【インタビュー】アンスラックス「何をするべきか、リフが指示するんだよ」
アンスラックスが前作『WORSHIP MUSIC』から5年半振りとなる新作『FOR ALL KINGS』を2月26日にリリースする。アンスラックス史上最速とも呼べるスラッシュ・メタル・ナンバーもあればドラマティックに展開するエピック・ソングも収録、アグレッションとメロディの両面で非常にダイナミックな仕上がりとなっている。アンスラックスのベスト・アルバムと自認する最新アルバムについてスコット・イアン(G)が大いに語ってくれた。
◆アンスラックス画像
――昨年10月、<LOUD PARK>に出演するため来日しました。その時点で新作『FOR ALL KINGS』のレコーディングは終わっているというお話でしたが、日本から戻った後、マスタリングをやり直すことになったそうですね。
スコット・イアン:えっと…覚えてない(爆笑)。多分そうだったんだろう(笑)。マスタリングは多分2回やったと思う。俺達が満足するサウンドになるまで。だけど大したことではないよ(笑)。
――よくあることなのですね。
スコット・イアン:ああ、どのアルバムでも大抵そうだよ。マスタリングを何回かやり直して、ちゃんとしたサウンドに仕上げる。俺達のサウンドにするんだ。
――前作『WORSHIP MUSIC』の曲作りの時点では誰が歌うか決まっていませんでした。その後、状況が色々と変わって、結局ジョーイ(ベラドナ)がバンドに戻ってレコーディングを行なうことになりました。
スコット・イアン:そうだった。
――その点、今回の『FOR ALL KINGS』は最初から彼が歌うことがわかっていました。曲作りに向き合う時、感覚的なものは違っていましたか?リフを書きながらジョーイの歌が頭に浮かんだとか。
スコット・イアン:ああ、これはアンスラックスのレコードで、このラインナップだというのがわかっているだけで、今回の曲作りは違っていたよ。非常にポジティヴで力強いフィーリングがあったし、非常にポジティヴなヴァイブがあった。それが『WORSHIP MUSIC』が出た頃から、このバンドを包んでいるものだ。あのレコードは、人々から大いに共感され、とても好まれたし、ツアーは2011年から2012年、2013年と何百というショウをやった。俺達は、またアンスラックスになったんだよ。だから、後に『FOR ALL KINGS』になるアルバムを書き始めた時には、凄く勢いに乗った状態だったし、バンドはとにかく文句なしの気分だった。誰もがこれをやっていて最高に嬉しい、アンスラックスにいることが最高に楽しいという状態だった。そう、ジョーイがシンガーだとわかっていることは、曲作りの大きな助けになったよ。それは確かだ。ジョーイがそこにいて、ジョーイは何でもやれるということがわかっている。そのことが大きな違いだと思う。クリエイティヴな面で俺達を自由にしてくれたと俺は思うよ。言葉にしてそういう話をしたわけではないが、俺達はわかっていたんだ。バンドに誰がいるかがはっきりしている。それってバンドにいれば一番心配したくないことだからな。
――1曲目の「You Gotta Believe」は非常にヘヴィで速く、かつ7分半もある曲です。この曲は誰が書いたのでしょうか?ライヴのオープナーになりそうな曲ですね。実際そのつもりでは?
スコット・イアン:ライヴのオープニングにするかって?そうだな、もしかしたら、そうするかも(笑)。もしかしたら、だけど。俺は多分、と思っているけれど、まだ、そこまで決めていないからな。この曲は、俺とチャーリー(ベナンテ/Dr)とフランキー(フランク・ベロ/B)とで書いたよ。
――リフからスタートしましたか?
スコット・イアン:ああ、いつでもリフだよ。常にリフが最初に出てくる。どの曲も同じだ。そして俺達で音楽をアレンジして、メロディのアイディアを出して、そして俺が歌詞を書く。
――3曲目はタイトル曲の「For All Kings」については?アップテンポかつメロディアスな曲です。この曲も同じように3人で書いたのですね?
スコット・イアン:ああ、さっき話したとおりだ。(笑)
――これがタイトル・トラックになった理由は?
