も曲(「Above and Beyond」)の中で Souls having touched are forever entwined (一度でも触れ合った魂は永遠に絡み合う)という歌詞を書いたが、これはジョンのことだ。永遠にジョンは僕らと共にいるよ。
──スティーヴ・モーズについて。彼が関わった作品、在籍年数などは“前任のあのお方”をはるかに越えたわけですが、いうまでもなく頼もしい存在でしょうが、あらためて彼のバンドでの存在感、役割についてあなたの意見をお聞かせください。
イアン・ギラン:スティーヴ・モーズは僕らの救世主だ。リッチーが日本でのビザを破り捨てたあの事件の後──なんのために?何年も前の話だが──ジョー・サトリアーニが替わりを務めてくれていたが、しばらく僕らは苦しんでいた。そこにやってきて、すべてを建て直してくれたのがスティーヴ・モーズだ。自信、能力、技術、個性、キャラクター、そのすべてを備えていた。ぽっかり空いていた大きな穴を埋め、その瞬間からバンドは再び機能し始めた。新しいラインナップに落ち着き、彼のアイデンティティを認知してもらうまでに、少し調整の時間は必要だったが、それは重要な進化の過程だったんだと思う。どんなバンドにとっても進化は必要だ。進化するか、停滞するか、それ以外の選択はない。そしてスティーヴのおかげで僕らは進化を続け、さらなる素晴らしき25年──世界中をツアーできる今──があるわけだ。ファンもそんな彼を両手で受け入れた。この素晴らしきDPファミリーの歴史の中に、燦然たる足跡を残したと言っていい。エキセントリックなキャラクターの持ち主だが、皆、そんな彼が大好きなんだ。笑わせてくれるやつだよ。
──来日公演、どのような内容になりますでしょうか?
イアン・ギラン:一つ言えるのは、ニューアルバムのレコーディングのため、しばらくツアーから離れていたこともあり、今バンド内のエネルギーは爆発寸前ってこと。だから、気をつけた方がいい!日本でディープ・パープルが爆発するぜ!エネルギー満タンだ。今から待ちきれないよ。5月に会えるのを楽しみにしているよ。
──日本のファンへメッセージをお願いします。
イアン・ギラン:長きにわたるサポートをありがとう。本当に嬉しいよ。新しく僕らのファンになってくれて、ライヴを見に来てくれるファンにも。日本でプレイする日が待ちきれない。皆に5月に会えるのを楽しみにしているよ。
<DEEP PURPLE JAPAN TOUR 2016>
5/9(月) ニトリ文化ホール
お問い合わせ:道新プレイガイド 011-241-3871
【函館】
5/10(火) 函館市民会舘
お問い合わせ:道新プレイガイド 011-241-3871
【仙台】
5/12(木) 仙台サンプラザホール
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
【福島】
5/13(金) 郡山市民文化センター 大ホール
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
【東京】
5/15(日) 日本武道館
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
【大阪】
5/16(月) フェスティバルホール
お問い合わせ:大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 udo.jp/Osaka
【名古屋】
5/18(水) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
CBC事業部 052-241-8118
■一般発売日
東京・大阪 2/6(土)~
名古屋 2/13(土)~
仙台・福島 2/20(土)~
札幌・函館 後日発表