スコット・イアン:俺にはわからないな。俺にはただ、それが相応しいように聞こえたんだけど…。実際、俺にはわからない。俺が歌詞を書いて、それがタイトル・トラックになったんだ。それだけだよ。
――「Suzerain」のクランチーなリフが強烈です。曲構成はかなりダイナミックです。ヘヴィなところは徹底してヘヴィで、ジョーイの歌うメロディは非常に流麗で。この曲の完成について誰が一番貢献したのでしょうか。
スコット・イアン:一番というのは、いないよ。俺は全員が一緒に書いている。誰かが1人で全部書いてしまうようなやり方もあるだろうが、俺達はそれはやらないから。君が俺達のレコードを聴いて感じてくれることはどれも素晴らしいと思う。だが、その手の質問に対する答は俺は持ってない。俺は俺達の曲をそういう風には聴かないからだ。俺は、ただ聴いて、ニヤリとして、自分達が作り出した音楽をとても誇らしく思うだけなんだ。分析はしないし、分析しても意味はない。秘密なんてないからね。俺達はただ、俺達が聴きたい音楽を書いているだけなんだ。
――「Zero Tolerance」について、あなた方は「アルバムの中で最もスラッシー、物凄く速い、自分達が書いた曲の中では2ndアルバムの「Gung-Ho」以来のとても速いスラッシュ・メタル」と語っていましたが、おっしゃる意味がよくわかりました。
スコット・イアン:ああ、こういうリフのアイディアがあれば、速い曲になることは自然に決まる。どういうテンポになるかが、ただわかるんだ。リフをプレイさえすればいい。速い曲を書こうと言葉にする必要もない。このリフさえあれば、速い曲になるとわかる。リフが何をするべきか指示するんだよ。それに、凄く楽しい曲だった。プレイしていても楽しくてね。キーはAなんだよ。俺達としては珍しい。それも俺達にとってエキサイティングになっている理由の1つだと思う。このキーで曲を書いたのは随分久し振りだったから。ああ、これも大好きな曲だよ。1986年のアンスラックスを俺も思い出すけれど、でも、2015年に相応しいものになっていると思う。
――4曲目の「Breathing Lightning」はとてもメロディアスで、コーラスも印象的です。イントロもメタルというよりAOR的な感じさえあります。勿論、ギター・リフとリズムが入るとヘヴィ・メタルになりますが。あなた方がカヴァーEP「ANTHEMS」で取り上げたJOURNEYやBOSTON等の要素が幾らか出ているのかと感じました。この意見をどう思いますか?
スコット・イアン:問題ないよ。俺は構わない。みんな好きなように感じてくれればいい。どういう風に考えるべきだなんて俺は一切言うつもりはないよ(笑)。
――アルバム全体を通じてバンドのパフォーマンスは素晴らしいです。ジョン・ドネイズがアンスラックスのアルバムで演奏するのは今回が初めてですが、彼の貢献も素晴らしいです。古参メンバーとしては「よくやった」という感じですか?
スコット・イアン:ああ、勿論だ。このレコードの彼も凄いよ。彼はもう3年もバンドにいるからな。ぴったり合っているよ。ライヴ・プレイヤーとしても優秀だし、ステージでも最高だ。狂ったようにヘッドバンギングする。そして、このレコードに出したソロのアイディアは、俺達が書いている曲に本当に合っている。彼は曲作りの間中ずっと、最高のアイディアを出し続けたよ。
――勿論、彼はSHADOWS FALLでも素晴らしい演奏を披露してきており、アンスラックス・ファンの中にも彼の腕前について前からよく知っていた人は多いかと思います。しかし、今回のアルバムで彼に対する評判は更に高まるでしょうね。
スコット・イアン:それは間違いない。新しいギター・ヒーローと賞賛されるはずと思う。彼のようなプレイをする奴は他に知らないからな。
――今回のアルバム発表後の予定を聞かせてください。アイアン・メイデンの南米ツアーに出発するようですが、その後もツアーやフェスティヴァル出演などで忙しくなりそうですか?
スコット・イアン:ああ、南米は3月からだ。アイアン・メイデンと一緒に。4月と5月はアメリカでフェスティヴァルに出て、夏の間はヨーロッパにいる。そしてプランとしては、年の後半からヘッドライナーとしてのショウをやり始めることになっている。今のところ決まっているのは、そこまでだ。
――いずれにせよ、今年もとても忙しくなりそうですね。
スコット・イアン:ああ、そのようだね。
――日本にはいつ戻って来てくれますか?
スコット・イアン:戻るのは確実だ。いつになるかはまだわからない。だが、必ず戻るよ。去年の<LOUD PARK>では最高のショウがやれた。早く戻りたいね。
取材・文:奥野高久/BURRN!
Photo by Jimmy Hubbard, Ignacio Galvez
【メンバー】
スコット・イアン(リズム・ギター/バッキング・ヴォーカル)
チャーリー・ベナンテ(ドラムス)
フランク・ベロ(ベース/バッキング・ヴォーカル)
ジョーイ・ベラドナ(ヴォーカル)
ジョナサン・ドネイズ(リード・ギター/バッキング・ボーカル)
アンスラックス『フォー・オール・キングス』
【通販限定/メンバー直筆サイン入りブックレット付き初回限定盤CD+ボーナスCD+Tシャツ】7,000円+税
【初回限定盤CD+ボーナスCD(ライヴ音源)】3,000円+税
【通常盤CD】2,500円+税
1.ユー・ガッタ・ビリーヴ
2.モンスター・アット・ジ・エンド
3.フォー・オール・キングス
4.ブリーシング・ライトニング
5.スーザレン
6.イーヴル・ツイン
7.ブラッド・イーグル・ウイングス
8.ディフェンド/アヴェンジ
9.オール・オブ・ゼム・シーヴス
10.ディス・バトル・チョーズ・アス
11.ゼロ・トレランス
12.ヴァイス・オブ・ザ・ピープル(日本盤限定ボーナス・トラック)
【ボーナスCD(ライヴ音源)収録曲(予定)】
1.ファイト・エム・ティル・ユー・キャント
2.A.I.R.
3.コート・イン・ア・モッシュ
4.マッドハウス
◆アンスラックス『フォー・オール・キングス』オフィシャルページ
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